普段は新興国の株式、不動産をメインで紹介していますが、今回は珍しく先進国不動産のお話です。
それもヨーロッパの誰もが移住したいと憧れを持つスペインです。
スペインと聞くと、何を思い浮かべますでしょうか?
サッカー、パエリア、サクラダファミリア、イビサ島などなど有名ですよね。隣には同じくサッカーで有名なポルトガルがありますね。
それでは、資産運用の観点から、スペイン不動産は魅力的なのかを解説していきたいと思います。
Contents
スペインの概要
まずはスペインの概要を押さえておきましょう。
スペイン一般概要
国・地域名 | スペイン Spain |
---|---|
面積 | 50万5,968平方キロメートル(日本の約1.3倍) |
人口 | 4,647万人(2016年7月1日時点、出所:スペイン国立統計局) |
首都 | マドリード 人口317万人(2016年、出所:同上) |
言語 | スペイン語 |
宗教 | カトリック |
引用:Jetro
スペインの首都はバルセロナと勘違いされることもありますが、マドリードになります。
欧州を代表する大都市、そしてレアル・マドリードで有名ですね。市内にはレアル・マドリード御用達のステーキ屋があり、価格も意外とリーゾナブルなので観光する時はぜひ寄ってみると良いでしょう。

私も二度ほど出張で訪れましたが、気候もよく、日が長く、夜になっても明るいので時間の感覚が少し狂ってしまいました。
綺麗な街並みのバルセロナは第二の都市としてオリンピックの開催経験もあります。高速鉄道でパリにも通じ、国際空港であるエル・プラット空港は、便数の観点では「2008年まで」世界でもっとも忙しい航路と言われていました。ターミナルも2つに分かれており、巨大空港ですね。

スペインの経済概要
項目 | 2016年 |
---|---|
実質GDP成長率 | 3.24(%) |
(備考:実質GDP成長率) | 推定値 |
名目GDP総額 | 1,233(10億ドル) |
(備考:名目GDP総額) | 推定値 |
一人当たりの名目GDP | 26,609(ドル) |
(備考:一人当たりの名目GDP) | 推定値 |
鉱工業生産指数伸び率 | 1.90(%) |
消費者物価上昇率 | △0.20(%) |
失業率 | 19.6(%) |
輸出額 | 288,704(100万ドル) |
(備考:輸出額) | 通関ベース |
対日輸出額 | 2,657(100万ドル) |
(備考:対日輸出額) | 通関ベース |
輸入額 | 310,122(100万ドル) |
(備考:輸入額) | 通関ベース |
対日輸入額 | 3,225(100万ドル) |
(備考:対日輸入額) | 通関ベース |
経常収支(国際収支ベース) | 24,077(100万ドル) |
貿易収支(国際収支ベース、財) | △19,646(100万ドル) |
金融収支(国際収支ベース) | 24,204(100万ドル) |
直接投資受入額 | 715,053(100万ドル) |
(備考:直接投資受入額) | フロー、ネット |
外貨準備高 | 52,666(100万ドル) |
(備考:外貨準備高) | 金を除く |
対外債務残高 | 2,874,480(100万ドル) |
政策金利 | 0.00(%) |
(備考:政策金利) | 期末値 |
対米ドル為替レート | 0.90(ユーロ) |
(備考:対米ドル為替レート) | 期中平均値 |
引用:Jetro
一人当たりGDPは26,000ドルと当たり前ですが、新興国の何倍もありますね。不動産を購入する場合、家賃収入であるインカムゲインと、不動産売却利益、つまりキャピタルゲインを狙うことになりますが、ここまで経済が成長していると伸び代が限られるので必然的にインカムゲイン狙いとなるでしょう。
但し、スペイン不動産を購入するような人はすでに社会的にも成功し、世界に別荘コレクションを持つような人向けでしょう。
資産運用の観点からすると、もう卒業している人向けですね。スペインで家賃収入を狙える物件を探す、というと何か違和感があります。
現在のスペイン情勢・治安
スペインといえば直近の情勢として、カタルーニャ自治州(州都バルセロナ)が独立を宣言しましたよね。
独立宣言の背景として、2012年のユーロ危機で、国内でも裕福だったカタルーニャ自治州は国の支援に活用される税金面で割りを食っていたことが挙げられました。カタルーニャ自治州は徴税権を州に渡すことを要求するも中央政府に拒否されました。
徴税権とは税を徴収する権利のことを言います。
バルセロナは92年のバルセロナオリンピックをきっかけに経済成長を果たし、移民を受け入れ国際都市として発展しました。
簡単にいえば、最も儲かっている州なのに国からどうしてそんなに税を徴収されなければならないんだ、と怒っているんですね。典型的な富裕層的思考ですね。
結局、2017年10月に中央政府などの反対を押し切って、独立を可決しました。(スペイン政府もこの住民投票は違法としていたんですが)
中央政府はその後、上院の承認を受けカタルーニャ直接自治に動き、同州の自治を剥奪しました。結果的に現在は独立運用の熱も冷め、街は落ち着いた状況に戻りつつあるみたいです。お騒がせ、ですね。治安は落ち着いているみたいです。
しかし、2018年5月にはカタルーニャ州は独立推進派であるキム・トラ氏を選出しました。
尚、BBC Newsの報道では、独立を無理やり可決した際の主要メンバーであるカルレス・プッチダモン前首相と前閣僚5人はスペインを離れ、自主亡命しております。
スペインに残った4閣僚は拘留されており、合わせて25人が反乱罪や公金流用、国家反逆罪などの容疑で起訴されました。バングラデシュの歴史解説記事でも独立については触れましたが、このように反乱罪として推進した人間は捕まってしまうんですね。
独立を訴える情勢はまだまだ緩やかに続きそうですね。
スペイン不動産購入のメリット・デメリット

スペインで不動産を購入し、得られるメリットはもちろん実際移住するのであればその景観、もありますが、ズバリ「永住権」でしょう。
現状は、
- 50万EUR以上の不動産購入で滞在ビザが2年間申請可能、更新後は5年間有効。
- 実際に滞在する必要はなく、ビザ更新は可能。
- 7年間ビザを維持できればスペイン永住権の申請が可能となる。
- スペイン永住権はシェンゲン協定によりEU圏内であればどの国での居住・就労が可能となる。
といった条件です。7年間ビザさえ維持できればEUで働ける、移住することが可能なわけです。ヨーロッパにどうしても将来的に移住したい人には50万EUR用意できれば良いのでかなりのメリットですよね。
実は、当初スペイン政府は50万EURではなく16万EUR以上で永住権(明確には言及ないもビザ発給)付与を許可を出すことを検討していました。
しかし、スペインで永住権を出すと、スペインだけではなくEU圏内(シェンゲン領域)の他の国に、将来的に移住者が急増してしまう可能性がありました。
(注)シェンゲン領域(2013年7月現在)
アイスランド,イタリア,エストニア,オーストリア,オランダ,ギリシャ,スイス,スウェーデン,スペイン,スロバキア,スロベニア,チェコ,デンマーク,ドイツ,ノルウェー,ハンガリー,フィンランド,フランス,ベルギー,ポーランド,ポルトガル,マルタ,ラトビア,リトアニア,ルクセンブルク,リヒテンシュタイン
引用:外務省
ちなみにシェンゲン協定とは以下のようなものです。域内移動が可能ということですね。
シェンゲン協定
ヨーロッパ各国間の,域内の人や物の移動の自由に関する協定。
1985年6月14日オランダ,ドイツ連邦共和国(西ドイツ。→ドイツ),フランス,ベルギー,ルクセンブルクの 5ヵ国がルクセンブルクのシェンゲン村で署名した「共通国境管理の漸進的撤廃に関する協定」と,1990年6月19日に同地で署名されたシェンゲン実施協定からなる。
引用:シェンゲン協定
永住権を得た後に、物件の価値が上がっていたらキャピタルゲインも状況によってはもしかしたら狙えるかもしれない、というところですがそれは少し難しそうであり、収益をあまり期待できないのがスペイン不動産購入のデメリットです。
つまり、資産運用にはあまり向かないでしょう。家賃収入(インカムゲイン)を得るにも、物件の入念な選定が必要ですし、日本からでは手間が掛かりすぎます。お金持ちの遊び程度に思っていた方が良いと思います。
では、なぜキャピタルゲインを狙うことができないのかについて経済分析から解説していきます。
スペインのGDP成長率
スペインのGDP成長率で現在の経済状況を把握しましょう。
引用:World Economic Outlook Database, October 2017を元に筆者作成
リーマンショックが原因で2008-2009年は経済危機に陥っていますね。
これを機に欧州債務問題が発生し、経済回復に本当に時間がかかりましたが、スペインは2014年には経済成長がプラスに転じ、その後は3%台で推移しています。漸く元の水準に戻ってきたというところでしょうか。
欧州債務危機は、「欧州ソブリン危機」や「ユーロ危機」とも呼ばれ、ギリシャの財政問題に端を発した債務危機が南欧からユーロ圏、欧州へと広域に連鎖した一連の経済危機をいいます。
これは、2009年10月のギリシャの政権交代を機に、同国の財政赤字が公表数字よりも大幅に膨らむことを明かしたことに始まり、当初はギリシャ危機のみでしたが、その後、アイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリアなどに飛び火し、さらには欧州全体の金融システムまで揺るがす事態となりました。また、マーケットでは、当時、債務問題の中心となった、ポルトガル(P)、アイルランド(I)、イタリア(I)、ギリシャ(G)、スペイン(S)を「PIIGS諸国」と呼びました。
引用:欧州債務危機
日本は1%台の成長ですから、先進国の中でもスペインは経済成長を維持している方だと言えるでしょう。
スペインの人口ピラミッド
それでは国の今後の経済成長を予測するにあたり重要な指標となる人口ピラミッドをみていきましょう。
引用:スペイン人口ピラミッド
理想の形とはほど遠いですよね。若年層が少なく、40-44歳が最も多いので、近未来では長寿国となりそうです。
これでは労働力も担保できず、消費も拡大せず、人口も減少していくので移民に頼っていく経済になってしまう可能性が高いです。
「人口が減少する国」は投資をしないことが鉄則です。
長期的な経済成長は見込めず、不動産投資をしてキャピタルゲインを目指すのも少し難しく感じます。
スペインのGDP産業構造
スペインの産業構造を紐解いてみましょう。以下は2015年のデータとなってしまいますが、すでに農林水産業、製造業など労働集約型の産業から完全にサービス業に転換が終わっていますね。
サービス業の中では、観光関連産業である商業・運輸業・ホテル業が最大で、産業構造全体の 24%に相当します。スペインは古くから残っている建造物で収益を確保し、これからも建造物は古くなればなるほど価値が上がりますので、ある程度の収益は確保し続けるでしょう。
以下は産業別成長率の推移ですが、リーマンショック、欧州債務危機時はサービス業さえも落ち込んでいましたがようやく復活してきました。
上記ですでにサービス業を牽引しているの商業・運輸業・ホテル業等と述べましたが、その背景となる外国人観光客の数は、2011年以降は過去最高を更新し続けており2014 年は5600万人と人口4600万人に対して1.2 倍となりました。
2015年以降も、増加しており、記録を更新し続けています。
2017年にはバルセロナでテロが起きましたが、それでも外国人観光客数で世界2位となり、人口およそ4700万人の同国に対して、8200万人余りの外国人が訪れたとForbesが報じています。観光業の一本足打法ですね。ちなみに1位はフランスとなっています。
スペイン不動産は資産運用には不向き
さて、上記までの経済分析をみるとキャピタルゲインはあまり見込めないことがわかりましたが、それでも永住権が欲しいという方は購入を検討してみても良いかもしれません。
スペイン不動産を探す上での代表的なサイト(century21、idealista、fotocasa)では、マドリード、バルセロナに住む場合は50万EURではあまり景観が良いと言われている物件は少なく、住めたとしても非常に狭い部屋になってしまうかと思います。良い物件を見つけるにも、タイミング次第かと思います。
100万EURを出せば漸く憧れの都心に住めるイメージでしょうか。人生で成功した人向きであると言える状況ですね。(成功していればもっと高い物件を購入すると思いますが)
私がスペイン不動産の購入を検討するのは、新興国投資などでさらに大きくキャピタルゲインを得た時になるかと思います。資産運用で考える属性の海外不動産ではないでしょう。
海外不動産に関してはスペインだけではなく、各国分析していますので参考にしてみてくださいね。
その他にもバングラデシュ不動産を私は今最も注目しています。
それでは。