今回は、タックスヘイブンについて取り上げてみたいと思います。
タックスヘイブンの話題といえば「パナマ文書」が一時期話題になりましたよね。
タックスヘイブンとは、日本語訳で「租税回避地」となるのですが、著名な人々が活用していたことでバッシングが相次ぎました。

今回はこの話題も含め、タックスヘイブンの概要と共に解説していきたいと思います。
因みに、2000年のOECD租税委員会でタックスヘイブンとされた国・地域は以下の通りです。
- アンティグア・バーブーダ(イギリス連邦)
- グレナダ(イギリス連邦)
- セントクリストファー・ネーヴィス(イギリス連邦)
- セントビンセントおよびグレナディーン諸島(イギリス連邦)
- セントルシア(イギリス連邦)
- ドミニカ国(イギリス連邦)
- バハマ(イギリス連邦)
- バルバドス(イギリス連邦)
- ベリーズ(イギリス連邦)
- アンギラ島(イギリス連邦)
- サモア(イギリス連邦)
- トンガ(イギリス連邦)
- ナウル(イギリス連邦)
- バヌアツ(イギリス連邦)
- セーシェル(イギリス連邦)
- バーレーン(イギリス連邦)
- モルディブ(イギリス連邦)
- タークス・カイコス諸島(イギリス領)
- モントセラト(イギリス領)
- ジブラルタル(イギリス領)
- ガーンジー(イギリス王室属領)
- マン島(イギリス王室属領)
- ジャージー(イギリス王室属領)
- 英領バージン諸島
- 米領バージン諸島
- アルバ(オランダ領)
- アンティル(オランダ領)
- パナマ
- クック諸島(ニュージーランド自由連合)
- ニウェ(ニュージーランド自由連合)
- マーシャル諸島(旧アメリカ信託統治領)
- アンドラ
- リヒテンシュタイン
- モナコ
- リベリア
イギリス連邦の多さが目につきますよね。それでは本編に入っていきます。
Contents
タックスヘイブンとは何か?年間手数料とその仕組み

まずはタックスヘイブンの仮の定義を確認してみましょう。
税金避難地または租税避難地。唯一の確立した定義はないが,広義には,法人所得や利子,配当,使用料などに対して税制上の特典を設けている国または地域のことをいう。
これらの国または地域では,通常は税制上の優遇措置に加えて為替管理,会社法などの面でも特別の規定が定められており,多国籍企業が名目だけの会社を設立し収益をそこに集中して税金逃れをはかったり,資金操作に利用したりする例が多い。
経済協力開発機構 OECDの「有害な税の競争」報告書(1998)は,タックス・ヘイブンの識別要素として,(1) 無税または名目的な課税,(2) 他国と実効的な情報交換を行なっていないこと,(3) 透明性の欠如,(4) 実質的活動の欠如,をあげた。2000年には,イギリス領バージン諸島やクック諸島など 35の国または地域がタックス・ヘイブンとしてリストアップされたが,その後,情報交換協定の締結が相次ぎ,情報交換の確保と透明性の向上がはかられている。
法人所得や利子、配当、使用料などに対して税制上の特典を設けている国や地域とありますね。
上記で「仮」の定義としているのは理由があり、現在全ての当局でタックスヘイブンとみなされているのは、
- バハマ、
- バミューダ、
- ケイマン諸島、
- ガーンジー島、
- ジャージー島、
- マルタ島、
に限られており、世界のほとんどの国は、すでに「特定の産業」向けに優遇税制を引いていることもあり、「タックスヘイブン」との線引きが難しいのです。
では、タックスヘイブンと言われているこのような国や地域はどうしてこのような特典を設けているのでしょう。
答えは「儲かるから」以外には有り得ないのです。
例えばタックスヘイブン国に租税回避をする企業、人々は現地で銀行口座を開く必要がありますので口座開設費用が掛かります。
また、口座を維持するための管理費用も掛かってきますので、その費用がタックスヘイブン国の利益の源泉になるんですね。
そもそも銀行口座を開くには、現地の住所が必要になりますので会社登記が必要になり、登記費用及び年間手数料が必要にもなってきます。国によっては現地人の取締役を会社に設置する必要もあったりする場合もあります。事務所維持費も場合によっては必要になります。
200万を超えるグローバル企業がタックスヘイブンに登記していることから、利益は莫大なものとなることが容易に想像できますね。
登記料や年間手数料は例えば、
- バヌアツ共和国→企業登記:150USD、企業登記簿維持:毎年300USD
- マン島→年間登記簿維持費:320ポンド
企業から見れば年間約5万円ほどですから、それで税メリットがあるのであれば大企業などがこぞって活用する理由が見えてきますね。
タックスヘイブン国の中にはイギリス領島の大国の属領として存在しているところが多く、
- 英領バージン諸島、
- ジャージー(イギリス王室属領)、
- ガーンジー(イギリス王室属領)、
- マン島(イギリス王室属領)、
などなどがあります。
例えばマン島は、英国政府から2億ポンド/年に上る助成金を獲得しており、同国の収入の源泉とされています。
富裕層のタックスヘイブン利用は違法、それとも合法なのか?

基本的に、モナコ王国を除いてほぼ全ての国が累進課税を引いており、富裕層はより高い税金を支払わなければなりません。
そうなってくると、租税回避ができるタックスヘイブン国を利用することはどうしても考えることになりますよね。
富裕層といえば、親の相続や宝くじに当たった、などを除けば事業家であり、会社員の何倍も働いて稼いだ場合が多いはずです。
その血と汗の結晶である資産を、一般人の何倍もの課税をされてしまってはたまったものではない、というのが本音でしょう。
そこでタックスヘイブンの話に興味が出始めるものなのです。
しかし、そもそもタックスヘイブンを利用して租税回避することは、犯罪にならないのか?という疑問がありますよね。
結論としては、正式な手続きを踏んでいれば違法ではありません。
違法であれば今頃世界中のグローバル企業が犯罪企業になってしまいます。
日本を含め、グローバル企業はタックスヘイブンを有効活用している場合が多いのです。
以下は国税庁のタックスヘイブンについて言及している部分の抜粋です。
我が国企業のタックス・ヘイブンへの進出法人数は昭和63年度現在2,911社、我が国企業の対外直接投資総額の約2割がタックス・ヘイブン向けとなっており、その増加傾向は、統計の上でも見てとることができる。
引用:国税庁
国としては、可能な限り税金を集める必要がありますので、富裕層がタックスヘイブンを利用することはポジティブなことではありません。
タックスヘイブン国は徹底的に秘密保持をしていますので、個人情報が公になることはなく、実態の把握が難しいのです。
パナマ文書の個人情報名リストのリーク元・流出元は?著名日本個人名・あの有名企業名も表に

2016年4月にパナマ文書がリークされました。世界で100を超えるニュース媒体が一斉に、それまで秘匿性が保たれていた膨大な資料について報じ始めたのです。
(CNN) 各国要人によるタックスヘイブン(租税回避地)の利用実態を示したとされる通称「パナマ文書」をめぐり、情報源の人物が6日、声明を発表した。世界経済の不平等に関する懸念から大量の文書をメディアにリークしたとしている。
パナマ文書をリークした人物は今回、1800語に及ぶ声明を発表。国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に送られたもので、南ドイツ新聞がリーク元からの声明であることを確認したとしている。
身元については依然として匿名のままであり、性別などの個人情報も明かしていない。書簡には「ジョン・ドウ」(身元不明の男性に使われる仮名)の署名が付されていた。
流出元は、パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」であり、なんと1100万件以上の内部文書が表沙汰になってしまったのです。実際にリークしたのは、「南ドイツ新聞」と「国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)」であり、入手した文書を100ほどのメディアで手分けし、1年かけて裏を取り、報道に至ったとのことです。
流出元はモサック・フォンセカですが、内部告発の可能性も暗示されています。(実際の流出者は未だに不明)
主に、タックスヘイブンの利用を明るみにされたのは、
- カタールのハマド・ビン・ジャーシム・ビン・ジャブル・アール=サーニー前首相、
- ハマド・ビン・ハリーファ・アール=サーニー前首長、
- ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領、
- バジャル・アサド大統領のいとこのラミとハーフェズ・マフルーフ、デービッド・キャメロン英首相の父親であるイアン・キャメロン
- シグムンドゥル・グンラウグソン(アイスランド首相)
- ウラジーミル・プーチン(ロシア大統領)
- ジャッキー・チェン(香港の映画俳優)
- リオネル・メッシ(スペインのサッカー選手)
- エマワトソン(女優)
- サイモン・コーウェル(音楽プロデューサー)
が主な人物です。結果的に、富裕層が税金を納めずに、一般国民が高い税負担を強いられていると、批判が相次ぎました。
そして、日本人の名前もありました。代表的なのは楽天の三木谷浩史社長ですね。UCCの上島豪太社長、セコムの飯島亮最高顧問も暴露されました。
日本の大手企業では、大手広告代理店の電通、総合商社の伊藤忠商事、柳井社長がオーナーのユニクロ、孫正義社長がオーナーのソフトバンクやNHKも疑惑が掛けられました。
しかし、そもそもこのような「世紀のリーク」がない限りはタックスヘイブン国は徹底的な秘密保持の体制が整っているのが基本です。一部の富裕層では「守秘法域」とも呼ばれているのです。
通常のタックスヘイブン国「以外」の国の全ての銀行は、保有する全ての口座に関する「受取利息」を「英国歳入関税局」に報告する義務があり、情報の透明度は非常に高いのですが、タックスヘイブン国では「銀行守秘法」が存在します。
この「銀行守秘法」は「口座所有者」の同意なしでは、
- 口座の存在、
- 口座情報、
の2つを開示した場合は刑罰を受けることになります。契約上の義務を「法律化」して秘匿性を強化したものですね。これは国の政府も情報にアクセスできないのです。
そのアクセスを破ったのが「パナマ文書のリーク」ということですね。
タックスヘイブンに関しては、専門のコンサルティング会社が多数存在し、登記、取締役設置、事務所開設など、現代では比較的容易に利用できるようになっております。リークがない限りは基本的には秘匿性は保たれるのが通常です。
むすび
タックスヘイブンの概要及び、パナマ文書のリーク事件に触れてきましたが、リークで批判が殺到したのはあくまで「違法」だからではなく、「税逃れ」であると各報道機関が大々的に報じたからです。
実際に、富裕層がタックスヘイブンを利用することは有効な資産保全であると考えています。私自身も将来的にタックスヘイブンの活用は必要であると考えており、コンサルタントと会話をすることがあります。
もしあなたも、タックスヘイブンの手続きなどを具体的に知りたいと考えていましたら、お気軽に問い合わせいただければ紹介も可能です。
それでは。