前回の記事「『タイ・海外不動産』主要購入検討エリア・経済概況・法規制を解説で、ASEAN5に属するタイへの海外不動産投資の基本情報を書きましたが、今回は首都である「バンコク」を更に深掘りした内容を解説していきたいと思います。
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バンコク市内注目エリアの詳細
まずバンコク市内の注目エリアをざっくり把握しておきましょう。その後に交通機関(鉄道)の延伸工事の話をするので、その際も再度確認しましょう。
▷スクンビット地区
タイ最長の道路・スクンビット通りのある、日本人居住者がとても多い地域として有名です。エマカイ駅、トンロー駅、プロンポン駅の3つは日本食レストランやスーパーが多く休日は特に賑わっています。歴史的観光スポットは少ないですが、おしゃれなレストランや高級ホテルなど目白押しで暇しません。バンコクのナイトライフの聖地とも言われる歓楽街のナナ プラザがあるのもこの地区ですね。
上述しましたが、スクンビット地区は邦人が異常に集中しており、世界でも有数の日本人街とも言えます。約4万人の日本人が4キロメートル四方のエリアに住んでいるとのこと。
渋谷で石投げたら中国人にだいたい当たるってのと同じような状況ですね。駐在員も多く、借り手を見つけるのに一番苦労しない地域でしょう。日本人に住んでもらえば安心ですしね。
▷シーロム周辺
銀行本店、金融機関、オフィスビル多数の、各国大使館もありますが、日本で言えば丸の内といえるような地域です。金融街ですね。高級ホテル、ショッピングモールも充実しております。日系企業の多くがこの地域にオフィスを構えます。
▷サイアム周辺
「バンコクの原宿」と呼ばれている地域です。ショッピングの中心街ですね。映画館やブティック、カフェ、レストランなどなんでもあります。子供から大人まで幅広く楽しめる街ですね。私からすると、どちらかというと渋谷だな、というイメージでした。
▷アソーク地区
スクンビット通りとアソーク通りが交わるアソーク交差点があります。その周辺は、高層ビルがそびえ立つビジネス街であり、シーロムに次ぐビジネス中心地として発展しているエリアです。歩いていると、よく欧米のビジネスマンを見かけます。
▷ラチャダムリ周辺
現地富裕層や欧米人に人気エリア。誰でも知っているような高級ホテルが揃っています。(フォーシーズンズ、グランド ハイアット、ホテル オークラなど)お金持ちが好む街ですね。
▷プラカノン地区
バンコク都の行政区の一つです。元々ローカル感の強い地域ですが、都心へのアクセス性が抜群です。スクンビット地区より家賃水準が手頃であり、単身赴任の駐在員はこの地エリアに住むこともあります。2012年に50階建ての超高層コンドミニアムとレストランが入った複合商業施設が完成し、一躍繁華街となりました。
バンコク鉄道事情(延伸工事)
今日時点で、バンコクには以下5線、計77駅の交通機関が稼働中であり、線路の合計距離は109.6kmです。
◯ ARL(エアポート・レール・リンク)空港鉄道×1線
BTS(高架鉄道)は日本で言えば山手線、総武線など都市の市街部を走る鉄道が道路との軌道併用や平面交差を避けるために、地表より高い位置に路線を構築したものですね。
MRT(地下鉄)は銀座線、半蔵門線を思い浮かべれば良いでしょう。ARL(空港鉄道)は羽田空港へ連絡する京浜急行、東京モノレール羽田空港線、成田空港へ連絡する京成電鉄線ですね。
ここでより路線図を詳しく見ていくためにタイ観光庁より路線図を拝借してきました。

それでは各線の状況を把握していきましょう。
▷BTS・スクンビット線(黄緑色)
流行の発信地「サイアム」(Siam)地区、繁華街や複合商業施設のあるチットロム、ナナ、アソークの3駅を通ります。この路線は日本駐在員が多く居住するプロンポン、トンロー、エカマイも通過しますね。但し、基本的には日本駐在員は会社に付与された車、若しくはタクシーを多く利用するので交通に関してはそこまで日本人を気にする必要はないかと思います。(これからフリーランスでタイに住む人が「爆増」するのであれば、考慮する余地はあるかも)
▷BTS・シーロム線(エメラルド色)
サイアム地区、オフィス街、大使館のあるシーロム地区を通ります。
▷MRT・ブルーライン(青色)
タイの国鉄(灰色)のバンコク中央駅であるフアランポーンからオフィス街のあるシーロム地区、ビジネスの中心街であるアソーク地区を通っています。フアランポーンから終点まで乗ると、パープルラインの接続地となるバンスーに到着します。
▷MRTパープルライン(紫色)

引用:MRT Purple Line opens in Bangkok
大枠の路線図にパープルラインがなくて恐縮なのですが、上記の路線図をご覧ください。同線は2016年8月にオープンしましたが、MRTブルーラインとの接続地となるタオプーンとバンスーは工事が遅れており、2019年開業に延期。タイの国民性を考慮すると更に遅れると思います。2020年くらい?(遅)
▷ARL・エアポート・レイル・リンク(赤線色)
バンコク市内とスワンナプーム国際空港を結びます。【ARL・マッカサン駅×MRT・ペチャブリ駅】、【ARL・パヤタイ駅×BTS・パヤタイ駅】で主要路線に乗り換え可能ですね。旅行者で溢れる路線です。
バンコク交通機関の延伸工事の今後の動向とそれを踏まえた注目エリア

上記の図はタイの上場企業会社、BTSのIR資料ですが、左上は現在の109.6kmの既存の路線、左下は2030年までの計画の路線ですね。
右側に路線延伸計画が掲載されています。2030年には515.2kmの路線となる計画ですが、正直にいうと計画はいくらでも変わるので2020(2019E)まで把握しておけば十分でしょう。
私も商社時代に海外の鉄道プロジェクトを担当したことがありますが、Big Projectなので計画が都度変わり、必ず問題が途中で起きるので、今では最初に決めた大枠とは違う方向に走り出しているプロジェクトもあります。
ちなみにその問題というのは大体が自然保護団体や地域住民の団体などからクレームが来るといった性質のものです。これ、本当に笑えないほど大変です。(笑)
今回は住友商事・三菱重工・日立がバンコク市中心部のバンスー駅を起点とし、北に26・4キロメートル、西に14・6キロメートル延びる全線高架の路線である「レッドライン」(2020年開業予定)を受注していますね。住商も過去にアメリカや台湾でも「鉄道車両」案件は何度か経験していますが、「路線」工事は群を抜いて難しいです。寝れない日々が続くでしょう。
現状としては、以下の既存3線が延伸計画通り、工事を進めています。
◯ BTS・スクンビット線(2020年開業の予定)
◯ BTS・シーロム線(2019~2021年開業予定)
新しい路線としては、既存路線の延伸に合わせて以下の新線工事が計画されています。
◯ BTS・ピンクライン(2020年開業の予定)
◯ BTS・イエローライン(2020年開業の予定)
◯ SRT・ダークレッドライン(2020~2021年開業の予定)
◯ BTS・グレーライン(2022年の開業予定)
◯ LRT・スワンナプーム空港ライトレール(2022年開業の予定)
◯ BTS・ゴールドライン(2023年開業の予定)
◯ BTS・ライトブルーライン(2029年開業の予定)
たらればは嫌いですが、計画通りにいけば、首都バンコクの鉄道網は、東京の鉄道網と同様高い水準に整備されることが予想されるでしょう。
単純に投資を考えるのであれば、MRT・ブルーライン、BTS・スクンビット線、BTS・シーロム線の3線がバンコク中心地へのメイン路線となりますので(山手線、東京メトロのような位置づけ)、今後延伸、新線の工事が進むにつれ不動産価格は開業のピークである2020年〜2022年ほどまでは上昇するでしょう。
予算としては、300万円(=100万THB)ほどからコンドミニアム購入ができますが、私がヒヤリングを重ねた結果、すでに良い物件はかなり押さえられてしまっており、もう少し高値になるかと思います。
また、新線で新たにできる駅の周辺地域(日本で言えば神奈川、千葉、埼玉)に関してはまだまだ値上がりの可能性は高いと思います。
次回の記事(vol.3:『タイ・海外不動産』経済発展のポイント・中間所得層の住宅需要解説)で最後となりますが、総括としてタイの今後の経済動向と本当に今、投資を実行するべき国なのか?について論じていきたいと思います。
参考:タイ不動産まとめ・経済概況と主要購入検討エリアと今本当に投資実行すべきなのかについて