こんにちは、YOSHITAKAです。
証券化スキームを通じて不動産投資を目的に投資家の資金を集める会社を、
「不動産ファンド」
と呼びますが、
少数の機関投資家など限定して募集する、
「私募ファンド」
の特徴について今回は解説していきたいと思います。
Contents
私募ファンドの特徴は?

私募ファンドの特徴は主に「運用期間」「エクイティ・デット」(資本・負債)「情報開示」の3点です。
それぞれ分けて解説していきたいと思います。
私募ファンド(不動産プライベートファンド)の運用期間は短期集中

J-REITでは運用を継続していくことが前提となっているのに対し、私募ファンドでは運用が3年、5年などの一定期間に限定されています。
運用期間中に物件を全て売却し、期間終了後は解散することが予定されている短期集中型とも言えるでしょう。
私募ファンドの流動的なエクイティ・LTV(借入比率)

J-REITでは証券市場においては、投資口をいつでも売買・換金が可能となっています。
私募ファンドにおいて、運用期間の途中でエクイティを売却する場合には市場取引ではなく、相対取引となるため、流動性は低いといえます。
J-REITでは、将来の新規物件取得に備えるなどの理由で、多くの銘柄で借入比率の上限を設定して運用を行っています。
その一方で私募ファンドでは、エクイティの利回りを向上させるため、J-REITと比較し、借入比率を高めてハイレバレッジをかけて運用しているケースが多いのです。
私募ファンドの情報開示・応募は可能なのか?

J-REITは「特定投資家」だけではなく幅広く、一般の方の投資家を募集する公募不動産ファンドです。
そのことから、法令・規則などで情報開示のルールが定められ、ホームページなどで情報が公開されています。
一方で私募ファンドでは、投資家は少数の機関投資家などに限定されており、情報開示に関する規制は緩く、基本的には関係者に対してのみ情報が開示されています。
私募ファンドの投資家とはどのような人なのでしょうか?
代表的な投資家は、
- 年金基金、
- 生命保険会社、
- 損害保険会社、
- 金融機関、
などの機関投資家となります。
国内のみならず、北米・欧州・アジアパシフィックなど、海外の機関投資家が日本の私募ファンドに投資を実行しています。
また、不動産会社を中心とする事業法人や、割合は極めて低いですが、個人の資金の担い手の一つで、これも国内のみならず、海外からも資金が流入しています。
さらに政府系ファンドも重要な担い手の一つとなっています。
政府系ファンドとは、豊富な石油や天然ガスなどの資源による収入、外貨準備高などの国家資産を原資に投資を行うファンドですが、その資金の一部は、不動産に向けられています。
代表的なものとしては、
- アラブ首長国連邦のアブダビ投資庁、
- 中国投資有限責任公司、
- シンガポール政府投資公社、
などが挙げられます。
一般人が私募ファンドで投資するのは難しいですが、まとまった資金があり富裕層コネクションがあれば、投資できる可能性は十分にあるでしょう。
私募ファンドが保有する不動産とは?J-REITとの違いは?

私募ファンドにおいて、どのような物件が運用されているのでしょうか?
2012年末時点と少し古いデータですが、私募ファンドの保有不動産の物件の中で、資産額ベースで見るとオフィスが60%、商業施設が20%、住宅が12%、その後に物流施設、ホテルと続きます。
J-REITの物件用途別割合に関しては2013年6月末時点で、
- オフィス50%、
- 商業施設19%、
- 住宅18%、
- 物流施設10%、
- ホテル3%、
などとなっており、私募ファンドよりやや住宅、物流施設の割合が高いこと以外は大きな差はないようです。
私募ファンドの物件の所在地としては、東京23区で物件ベースで48%、資産額ベースで66%、関東、近畿の順で大きくなっており、この点もJ-REITと大きく違いはありませんね。
タイプ別私募ファンド(運用スキーム分類)
個人の投資商品に様々な商品タイプがあるように、不動産の私募ファンドにおいても投資家のニーズに合わせて様々なタイプが用意されています。
私募ファンドの運用形態は、
- 物件特化型、、
- 追加取得型、
- 一任型、
の3つに分類されます。
物件特定型
物件特定型とは、アセットマネジメント(AM)会社があらかじめ投資家に好まれるであろう不動産を準備し、ファンド組成の準備をして投資家に不動産を販売するための営業活動を実施します。
予算を組んだ金額まで投資資金が集まった段階で運用を開始するという運用形態となるのです。
資金が集まりファンドを組成したあとは、物件の追加取得を行わない形態であるため、投資家にとっては、想定外の物件取得に係るリスクを負担する必要がありません。
追加取得がある場合に比べてリスクの全体を把握しやすい商品となります。世界金融危機以降は特に、投資家のリスクに対する考え方は厳しくなっており、物件特定型のファンドの割合が年々増加しており、2012年時点では90%がこの形態となっています。
追加取得型
追加取得型は、物件特定型と「一任型」(後述)の中間とも言える運用形態です。
ファンド組成前に一部の取得物件が確定しているものの、ファンド組成後に追加で物件を取得する運用形態のことを言います。
かなりフレキシブルでもありますよね。
一任型
一任型とは、ファンド組成前には取得物件が確定しておらず、将来取得したいと考える投資対象不動産の基準を設け、これに基づきアセットマネジメント(AM)会社の裁量で物件取得を行う運用形態のことを言います。
この形態では、取得する不動産の投資判断は実質的にAM会社に任され、投資家は将来どのように不動産ポートフォリオが構築されるのかスタート時には具体的に見えないこととなるため「ブラインド・プール型」とも呼ばれます。
一任型では、うんっ県取得に関して、投資家の意思統一が必要ないため、機動的な運用をすることができ、また、多くの投資家から巨額の資金を集めて大型の不動産に投資することも可能になります。
一方で、個別の不動産取得について投資家が取得可否の判断を差し狭むことができないというデメリットがあります。
タイプ別私募ファンド(運用戦略分類)
運用戦略による分類もあります。リスクリターンの観点から、以下の3つに分けられます。
- コア型、
- バリューアッド型、
- オポチュニティ型、
それではそれぞれ解説します。
コア型
コア型とは、インカムゲインを重視し、長期保有を前提として不動産に投資する戦略のことを言い、投資する物件としては、キャッシュフローの安定したS・Aクラスのオフィスビルや住宅、一等地の大型商業施設などが比較的多くみられます。
バリューアッド型
バリューアッド型とは、コア型とオポチュニティ型の中間的なリターンを狙う投資戦略を指します。
例えば、リニューアルや修繕が必要なのに前所有者の資金不足などが理由で放置されていたり、テナントの入居率が低下しているのに適切な募集活動が行われていなかったりすることが原因で、収益が低下している物件を、現在の低い収益性を前提とした価格で取得し、その後自らリニューアルやリーシングを行って賃料や稼働率を工場させ、高い収益を前提とした価格で売却することによって、キャピタルゲインを獲得する手法です。
オポチュニティ型
オポチュニティ型とは、将来の価格や収益の上昇を見込める不動産を購入し、短期間に売却してキャピタルゲインを求める戦略のことを言います。
基本的にコア型よりも当初は高い利回りで、かつ将来利回りが低下しそうな物件を取得します。2007年前後の「ファンドバブル」と呼ばれた時期には、都心部を中心に地価や不動産価格が急激に上昇していったため、短期に転売してキャピタルゲインを獲得しようとする、オポチュニティ型のファンドが多く見られました。
しかし、リーマンショック以降は、オポチュニティ型のファンドの割合は10%前後の水準となっています。
むすび
ここまで不動産ファンドの「私募ファンド」について解説してきました。
リートは調べれば調べるほど奥が深くなりますが、資産運用を行う上での考え方、ヒントがたくさんありますので、他の記事も参考にしてみてくださいね。
- 海外ヘッジファンド・おすすめ投資先を紹介~日本人一流ファンドマネージャーによる運用~
- 新光US-REITオープン(ゼウス投信)を徹底評価ー評判のUSリート投信を解剖ー
- REIT(リート)の重要指標NAV倍率、FFO倍率、分配金利回りを解説
- リート(REIT)配当が高利回りの理由 -法人形態・資金レバレッジ-
- 【2018年】J-REIT(リート)の見通しと銘柄選びのポイントを徹底解説
- アメリカREIT(リート)・サブプライム問題を教訓に選ぶ不動産証券
- J-REIT(リート)の特徴と魅力、投資する際に考えたいリスクを徹底解説
- REIT・不動産証券化の仕組みと損しない投資対象物件の条件を解説
- リート(REIT)って何?発祥地米国と日本のJ-REITの歴史について解説する