これまでも様々な新興国株式銘柄を紹介してきましたが、今回はマレーシア株式投資を取り上げたいと思います。
マレーシアは東南アジア諸国の中でシンガポールに次ぐ発展国で、中所得国の罠である一人当たりGDP10,000USDを抜け出すのも間近な国になります。
私は新興国株式は徹底的に張り付いており、各種分析を進めているので、アウトプットの意味も含め、マレーシア株式は魅力的な市場なのか?という点を発信していきたいと思います。
- マレーシアは他新興国に先駆けて外資誘致や輸出増加で成功を収め、現在でも経済成長は衰えず、ASEAN主導国としての地位を固めている。
- 2017年時点で一人当たりGDPも9,818USDと、中所得国の罠である一人当たりGDPが10,000USDを突破間近。
- 15歳〜34歳までの若い労働人口が大きなボリュームを占めており、今後の20年-30年間は労働人口が減少せず、消費も見込まれるので継続的な経済成長を予測できる。
- 一人当たりGDPが高くなり賃金上昇により製造業が中国に移った後、サービス産業に転換しても経済成長していることが読み取れる。
- マレーシアの輸出先・輸入元は中国が最も比率を占めており、中国依存型となる。単純に中国経済が失速をすると、マレーシア経済に直撃する。
- 新興国株式は投資を考えるとPER20倍程度が限度ですが、マレーシア株式のPERは15倍を超えるものがほとんど。銘柄の中には60倍〜80倍の銘柄もあり、割高感がある。
- マレーシア株に投資を考えるのであれば貿易面で中国に依存している点は懸念材料があり、政治も混乱状況であることは投資を考える際には頭に入れておきたい。
Contents
マレーシア概要
まずは国の概要と経済概要をみていきましょう。
マレーシア一般事項
国・地域名 | マレーシア Malaysia |
---|---|
面積 | 33万290平方キロメートル(日本の0.87倍) |
人口 | 3,170万人(2016年、出所:マレーシア統計局) |
首都 | クアラルンプール 人口179万人(2016年) |
言語 | マレー語、英語、中国語、タミール語 |
宗教 | イスラム教、仏教、ヒンドゥー教、キリスト教など |
公用語 | マレー語 |
引用:JETRO
マレーシア経済概要
項目 | 2017年 |
---|---|
実質GDP成長率 | 5.9(%) |
名目GDP総額 | 315(10億ドル) |
一人当たりの名目GDP | 9,818(ドル) |
鉱工業生産指数伸び率 | 4.3(%) |
消費者物価上昇率 | 3.7(%) |
失業率 | 3.4(%) |
輸出額 | 217,944(100万ドル) |
対日輸出額 | 17,424(100万ドル) |
輸入額 | 195,243(100万ドル) |
対日輸入額 | 14,816(100万ドル) |
経常収支(国際収支ベース) | n.a. |
貿易収支(国際収支ベース、財) | n.a. |
金融収支(国際収支ベース) | n.a. |
直接投資受入額 | 41,041(100万リンギ) |
(備考:直接投資受入額) | フロー |
外貨準備高 | 100,878(100万ドル) |
(備考:外貨準備高) | 金を除く |
対外債務残高 | 879,768(100万リンギ) |
政策金利 | 3.00(%) |
(備考:政策金利) | 期末値 |
対米ドル為替レート | 4.06(リンギ) |
(備考:対米ドル為替レート) | 期末値 |
引用:JETRO
マレーシアの経済の略歴と現在の成長率
マレーシアは、1957年にイギリスから独立以降、与党連合の「統一マレー国民組織」による長期安定政権が続きました。
1981年に就任したマハティール首相による、日本の経済成長を模倣したルックイースト政策を掲げ、他新興国に先駆けて外資誘致や輸出増加で成功を収めました。
現在でも経済成長は衰えず、ASEAN主導国としての地位を固めまています。以下はマレーシアの経済成長率をグラフで表したものです。
引用:World Economic Outlook Database, October 2017を元に筆者作成
マレーシアはGDP成長率が5%前後で安定しており、2017年時点で一人当たりGDPも9,818USDと、中所得国の罠である一人当たりGDPが10,000USDを突破間近です。
現状のまま経済成長は進むのか?というのが今後のマレーシアへの投資を考える上では大事な指標です。
マレーシアの人口ピラミッド
国の経済が発展していくかどうか、検証するためにまず重要となる、人口ピラミッドをみていきましょう。
理想的なピラミッド型とはなりませんが、15歳〜34歳までの若い労働人口が大きなボリュームを占めており、今後の20年-30年間は労働人口が減少せず、消費も見込まれるので継続的な経済成長を予測できます。
労働人口を担保するのが、国の教育レベルになるのですが、マレーシアは小中学校、高校の教育システムが「競争社会」であり、結果的に教育水準は他新興国に比べると高いです。
マレーシアの東大とされるマレーシア大学は、世界大学ランキングでは日本の東京大学、京都大学より下ですが、一橋大学、慶応義塾大学より上位にランクインしています。
つまり教育レベルは高いことが実感できますね。今後の経済発展を考える上では大きなプラス材料となります。
マレーシアGDPの今後の成長
次にマレーシアのGDPの成長を支える、国民の需要と国・企業の供給の側面を見ていきましょう。
引用:マレーシア需要供給
まず左グラフの需要面ですが、マレーシアの経済成長は「民間消費」(黄色)が大きなポーションを占めています。これは国内経済が堅調であり、消費が活発に行われている内需主導型の成長であり、他要因に依存しない安定した構造であるといえます。
次に右グラフの供給面ですが、サービス業(灰色)が成長を索引している「成熟した産業構造」となっています。一人当たりGDPが高くなり賃金上昇により製造業が中国に移った後、サービス産業に転換しても経済成長していることが読み取れます。
マレーシア主要の貿易産品と貿易相手国
上述の通り、GDP成長に占める貿易の寄与度は小さいにも関わらず、貿易産品を生産するために働いている人口はまだまだ多く、貿易が立ち行かなくなると、マレーシア国内の経済にも大きな影響が出ます。以下はマレーシアの貿易相手国と輸出品目です。
引用:みずほ銀行
グラフを見てみると、原油・石油製品・パーム油など資源に当たる輸出品目の比率が約29%と、マレーシアは資源偏重型となります。パーム油はアブラヤシの果実から得られる植物油つまりは食用油ですね。
そしてマレーシアの輸出先・輸入元は中国が最も比率を占めており、中国依存型となりますね。単純に中国経済が失速をすると、マレーシア経済に直撃します。
マレーシアの政治と課題
マレーシアの政治の話をすると、2009年に就任したナジブ首相によって設立された国策投資会社「1MDB」(投資対象は不動産や発電所など)の不正会計や不透明な取引問題が発生し、同首相の汚職嫌疑に発展しています。
1MDB=1 Malaysia Developement Berhad
引用:みずほ総合研究所
更にナジブ首相は2003年まで就任していたマハティール元首相と確執があり、マハティール元首相が与党を離脱し、野党と共にナジブ首相の辞任を要求するといった政府内部での混乱が続いています。
実際長年政権を維持している与党の得票率は低下傾向により、将来的には政権交代が発生することも見えてきており、国民の政治への不信感が強まっています。政治の停滞は国民消費や産業発展の足かせになるので、不安要素ですね。
マレーシア株式銘柄・投資信託とetfの購入是非と方法・おすすめはSBIと楽天証券などネット証券会社、配当利回り高い銘柄も存在
次にマレーシアの株式市場の現状をみていきましょう。
引用:マレーシアの主要な株価
株式銘柄をそれぞれ見てみると、新興国株式は投資を考えるとPER20倍程度が限度ですが、マレーシア株式のPERは15倍を超えるものがほとんどです。
すでに割安ではなく、銘柄選択は慎重に実施する必要があります。配当利回りも8%と高いものがありますので、バランスを見て選択しましょう。
銘柄の中には60倍〜80倍の銘柄もあり、割高感があります。
マレーシア株はSBI証券や楽天証券などで投資信託、ETFがあり、購入するのであれば同2社が手間をかけずに簡単にできるのでおすすめです。(売買手数料は取引の往復で4%と高いです)
マレーシア株価チャート:クアラルンプール総合指数
最後にチャートを確認してみましょう。マレーシアの代表的な指数であるクラルンプール総合指数です。ここ1年の推移ですが、2018年7月以降、少しずつ上半期の水準に戻りつつありますね。
引用:クアラルンプール総合指数
マレーシア株式投資についてのまとめ
マレーシア経済は中所得国の罠を抜け出す段階であり、産業も労働集約型の産業から資本集約型への移行が比較的スムーズに進んでいます。
人口ピラミッドを見ても人口ボーナスは継続していますが、貿易面で中国に依存している点は懸念材料があり、政治も混乱状況であることは投資を考える際には頭に入れておきたいですね。
株式市場もPERの水準を考えると割安ではなく、銘柄選択は入念な分析が必要です。少しマレーシアへの株式投資は難しいかもしれません。
おすすめの新興国株投資方法ーフロンティア・キャピタルー
今までマレーシアの経済と株式市場について分析してきました。
新興国経済の分析は非常に手間がかかりますし、成長力が高い国を見つけても既に今後の成長を織り込んでしまっている国が多いです。
全員が投資できる環境にある国では資金が流入しやすいので、割高になってしまうのですね。
更に個別銘柄分析を行うにしても、馴染みのない企業を英語で企業分析する難易度は非常に高いです。
本当に魅力的な新興国株は成長力が高く尚且つ割安な新興国市場です。

このような魅力的な新興国に投資しているファンドにフロンティア・キャピタルがあります。
フロンティア・キャピタルが投資している銘柄の中にはPERが4倍の銘柄や配当利回りが20%のような銘柄に投資しています。
非常に魅力的な銘柄に投資を行うことにより2018年4月の運用開始以降3カ月で16.6%(年率64%)の成績を叩きだしています。
フロンティア・キャピタルについては詳しく纏めていますのでご覧頂ければと思います。
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