前回の記事では、インド株式投資をするにあたって押さえておくべきインド経済の基本情報をメインに解説をしてきました。
今回はより深掘りした内容で、
インド株には投資すべきかどうかを解説していきます。
- 産業別GDPは不動産・金融・その他のサービス業が中心となっており、経済成長に寄与している。
- 民間消費=個人の消費が拡大しており、内需の拡大による経済成長をしている。
- 新興国にしてはまだまだ総固定資本形成比率が低い。
- インフレは2013年までは10%近くとなっていたが、現在は毎年鎮静化し、個人消費を支えている。
- 2018年時点でインド株式に投資するのはPER・PBRの数値から割高感は否めない。
Contents
インドの産業構成別GDP
インドの産業別GDPの成長について見ていきたいと思います。

引用:経済産業省
上の2つめの表を見て欲しいのですが、
不動産・金融・その他のサービス業が中心となっており、経済成長に寄与していることが理解できます。
サービス業も不動産・住宅が最も大きな割合を占め、個人の消費が大きいことが読み取れますね。
非常に良い形をしていると思います。
インドの需要別寄与度の推移
インドの需要項目を見てみましょう。
引用:経済産業省
緑色のデータを見て欲しいのですが「民間消費」の比率が高いことがわかります。
民間消費=個人の消費が拡大しており、
つまりは内需の拡大による経済成長をしています。非常に好循環と言えますね。
以下のデータは日本の高度経済成長期の消費財保有比率ですが、
インドは今後このような推移を辿る可能性が高いとも言えます。
インドの投資(総固定資本形成)・純輸出
また先程のデータに戻ります。
赤色のインドの総固定資本形成を見てみましょう。
新興国にしてはまだまだ比率が低いことがわかります。

例えば中国は投資を積極的に実行して経済成長をしてきました。
以下のデータで、中国の総資本固定形成が2006年(正確には2003年からですが)から40%を超え続けていることがわかります。
「過剰設備」「過剰生産」「過剰債務」の3大苦を抱えており、
現在経済の停滞に苛まされています。

引用:経済産業省
インドはこれから海外からの投資を受け入れ、インフラ整備から順に経済成長の礎を築いていく最中と言えるでしょう。
エメラルド色の「純輸出」(=輸出から輸入を引いたもの)項目を見てみましょう。
純輸出の経済成長への寄与度の比率は2016年はマイナスであり、
他国に依存しない経済成長を果たしていると言えます。
タイやマレーシアは貿易でASEAN地域、中国依存が大きく、中国経済が停滞した際には大きな影響を受けてしまいますが、インドは問題ないことがわかります。
引用:経済産業省
2008年の世界金融危機・リーマンショックが起きた際にもGDPも3.8%の成長を継続しており、耐性の強い経済環境と言えます。
そもそも人口が12億人もいますので、海外に依存する必要もないということでしょう。
インドの経常収支・国際収支
経常収支は外国との取引においての利益・損失を見る指標の一つですが、インドはどうでしょう。
左の表で注目していただきたいのが、2010年台の経常収支の大幅な赤字です。
当時は国内消費・外資資本の増加が活発で、資本財の輸入増加・原油価格上昇が発生したことが要因です。
しかし、2014年より経済政策としてインフレ率を下げ(次項参照)、同時に原油価格も下落し、貿易赤字が縮小、結果的に経常収支も改善しました。
右の表を見ていただくとわかりますが、国際収支に「直接投資」と「証券投資」の要素を加えると総合収支は黒字に転じていますね。海外からの投資を呼び込んでいることがわかりますね。
インドのインフレ率
インドの経済成長率は高く、インフレ率が高くなっていないか気になるところです。
以下の同国のインフレデータを見てください。
引用:World Economic Outlook Database, October 2017を元に筆者作成
インドのインフレは2013年までは10%近くとなっていましたが、現在は毎年鎮静化し、個人消費を支えています。
インフレが低く抑えられていれば、中央銀行の政策金利を引き上げるなど、経済をコントロールする必要もないので経済成長を停滞させることはありません。
政策金利の推移に関しては以下の図を見てみましょう。
引用:ニッセイ研究所
現状7%の金利と高いですが、インド中央銀行は金利を年々引き下げていますね。
経済恐慌が発生しても利下げをすることにより乗り切れる体制を作っているとも言えるでしょう。
インドの財政収支
インドの課題といえば、GDP比における「債務」の大きさですね。
主要なアジア新興国の債務比率の平均が45%を推移する中、インドに関しては70%の債務比率であり、毎年赤字が継続しており、拡大傾向にあります。
赤字が拡大している原因としては「国の税収」に対する低いGDPです。
引用:三菱UFJリサーチ
インドは少し問題があり、納税をしっかりする国民が5%を切ります。
これには理由があり、例えば日本では103万円の収入を超える人は納税義務があり、国民の大半が税金を納めています。
しかしインドは課税所得が高く設定されており、所得税の納税者が2~3%しかいません。現在、見直しが検討されています。
以下はインドの外国人の国債保有率です。
4%を切る水準ですので、債務不履行に陥る可能性は限りなく低いでしょう。
日本と同様、外国人の国債保有を少なくしています。
引用:HSBC
以下は銀行の不良債権比率ですが、2017年9月時点で10%を超えており高い水準にあります。
企業の貸し渋りが起き出すと、経済成長の歯止めをかけることになりますので、ここは要注意ポイントです。
インドの政治
国の経済成長を軌道に乗せ、継続していくにも安定した政治が必要です。
以下はこれまでのインドの政策の流れと現在のモディ政権前のシン政権との比較です。

引用:HSBC
モディ首相が就任し政権交代してからは、規制緩和により海外からの直接投資も増加、税制度も整理され始めました。
モディ首相が実施した主な政策として、インド独立後最大の税制改革「GST」の導入があります。
3-1|GSTの制度概要
物品税や付加価値税など17の税(Tax)及び福祉など特定目的の23の課税(Cess)がGSTに統合、多種多様の課税対象は物品・サービスの供給(取引)に統一された(図表5)。もっともアルコール税、印紙税などの間接税は現状を維持し、GSTとは別途課税されることになっており、全ての間接税がGSTに統合された訳ではない。
引用:ニッセイ基礎研究所
インド中央政府はこれまで、
- 物品税
- サービス税
- 中央サービス税(州を跨ぐサービス)
と、上記3つの課税をする「権利」を有していました。
しかり、これに加えて「各州政府」もVAT(Value added tax=消費税)の課税する「権利」がありました。
企業にとっては課税主体や、地域によっては税率が異なり逐一確認する必要があるなど手間や混乱の部分で大きく企業成長を阻害していました。
これを経済成長の足枷となる問題と捉え、GST、つまり税率の統合を2017年に実行しました。GDP成長率がGSTにより1.5%から2.0%向上するというデータもあります。
インドの株式市場は投資対象とすでに割高感がある
インドの経済は解説すべきことが多いので、本題の株式市場の話に漸く辿り着きました。
インドの株式市場・国立証券取引所は1992年に設立されました。国立証券取引所の他に、ボンベイ証券取引所もあります。
国立証券取引所の株式時価総額は2兆ドルを超えており、アジアでは香港に次ぐレベルの規模感です。
引用:野村資本市場研究所
次に、SENSEX指数をみていきます。日本でいえば日経平均のことですね。
引用:楽天証券
2018年時点でインド株式に投資するかどうかですが、
- PER:23倍
- PBR:3.5倍
となっており、正直に言ってしまうと新興国にしては割高です。
すでに投資タイミングとしては遅いです。
インドはわかりやすく今後の経済成長が見込まれるので、それだけ投資参入する人が多いということです。
それでもインド株に投資する手法としては、指数連動型ETF、若しくは投資信託と、個別株にADRという仕組みを使って投資する手法があります。
個人的には、インドの株式市場への資金の流入は一貫してプラスに転じており、状況的にETFや投資信託が組成された時点で、リターンが見込める水準ではなくなると考えています。
また、インドには以前私もETFで投資していましたが、インド株式指数と上場投信の連動率は低く、あまりおすすめできたものではありません。
上昇率の6-7割程度しか取れませんでした。
ADRで個別株に投資する場合は、インドの個別株は当局が規制しており、日本から直接取引することはできません。
インド株式をインドの銀行に預け、リターンとしてアメリカの銀行が証券を出す制度をADR(=American Deposit Receipt)と言いますが、
この仕組みを楽天証券などで間に米国市場を介在させることで取引は可能となります。(往復取引手数料は4%)
インド株は、企業の財務諸表が英語ではありますが、やはり読み解くのは困難であり、
すでに割高の市場ですので株式銘柄の選択が肝になるのを鑑みると、個人的にはすでにおすすめの投資先とは言えません。
インド株式に興味がある方は、企業分析してインド株にトライして見るのも良いかもしれません。未来はどうなるかわかりませんので。
他の新興国株式投資も参考にしてみてくださいね。
→ 【2018年最新版】新興国株式投資先ファンド・ETFランキング
- 『フィリピン株式市場』おすすめ海外新興国を経済・国家政策より解説
- 『インドネシア株式』おすすめ海外新興国投資を経済・国家政策で解説
- 『シンガポール株式市場』おすすめ海外新興国投資を経済・政策より解説
- 『ミャンマー株式市場』おすすめ海外新興国を経済・国家政策より解説
- 『ベトナム株式』おすすめ海外新興国投資を経済・国家政策より解説
- 『カンボジア株式』おすすめ海外新興国投資を経済・国家政策より解説
- 『ブラジル株式市場』おすすめ海外新興国を経済・国家政策より解説
- 『ロシア株式市場』おすすめ海外新興国を経済・国家政策から徹底解説
- 『ラオス株式』おすすめ海外新興国投資を経済・国家政策より徹底解説
- 『タイ株式市場』おすすめ海外新興国投資を経済・国家政策より解説
- 『マレーシア株式』おすすめ海外新興国投資を経済・国家政策より解説
- 『イラン株式』高成長・超割安のおすすめ新興国を徹底解剖
- 『新興国株式投資』タイミングはいつ?経済成長の見通しを予測・解説
- 崩壊間近?中国経済の実態・2018年以降の成長可能性を分析・解説
- ASEAN投資は検討すべき?東南アジア諸国連合の概要と今後の発展
- ASEANの現状を経済見通しで解説・投資不安要素は中国の経済減速