私は経済成長豊かなバングラデシュの不動産投資をしていますが、
どうして同国の株式投資は検討しないのか疑問に思われる方も一定数いることを知りました。
今回は何故私がバングラデシュ「株式投資」ではなく「不動産投資」しているのか?
非常にニッチなテーマですが解説していきたいと思います。
- バングラデシュの株式市場の歴史は長く上場企業数も200社以上。
- 過去7年経済規模が2倍になっているにも関わらず、バングラデシュ株の株価は上昇していない。
- バングラデシュ株式市場の日本の時価総額の120分の1と非常に小さく、値動きは荒い。
- 日本からは個別株投資はできず、ETFを通した投資に限定されるが、ETFはバングラデシの株価指数と連動率が低い。
- 現在のバングラデシュの経済水準は1960年代の日本と酷似。
- 当時の日本は株式市場は低迷する一方不動産価格は一貫して上昇しており、同様の状況である現在のバングラデシュは不動産価格を行うべきタイミングであると結論づけられる。
Contents
バングラデシュの株式投資の概要
バングラデシュは、GDPが他国と比較して低いにも関わらず、
- ダッカ証券取引所
- チッタゴン証券取引所
という二つの証券取引所があります。
ダッカ証券取引所の歴史と上場企業数
日本でいう東証にあたる、
「ダッカ証券取引所」はバングラデシュ独立前の東パキスタン時代である1954年に設立され、
1956年から株式取引が開始され現在では572社が上場されました。
このこと自体私にとっては驚きでした。
バングラデシュより1人当たりGDPが高いカンボジアの証券取引所が開設されたのが、
最近の2012年で、2018年現在でも上場株式数はたったの5社、
ミャンマーも2016年に証券取引所が開設され現時点の上場数は6社に留まっているからです。
バングラデシュ株に投資する方法
最近では先進国株式のみではなく、
中国やマレーシアやフィリピンを始めとした東南アジアの国の一部を中心に新興国であっても個別株の取引できることがありますが、
現在日本でバングラデシュの個別株を取引きすることはできません。
日本でバングラデシュの株式投資をしようと思ったらシンガポール市場に上場されている、MSCI バングラデシュ・スワップ UCITSというETFに投資することにより、
バングラデシュの株式全体に投資することが出来ます。
参考までですが、「ETF」とは「Exchange Trade Fund」の略で上場投資信託と訳されます。
特定の指数に連動するように目指して組成されたもので、
1日1回市場が締まっている時間にしか売買ができない投資信託と異なり、
通常の個別株のように市場が開場している間ずっと売買取引ができる金融商品です。
どうしても個別株に投資をしたいという方はバングラデシュに赴き証券口座を開設する必要があり、
日本でバングラデシュ株に投資を行う現実的な選択肢としては、ETF投資となりそうですね。
バングラデシュ株式投資を行わない理由①:経済成長と連動しない株式市場と不安定な値動き
バングラデシュに限ったことではないですが、
新興国の株式市場は上下変動が大きく更に経済成長と連動しないことが多々あります。
たとえ経済自体は急速に成長していても、株式市場は軟調というパラドックスが起こる可能性があるのです。
DSEX指数の過去の値動きから見る変動幅と経済成長との矛盾
それではバングラデシュ版の日経平均ともいえる「DSEX指数」の超長期のチャートをご覧ください。
2011年~2013年の間に約半分以下まで下落している様子が見て取れます。アジア通貨危機時も急上昇・急降下しています。
それでは分かり易く直近の2011年からの値動きにFocusしてみましょう。

この間平均して毎年6%以上の経済成長をしていたにも関わらず、株式市場は軟調に推移し2011年時点とほぼ変わらない水準に停滞しています。
バングラデシュの経済規模であるGDPは2011年の$131billionから2017年の$250billionと約2倍に成長しているにも関わらず、
もし仮に2011年の高値で株を購入していたら、元本が60%程度になってしまいます。
日本の高度経済成長期との類似性
実はこのような状況は日本の高度経済成長初期の1960年代にも見られました。
1960年代の日本は街の状況も1人当たりGDPが1000USD台という水準も現在のバングラデシュと酷似している時代です。
投資は1964年の東京五輪目前の時期で、
非常に盛り上がっていた時期ではありますが、
株式市場は以下のように軟調に推移しました。
引用:東京オリンピック(1964年)前後の日経平均株価チャート
一方の不動産市場はどのような値動きであったかというと、
1960年以降オイルショックの時期を除いてバブル崩壊まで一貫して前年同期比プラスとなっており、上昇し続けています。
特に1960年の上昇は凄まじいものがあります。

引用:日本不動産研究所
それでは何故不動産が安定して上昇するのに比べてバングラデシュを含めた新興国の株式市場が激しい値動きになってしまうのか。
また何故経済成長や不動産価格に株式市場がついてこないのかという点について説明していきたいと思います。
経済規模に対して小さい時価総額
バングラデシュの株式市場の時価総額が米国や日本のような先進国より小さいのは経済規模が小さいので当たり前です。
しかし、バングラデシュの経済規模から考えても現在のダッカ証券取引所に上場されている企業の時価総額は小さいのです。
時価総額とは株価×発行済株式数のことで、株式を発行している企業を丸々市場で購入する場合に現時点でいくら必要かという数値です。
世界規模のマクロ経済データを纏めているCEIC社によると、
バングラデシュの株式市場の時価総額は2006年から2017年の12年間の平均値でGDPの16.4%となっています。
最高でも2006年の28.5%、最低ではなんと2006年の4.2%に留まっています。
因みにこの時価総額のGDPに占める率は先進国の方が高く、
米国では現在146.86%、日本では128.3%、英国109.7%、中国が65.4%となっております。
CEICデータを元に筆者作成
ただでさえ日本の20分の1の規模で、
時価総額のGDP比が日本の約6分の1であるため、
バングラデシュの株式市場の時価総額は日本の120分の1の規模しかありません。
このような、小さい時価総額では世界危機があった時などに大口の株主の資金が引き上げられるとインパクトが大きいため、
株価が大幅に下がり連鎖的にロスカットを伴った損切が発生して下落が加速していく為、価格の変動幅が大きくなるのです。
また余談とはなりますが、バングラデシュや多くの時価総額が小さい株式市場では、
適正な価格をアナリストが算定することも少なく、
企業の保有している資産や収益力から測られるファンダメンタルとは乖離した価格つまり株価が市場でつけられてしまうのです。
私も総合商社勤務時代為替トレーダーを行っていた時は、各金融機関のアナリストレポートを読むことが出来ましたが、
バングラデシュを始めとした小さい新興国市場の株のレポートを見た経験がありません。
そもそも上述したように個別株の取引きが出来ないので、レポートにしても意味がないという金融機関の判断なのでしょう。
国民が株式投資を行う水準ではない
日本の例でも見ましたが、昔の1960年代の日本や現在のバングラデシュのような高度成長を実現している国では不動産価格が上昇する一方、株式市場は芳しくない動きをします。
これは1人あたりGDPが1000USD程度の国では、
今日・明日を生きていく為の方策を模索しなければいけず、投資や資産運用に回す資金が国民にないことが影響しています。
日本の高度経済成長期に働き始めた現在80代の我々の祖父母世代が株式投資をしていたなんて話はあまり効かないと思います。
人間生きていく為には、まずは衣食住ですよね。
そのため、不動産価格は他の資産価格に先駆けて上昇をしていくのです。
そしてある程度、余裕が出てきたところで株式投資に人々が走り出し、日本のバブルのような株価急騰を見せるのです。
現在のバングラデシュは株式市場が急騰する水準ではなく、
正に不動産価格が急上昇するタイミングといえる状況なので私はバングラデシュの株式ではなく不動産に投資を行っているのです。
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バングラデシュ株式投資を行わない理由②:株価指数に連動しないETF
最初にバングラデシュには個別株投資は出来ず概ね時価総額加重平均指数に連動するETFへの投資しかできないと申し上げました。
しかし、このETFは実際の株価指数であるDSEXとの連動率が高くないという欠点があります。特にたちの悪いことに、株価上昇局面で上昇を上手く取れていないのです。
まず実際のDSEX指数の2014年から2017年末の上昇率は約47%となっております。

一方ETFの方の上昇率は半分程度で2014年比で1.2倍程度にしかなっておりません。

私も以前インドのETFに投資していたことがあるのですが、
インドのSENSEX指数の上昇率に対して半分程度しか上昇せずに販売会社に問い合わせたことがありました。
その時の回答は、株式の組み換えが頻繁に発生しコストが発生するため、
実際の株式指数に連動しないこともあります。
とのものでしたが、組み換えコストで利益が半分になるという説明に全く納得することが出来ず、新興国のETF投資を行わないことにしております。
むすび
バングラデシュには株式市場が東南アジアの同レベル以上の経済レベルの国に先駆けて存在しており、
上場企業数も多いが時価総額は日本の120分の1という水準で価格の変動幅は大きいです。
また個別株に投資することはできず、
現在日本から投資するにはETFを利用する他ないが、
ETFは実際の株価指数とは連動しないという欠点を備えています。
この7年間バングラデシュ経済は年6%以上の堅調な成長を見せているにも関わらず、株式市場はほぼ無成長の状態であり、
これは1960年代の日本の株式市場と類似しています。
1人あたりのGDPが1000USD~3000USDの水準では株式市場に先駆けて不動産市場が急上昇するため、
現在バングラデシュは株式投資ではなく不動産投資を行うべきライミング。