これまでも様々な新興国株式銘柄を紹介してきましたが、今回はシンガポールの株式投資を取り上げたいと思います。
新興国といっても、シンガポールは1人あたりGDPが53,000USDと、日本の38,000USDを超えて先進国の中でもトップクラスの生活水準となります。
シンガポールの他、ルクセンブルクなども小さな国で、金融の中心とされる国ではこのような数字となる特徴があります。
シンガポールの株式市場を同国概要と今後の経済発展の可能性から見ていきましょう。
- シンガポールの特徴として、金融センターとして世界有数の国であり、土地面積は非常に狭い(720㎢ 、東京23区と同レベル)
- シンガポールのGDP成長率は2%(2017年は2.5%)と低く感じるが、日本(2017年は1.7%、2018年見込みは1.2%)よりもすでに裕福な国が、2%の経済成長をしておりかなり優秀な国である。
- 人口ピラミッドは日本と似ており、高齢者が今後大部分を占める未来が予見できる形となっている。
- シンガポールは隣接国の「中継貿易地点」として大きな役割を担っている。
- 輸出先も輸入先もやはり「ASEAN」と「中国」がタイと同様にほとんどを占め、中国依存の側面が強い。
- 中国に依存せず他の国々への貿易を進めばシンガポールはさらなる経済成長が可能と言える。
- シンガポールの株式市場全体のPERは16.5倍となり、日本と同水準であり、大きなリターンを狙う投資方針であれば割高感がある。
- ハイリターンを求めるのであれば、他の市場も視野に入れるべき。
Contents
シンガポールの概要
では、シンガポールの一般概要と経済概要を見ていきましょう。
シンガポール一般概要
国・地域名 | シンガポール共和国 The Republic of Singapore |
---|---|
面積 | 719.2平方キロメートル(東京23区[626.7平方キロメートル]をやや上回る規模) |
人口 | 561万人(2016年6月末。人口には、国民、永住者、および長期滞在 (1年超)の外国人が含まれる。出所:シンガポール統計局) |
宗教 | 仏教、イスラム教、ヒンズー教、道教、キリスト教ほか |
民族構成 | 中国系(74.3%)、マレー系(13.4%)、インド系(9.1%)、その他(3.2%) ※2016年6月末時点。国民・永住者の人口(393万3,600人)の内訳。 |
公用語 | 英語、中国語(北京語)、マレー語、タミル語 ※国語はマレー語 |
引用:JETRO
民族が中華系74.3%、マレー系13.4%、インド系9.1%と世界でも富裕層である華僑により支えられている国とも言えますね。
シンガポール経済概要
項目 | 2016年 |
---|---|
実質GDP成長率 | 2.00(%) |
(備考:実質GDP成長率) | 推定値 |
名目GDP総額 | 297.0(10億米ドル) |
(備考:名目GDP総額) | 推定値 |
一人当たりの名目GDP | 52,961(米ドル) |
(備考:一人当たりの名目GDP) | 推定値 |
鉱工業生産指数伸び率 | 3.71(%) |
消費者物価上昇率 | △0.50(%) |
失業率 | n.a. |
輸出額 | 330,182(100万米ドル) |
(備考:輸出額) | 通関ベース |
対日輸出額 | 14,922.3(100万米ドル) |
(備考:対日輸出額) | 通関ベース |
輸入額 | 281,976(100万米ドル) |
(備考:輸入額) | 通関ベース |
対日輸入額 | 19,637.7(100万米ドル) |
(備考:対日輸入額) | 通関ベース |
経常収支(国際収支ベース) | 56,501(100万米ドル) |
貿易収支(国際収支ベース、財) | 82,786(100万米ドル) |
金融収支(国際収支ベース) | 59,279(100万米ドル) |
直接投資受入額 | 1,096,320(100万米ドル) |
(備考:直接投資受入額) | フロー、ネット |
外貨準備高 | 246,365(100万米ドル) |
(備考:外貨準備高) | 金を除く |
対外債務残高 | 2,442,180(100万米ドル) |
政策金利 | 0.96(%) |
(備考:政策金利) | 期末値 |
対米ドル為替レート | 1.38(シンガポール・ドル) |
(備考:対米ドル為替レート) | 期中平均値 |
引用:JETRO
シンガポールの特徴として、土地面積は非常に狭い(720㎢ 、東京23区と同レベル)のは周知のことかと思います。同国は金融センターとして世界有数の国であり、総合商社も金融部門の社員は皆シンガポールに駐在していましたね。生活をするにも物価が非常に高く、貯金が貯まらないという話はよく聞いていました。
他の新興国の数値を見ていると、シンガポールのGDP成長率は2%(2017年は2.5%!)と低く感じますが、日本(2017年は1.7%、2018年見込みは1.2%)よりもすでに裕福な国が、2%の経済成長をしておりかなり優秀な国と言えます。
シンガポール経済成長率の推移
では、シンガポールの経済成長の過去からの推移を見ていきましょう。
引用:World Economic Outlook Database, October 2017を元に筆者作成
一時的に15%のGDP成長を記録しましたが、近年は経済成熟国として安定していますね。では、シンガポールへの投資を考える上で、この成長率を今後も維持できるのか?という点がポイントになっていきますので考察していきましょう。
シンガポールの人口ピラミッド
まずはシンガポールの人口ピラミッドを見てみましょう。
やはり理想的な形とはならず、日本と似た高齢者が今後大部分を占める未来が予見できる形となっています。経済成長が停滞してしまう形と言えますね。労働人口もボリュームゾーンである50歳-60歳の国民が引退する頃に、大きく減少していくことがわかります。
シンガポールGDPの構成
まずはシンガポールのGDPを支出面でみていきたいと思います。

先進国、例えば日本や米国の場合、個人消費が70%~80%を占めるのが通常ですが、シンガポールに関しては貿易が約30%を占めています。
同じくアジアの韓国のようにシンガポールも「貿易立国」なので、世界経済の動向によって影響を受ける構造になっています。内需で賄える国であれば良いのですが、不安材料はその点になります。
シンガポールの輸出入製品の1位は「集積回路」、2位は石油精製品となります。
貿易製品を見る限り、取り扱い製品は長期で変わらず、シンガポールは隣接国の「中継貿易地点」として大きな役割を担っていることが読み取れます。総合商社時代に船舶部門がシンガポールに拠点を置いて船の売買やリース取引をしていたことを思い出します。
貿易相手国の話に移ると、輸出先も輸入先もやはり「ASEAN」と「中国」がタイと同様にほとんどを占めます。ASEANと東アジアの中継地点としての役割を果たしていることが分かります。
シンガポールの場合、中国の経済が停滞すると、貿易が縮小することになりますので、マイナス成長となることも予想できます。シンガポールへの投資を考えるのであれば中国経済の動向は常にウォッチしておく必要がありますね。
次に、シンガポールの産業別GDPは以下となります。
引用:National Accounts Main Aggregates Database
農林水産業が0%というのは驚きですね。それだけ面積が小さく、街で占められる国であることを示しています。シンガポールは観光地としても有名で、商業、飲食、宿泊が大きな割合を占め、貿易立国であることから運輸、倉庫、通信が11%と言えるのも納得なところです。金融業はその他サービスに分類され、こちらは意外にも5%前後となります。
製造業が18.4%と高いのは、エレクトロニクス、化学、バイオ医薬、輸送機械、精密機器などの主要産業が活発化しており、バイオ医薬産業が特に近年急速に成長しているという特徴があります。
インダストリー4.0という言葉に象徴される通り、製造業の“デジタル化”と“自動化”は、今や世界的な潮流の一つです。シンガポールにおいても、製造業はGDPの20%を占め、労働力の14%を占める重要な分野です。
私たちは、製造業の“デジタル化”と“自動化”を企業競争力を促進し、成長性を維持するための核としてとらえ、取り組んでいます。
製造業の競争力を高める次世代製造技術について、私たちはこれを二つの分野にとらえて推し進めています。
まず自動化というのは、ロボティクスによって製造プロセスを自動化する技術だけではなく、アディティブ・マニュファクチャリングのような、より破壊的な製造技術にも及びます。
そして第二の分野がデジタル技術です。IoTやAIなど、センサー技術によって製造工程をデータ化しクラウドに統合することで、ビッグデータ解析を行うことが可能になります。これによって製造プロセスの“デジタルカイゼン”を行うことが出来ます。
今後の「自動化」「デジタル化」が進むことにより製造業は発達する可能性は高く、低コストで量産ができるようになると他東南アジア諸国の製造業を吸収する可能性もあり、中国に依存せず他の国々への貿易を進めることができればシンガポールはさらなる経済成長が可能と言えるでしょう。
シンガポール株銘柄・高配当利回りをチャートで検討、購入(買い方)は楽天証券、SBI証券などネット証券がおすすめ
シンガポールは小さい国ですが、株式市場はしっかりと存在しています。以下はシンガポール株式市場に上場されている主要銘柄となります。
引用:シンガポール株式市場
シンガポールの株式市場全体のPERは16.5倍となり、日本と同水準であり、大きなリターンを狙う投資方針であれば、割高感がありますね。12%などの高配当な銘柄も存在しますが、PER20倍と非常に割高状態であり、経済動向によっては少し恐怖がありますね。
念のため、PERは、
時価総額(株価×発行済株式数) ÷ 税引後純利益
で算出されますが、自分の持っている株の元本を「何年間で稼ぎ出してくれるか」を意味しています。
PERが低ければ低いほど、割安な銘柄で溢れているということです。標準的なPERは「14倍-16倍」であり、例えば日経平均株価は16倍程度になります。
新興国株のような成長余地が高い株式市場では分母の利益が年々伸びていきます。
さらにシンガポール株式を見ていくと、「複合事業体」と言われる形態でPERが5-7倍だったりしますが、おそらくこれは総合商社のような複数分野の事業を生業にしている会社です。
余談ですが、総合商社のPERは7-9倍で放置されていますよね。同時にPBRは0.7倍ほどとなっています。これは投資家(市場)が企業の価値に懐疑的になっているためです。
念のため、PBRの定義も確認しておきましょう。
PBR:
1株当たりの純資産(注)に対し、株価が何倍まで買われているかを表したのが株価純資産倍率(Price Book-Value Ratio)です。
(注)ここで使用される「純資産」とは、貸借対照表上の「純資産の部」から少数株主持分および新株予約権等を除去した金額、つまり自己資本(株主持分)を意味します。
株主には、株式会社が解散したとき、持ち株数に応じて残された会社の資産を分配してもらう権利があります。この対象となるのが純資産です。つまり株主のものに帰す資産といえます。1株当たりの純資産は、純資産を発行済株式数(発行済株式総数-自己株式数)で割って算出します。
例えば、純資産400億円、発行済株式数5,000万株の会社の場合、1株当たりの純資産は800円です。株価が1,200円なら、PBRは1.5倍になります。PER(株価収益率)が会社の収益力を判断する指標なのに対し、PBRは会社の資産内容や財務体質を判断する相対的な指標です。
PBRが1ということは、株価と1株当たりの純資産が等しいということです。このとき、この会社の株式を買うと、1株に対する投資金額と1株当たりの解散価値が一致しています。もし会社が解散すれば、投資金額はそのまま戻ってくる理屈です。つまり投資金額のリスクがないことになります。逆に言えば株価は1株当たりの純資産を下回らないということになりそうですが、現実にはPBRが1を割ってくる場合があります。経営不安の場合は別として、割安と評価されて投資価値が相対的に高まり、PBRが1を下値に株価が回復するケースも多く見られます。このようにPBRは株式を物的証券と見た投資尺度ともいえるでしょう。
引用:日本証券業界
例えば、100億円で外資企業銘柄を購入したが、それだけの価値があるのか?と投資家が割り引いて考えた結果、一見、割安に見えているのです。おそらく、シンガポールの複合事業体も同様の理由かと思います。
シンガポールST指数も見てみましょう。
引用:シンガポールST
米国と中国の貿易問題から5月頃から大打撃を受けていることがわかります。
上記で述べた、中国への貿易依存がそのまま反映されていますね。
尚、投資信託・etfの購入を検討するのであれば、楽天証券とSBI証券が手間がかからず、簡単に始められる点からおすすめです。投資する際の手間は可能な限り減らしたいですよね。
シンガポール株式投資の総括
これまで新興国の位置付けでシンガポールを解説してきましたが、もはや同国は先進国であり、株式市場も先進国の市場に他なりません。先進国投資をするのであれば、米国株式指数への投資か日本のバリュー株投資が優位性が高いので、あえてシンガポールに資金を投下しリターンを得ようとは思えませんね。
他の新興国投資を検討する方が賢明でしょう。私はバングラデシュ不動産投資を選んでいます。
- 『フィリピン株式市場』おすすめ海外新興国を経済・国家政策より解説
- 『インドネシア株式』おすすめ海外新興国投資を経済・国家政策で解説
- 『インド株式市場』おすすめ海外新興国を経済・国家政策より徹底解説
- 『ミャンマー株式市場』おすすめ海外新興国を経済・国家政策より解説
- 『ベトナム株式』おすすめ海外新興国投資を経済・国家政策より解説
- 『カンボジア株式』おすすめ海外新興国投資を経済・国家政策より解説
- 『ブラジル株式市場』おすすめ海外新興国を経済・国家政策より解説
- 『ロシア株式市場』おすすめ海外新興国を経済・国家政策から徹底解説
- 『ラオス株式』おすすめ海外新興国投資を経済・国家政策より徹底解説
- 『タイ株式市場』おすすめ海外新興国投資を経済・国家政策より解説
- 『マレーシア株式』おすすめ海外新興国投資を経済・国家政策より解説
- 『イラン株式』高成長・超割安のおすすめ新興国を徹底解剖
- 『新興国株式投資』タイミングはいつ?経済成長の見通しを予測・解説
- ASEAN投資は検討すべき?東南アジア諸国連合の概要と今後の発展
- ASEANの現状を経済見通しで解説・投資不安要素は中国の経済減速
それでは良い投資ライフを。