新興国株式投資

『インド株式市場』おすすめ海外新興国投資を経済・国家政策より徹底解説

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これまでも様々な新興国株式銘柄を紹介してきましたが、今回はインドの株式投資を取り上げたいと思います。

インドといえば経済成長著しく、現在のモディ首相が就任してから本格的に発展を遂げていますね。

私が出張でインドにいった5年前は、道路も全く整備されておらず、国民が取っ組み合いの喧嘩を始めたりと無法地帯で、カルチャーショックを受けました。

そんなインドですが、今後も経済成長は続いていくのか、投資家の目線から解説していきたいと思います。

今回のポイント
  • 人口は12億1000万人(2011年時点)と、大国中国に次ぐ二位であり、労働人口数、総人口が今後も増え続け、2060年時点で17億5000万人となることが予想されている。
  • 理想的な人口ピラミッドの形であり今後の経済発展のポテンシャルが高い。
  • 全体としての教育水準はまだまだ低い実態がありますが、富裕層の子息は確りと教育されている。
  • かつてはイギリスの植民地であったことから、英語を公用語とし、欧米の外資系ともパートナーシップを組みやすい点がある。
  • 不動産・金融・その他のサービス業が中心となっており、経済成長に寄与している。
  • 民間消費=個人の消費が拡大しており、内需の拡大による経済成長をしている。
  • 新興国にしてはまだまだ総固定資本形成比率が低い。
  • インフレは2013年までは10%近くとなっていたが、現在は毎年鎮静化し、個人消費を支えている。
  • 2018年時点でインド株式に投資するのはPER・PBRの数値から割高感は否めない。

インドの概要

まずは大まかにインドを把握するために、国の概要を見ていきましょう。

インド一般概要

国・地域名インド India
面積328万7,263平方キロメートル(日本の約8.8倍)
人口12億1,019万人(2011年センサス)※センサスは10年ごとに発表
首都デリー 人口1,675万人(2011年人口センサス)
言語ヒンディー語、英語、ウルドゥー語、ベンガル語
宗教ヒンドゥ教(79.8%)、イスラム教(14.2%)、キリスト教(2.3%)、シーク教徒(1.7%)、仏教(0.7%)など(2011年センサス)
公用語ヒンディー語(連邦公用語)、英語(準公用語)

引用:JETRO

インド経済概要

項目2016年
実質GDP成長率7.1(%)
(備考:実質GDP成長率)2011年基準
名目GDP総額121,898(10億ルピー)
(備考:名目GDP総額)2011年基準
一人当たりの名目GDP1,723(ドル)
鉱工業生産指数伸び率4.6(%)
(備考:鉱工業生産指数伸び率)2011年基準
消費者物価上昇率4.5(%)
(備考:消費者物価上昇率)2012年基準
失業率3.5(%)
輸出額276,238(100万ドル)
(備考:輸出額)年度
対日輸出額3,856(100万ドル)
(備考:対日輸出額)年度
輸入額382,681(100万ドル)
(備考:輸入額)年度
対日輸入額9,756(100万ドル)
(備考:対日輸入額)年度
経常収支(国際収支ベース)△22,088(100万ドル)
(備考:経常収支(国際収支ベース))年度
貿易収支(国際収支ベース、財)△108,504(100万ドル)
(備考:貿易収支(国際収支ベース、財))年度
金融収支(国際収支ベース)14,715(100万ドル)
直接投資受入額42,216(100万ドル)
(備考:直接投資受入額)フロー、ネット
外貨準備高380,291(100万ドル)
(備考:外貨準備高)金を含む
対外債務残高485,081(100万ドル)
政策金利6.25(%)
(備考:政策金利)レポ・レート、期末値
対米ドル為替レート67.03(ルピー)
(備考:対米ドル為替レート)期中平均値

引用:JETRO

インドの魅力的は他にはない人口の多さです。

人口は12億1000万人(2011年時点)と、大国中国に次ぐ二位となりますが、インドが同国と大きく異なる点は、労働人口数、総人口が今後も増え続け、2060年時点で17億5000万人となることが予想されていることです。末恐ろしいポテンシャルです。

インドの人口と教育水準

今後の経済発展を分析するために重要な指標となる、インドの人口ピラミッドを見てみましょう。

インドの人口ピラミッド引用:インド(人口ピラミッド)

かなり理想的な人口ピラミッドの形をしています。日本と同じ「壺型」となってしまった中国と比べると、人口ピラミッドを見るだけでも今後の経済発展のポテンシャルが高いことが分かります。

現在インドの一人当たりGDPは1723ドル(2016年)と、驚きですが、ASEANではカンボジアの次というレベルです。まさに最貧国であり、新興国の経済成長が一旦頭打ちとなる「中所得国の罠」である10,000USDまでかなり距離があります

労働人口が多くても教育水準が低いと、経済成長に寄与しにくくなるのですが、インドの教育水準は高く、安心感があります。

当たり前ですが、貧しい国なので、教育を受けられない国民も多く、全体としての教育水準はまだまだ低い実態がありますが、富裕層の子息は確りと教育され、インド工科大学卒の学生は入社1年目から「年俸が2000万円」という水準で欧米で雇用されています

例えば、インターネットの世界で覇権を握っている米GoogleのCEOはインド人のサンダー・ピチャイ氏(Sundar Pichai)です。

また、ウィンドウズ95で一気に世界で成り上がったマイクロソフトのCEOもインド人であるサヤト・ナデラ氏(Satya Nadella)となります。インド勢の活躍が凄まじいです。

他にもIT企業ではなく、金融でもインド勢は活躍を見せています。例えばドイツ銀行のアンシュ・ジェイン氏(Anshu Jain)はドイツ人のユルゲン・フィッチェンと共同頭取を務めています。

数え上げればキリがありませんが、ペプシコ、サンディスク、NOKIAなど、世界でも名だたる企業のトップに就任している例が多いです。

数学という一つの教科をとってもインドはレベルが高く、東京大学の学生も太刀打ちできない水準でしょう。さすがは「0」という数字を発明した国というところです。

インドは近年、IT教育に力を入れており、IT専門学校への1年の学費は日本円で10万円程度ととても安く、インド人はプログラミングを習得しやすい環境にあります。日本だと2ヶ月15万円のオンラインコースなどが限界ですもんね。それだけITへの意識が高いです。

そのインドの教育水準の高さは、中東の富裕層をも引き寄せるほどであり、年々インドの高等教育は発展しています。私自身、教育水準のさらなる向上が将来インドが米国をあっさり抜き、大国としてのし上がるための決定的な要素だと感じています。

労働集約型の限界点である一人当たりGDP10,000USDの「中所得国の罠」に陥ることなく、イノベーションや知識集約型の産業にスムーズに移行していくことを期待しています。

インドの言語・世界に於ける優位性

インドは他アジア新興国と異なる圧倒的優位性があります。それが国の位置と使用言語です。

インドは過去に「イギリス領インド帝国」としてイギリスの植民地であったことから、英語を公用語とし、欧米の外資系ともパートナーシップを組みやすい点があります。

レアジョブやDMM英会話などフィリピン人講師を起用したオンライン英会話が日本でも人気ですよね。

私も以前に一度利用したことがありましたが、フィリピン大学(日本でいえば東京大学)の学生が英語を丁寧に教えてくれ、発音も綺麗、文法も正確であり、優秀層の英語はとにかくレベルが高いと思いました。

インドの驚異的な経済成長率

まずはインドのGDP成長率をみてみましょう。

インドのGDP成長率引用:World Economic Outlook Database, October 2017を元に筆者作成

非常に勢いのある経済成長率を誇っており、中国の経済成長をも上回ります。

直近の2016年-2017年はインド政府が「高額紙幣の廃止」を2016年11月に発表したことにより成長率が下がっています。インドの現金流通量の8割を占める高額紙幣が流通しなくなり国民は混乱し、個人消費が落ち込んだことに起因します

少し解説を入れます。

2016年11月にインド・モディ首相は国内紙幣である「500ルピー」と「1000ルピー」の廃止を公式に発表しました。以下は参考までにインドルピーの紙幣です。1ルピー=1.6円程度となります。

1000ルピー(=1600円相当)廃止
500ルピー(=800円相当)廃止
100ルピー(=160円相当)
50ルピー(=80円相当)
20ルピー(=32円相当)
10ルピー(=16円相当)
5ルピー(=8円相当)

発表が前もってなされたものではなく、突然のことであり、国民が紙幣の廃止を聞かされてからなんと「4時間後」に無効になるという内容でした。今持っている高額紙幣が無価値になるということです。

当然、全くの無価値な紙幣となる訳ではなく、2016年中であれば新紙幣と交換可能となります。1000ルピーと500ルピーは全流通量の86%を占めるため、「新紙幣」との交換のために銀行には大衆が押し寄せました。

以下が新紙幣の200ルピーです。

インド紙幣

政府への批判が集まることを予想する人も多くいましたが、国民は政策を支持する方向に向かっているようです。

では、なぜこのような高額紙幣廃止に踏み切ったのでしょうか?

政府の狙いは以下の2点です。

  • ブラックマネーの撲滅
  • 現金決済脱却

インドには統計上現れない「ブラックマネー」が存在し、不正蓄財をはじめ、汚職や脱税が起きており、ブラックマネを締め出すことで根本的解決として紙幣廃止に踏み切りました

また、紙幣廃止後の新紙幣への交換の際に、現金主義が多いインドの国民に銀行口座開設させ、同時にクレジットカードも申し込みをさせることで、国として現金決済を減らそうという試みでもあります。

このような紙幣廃止の一時的な要因でインドの経済成長は若干減速していますが、それでも約7%の成長を続けており、さらなる経済成長のためとしての施策としては正しいと考えています。

中国を見てみると、強引な経済成長をさせ、延命治療しているような施策ではなく、安心感があります。

インドの産業構成別GDP

インドの産業別GDPの成長について見ていきたいと思います。

インドのサービス産業構造

引用:経済産業省

下の2つめの表を見て欲しいのですが、不動産・金融・その他のサービス業が中心となっており、経済成長に寄与していることが理解できます。サービス業も不動産・住宅が最も大きな割合を占め、個人の消費が大きいことが読み取れますね。非常に良い形をしていると思います。

インドの需要別寄与度の推移

インドの需要項目を見てみましょう。

インドの実質GDP成長率及び需要別寄与度の推移引用:経済産業省

緑色のデータを見て欲しいのですが「民間消費」の比率が高いことがわかります。

民間消費=個人の消費が拡大しており、つまりは内需の拡大による経済成長をしています。非常に好循環と言えますね。

以下のデータは日本の高度経済成長期の消費財保有比率ですが、インドは今後このような推移を辿る可能性が高いとも言えます。

日本の耐久消費財保有比率の推移とインドの現状引用:三井住友アセットマネジメント

インドの投資(総固定資本形成)・純輸出

また先程のデータに戻ります。

赤色のインドの総固定資本形成を見てみましょう。新興国にしてはまだまだ比率が低いことがわかります。

インドの実質GDP成長率及び需要別寄与度の推移

例えば中国は投資を積極的に実行して経済成長をしてきました。

以下のデータで、中国の総資本固定形成が2006年(正確には2003年からですが)から40%を超え続けていることがわかります。「過剰設備」「過剰生産」「過剰債務」の3大苦を抱えており、現在経済の停滞に苛まされています。

中国の総資本固定形成の増加率

引用:経済産業省

インドはこれから海外からの投資を受け入れ、インフラ整備から順に経済成長の礎を築いていく最中と言えるでしょう。

エメラルド色の「純輸出」(=輸出から輸入を引いたもの)項目を見てみましょう。

純輸出の経済成長への寄与度の比率は2016年はマイナスであり、他国に依存しない経済成長を果たしていると言えます。タイやマレーシアは貿易でASEAN地域、中国依存が大きく、中国経済が停滞した際には大きな影響を受けてしまいますが、インドは問題ないことがわかります

インド・ASEAS主要国の輸出依存度と米国輸出依存度(10年変化)引用:経済産業省

2008年の世界金融危機・リーマンショックが起きた際にもGDPも3.8%の成長を継続しており、耐性の強い経済環境と言えます。そもそも人口が12億人もいますので、海外に依存する必要もないということでしょう。

インドの経常収支・国際収支

経常収支は外国との取引においての利益・損失を見る指標の一つですが、インドはどうでしょう。

インド経常収支・国際収支引用:国債投信アジア投資環境レポート

左の表で注目していただきたいのが、2010年台の経常収支の大幅な赤字です。当時は国内消費・外資資本の増加が活発で、資本財の輸入増加・原油価格上昇が発生したことが要因です。

しかし、2014年より経済政策としてインフレ率を下げ(次項参照)、同時に原油価格も下落し、貿易赤字が縮小、結果的に経常収支も改善しました。

右の表を見ていただくとわかりますが、国際収支に「直接投資」と「証券投資」の要素を加えると総合収支は黒字に転じていますね。海外からの投資を呼び込んでいることがわかりますね。

インドのインフレ率

インドの経済成長率は高く、インフレ率が高くなっていないか気になるところです。以下の同国のインフレデータを見てください。

2017年までのインド・インフレ率引用:World Economic Outlook Database, October 2017を元に筆者作成

インドのインフレは2013年までは10%近くとなっていましたが、現在は毎年鎮静化し、個人消費を支えています。インフレが低く抑えられていれば、中央銀行の政策金利を引き上げるなど、経済をコントロールする必要もないので経済成長を停滞させることはありません

政策金利の推移に関しては以下の図を見てみましょう。

インドのインフレ率政策金利
引用:ニッセイ研究所

現状7%の金利と高いですが、インド中央銀行は金利を年々引き下げていますね。経済恐慌が発生しても利下げをすることにより乗り切れる体制を作っているとも言えるでしょう

インドの財政収支

インドの課題といえば、GDP比における「債務」の大きさですね。主要なアジア新興国の債務比率の平均が45%を推移する中、インドに関しては70%の債務比率であり、毎年赤字が継続しており、拡大傾向にあります。赤字が拡大している原因としては「国の税収」に対する低いGDPです。

インド一般政府部門の財政収支対GDP比率主な新興国における税収の対GDP比率引用:三菱UFJリサーチ

インドは少し問題があり、納税をしっかりする国民が5%を切ります。これには理由があり、例えば日本では103万円の収入を超える人は納税義務があり、国民の大半が税金を納めています。しかしインドは課税所得が高く設定されており、所得税の納税者が2~3%しかいません。現在、見直しが検討されています

以下はインドの外国人の国債保有率です。4%を切る水準ですので、債務不履行に陥る可能性は限りなく低いでしょう。日本と同様、外国人の国債保有を少なくしています。

新興国・国債の外国人保有比率:国際比較引用:HSBC

以下は銀行の不良債権比率ですが、2017年9月時点で10%を超えており高い水準にあります。企業の貸し渋りが起き出すと、経済成長の歯止めをかけることになりますので、ここは要注意ポイントです。

問題債券(=貸し出し条件緩和債券+不良債権)比率の推移引用:公益財団法人 国際金融情報センター

インドの政治

国の経済成長を軌道に乗せ、継続していくにも安定した政治が必要です。以下はこれまでのインドの政策の流れと現在のモディ政権前のシン政権との比較です。

インド政権の年表

モディ政権の経済成長加速に向けた政策引用:HSBC

モディ首相が就任し政権交代してからは、規制緩和により海外からの直接投資も増加、税制度も整理され始めました。

モディ首相が実施した主な政策として、インド独立後最大の税制改革「GST」の導入があります。

3-1GSTの制度概要
物品税や付加価値税など17の税(Tax)及び福祉など特定目的の23の課税(Cess)がGSTに統合、多種多様の課税対象は物品・サービスの供給(取引)に統一された(図表5)。もっともアルコール税、印紙税などの間接税は現状を維持し、GSTとは別途課税されることになっており、全ての間接税がGSTに統合された訳ではない。

引用:ニッセイ基礎研究所

インド中央政府はこれまで、

  • 物品税
  • サービス税
  • 中央サービス税(州を跨ぐサービス)

と、上記3つの課税をする「権利」を有していました。

しかり、これに加えて「各州政府」もVAT(Value added tax=消費税)の課税する「権利」がありました。企業にとっては課税主体や、地域によっては税率が異なり逐一確認する必要があるなど手間や混乱の部分で大きく企業成長を阻害していました

これを経済成長の足枷となる問題と捉え、GST、つまり税率の統合を2017年に実行しました。GDP成長率がGSTにより1.5%から2.0%向上するというデータもあります。

インドの株式市場は投資対象とすでに割高感がある

インドの経済は解説すべきことが多いので、本題の株式市場の話に漸く辿り着きました。

インドの株式市場・国立証券取引所は1992年に設立されました。国立証券取引所の他に、ボンベイ証券取引所もあります。

国立証券取引所の株式時価総額は2兆ドルを超えており、アジアでは香港に次ぐレベルの規模感です。

アジアの取引所の株式時価総額推移引用:野村資本市場研究所

次に、SENSEX指数をみていきます。日本でいえば日経平均のことですね。

インドSENSEX引用:楽天証券

2018年時点でインド株式に投資するかどうかですが、

  • PER:23倍
  • PBR:3.5倍

となっており、正直に言ってしまうと新興国にしては割高です。すでに遅いかもしれません。インドはわかりやすく今後の経済成長が見込まれるので、それだけ投資参入する人が多いということです

それでもインド株に投資する手法としては、指数連動型ETF、若しくは投資信託と、個別株にADRという仕組みを使って投資する手法があります。

個人的には、インドの株式市場への資金の流入は一貫してプラスに転じており、状況的にETFや投資信託が組成された時点で、リターンが見込める水準ではなくなると考えています。また、インドには以前私もETFで投資していましたが、インド株式指数と上場投信の連動率は低く、あまりおすすめできたものではありません。上昇率の6-7割程度しか取れませんでした

ADRで個別株に投資する場合は、インドの個別株は当局が規制しており、日本から直接取引することはできません。

インド株式をインドの銀行に預け、リターンとしてアメリカの銀行が証券を出す制度をADR(=American Deposit Receipt)と言いますが、この仕組みを楽天証券などで間に米国市場を介在させることで取引は可能となります。(往復取引手数料は4%)

インド株は、企業の財務諸表が英語ではありますが、やはり読み解くのは困難であり、すでに割高の市場ですので株式銘柄の選択が肝になるのを鑑みると、個人的にはすでにおすすめの投資先とは言えません。

インド株式に興味がある方は、企業分析してインド株にトライして見るのも良いかもしれません。未来はどうなるかわかりませんので。

それでは良い投資ライフを。