本日は今注目を集めている独立系投資信託である、ひふみ投信について徹底的に分析していきたいと思います。
ひふみ投信の運用手法と今までの成績、手数料形態から、ひふみ投信が現在抱えている問題点について説明していきたいと思います。
Contents
ひふみ投信とは?〜形態・種類・設立者〜
ひふみ投信とは藤野英人氏によって2003年によって設立された独立系の投資信託です。
詳しく紐解いていきたいと思います。
独立系投資信託とは何なのか
会社員の方々が普段購入している投資信託は、
取り扱いのある金融機関から購入することができます。
通常の投資信託は運用会社と販売会社が異なる形式をとっているのです。
しかし、ひふみ投信は運用から販売までをレオス・キャピタルが一貫して担っています。
このような形態をとっている、
- ひふみ投信、
- さわかみ投信、
- ありがとう投信、
- 鎌倉投信、
などを独立系投資信託と呼びます。
確かにひふみ投信そのものはひふみ投信から資料請求を行った上で投資を行う必要がありますが、
後からひふみプラスという形態の通常の金融機関からでも購入できる新形態が登場しています。
3つのひふみ投信
現在、レオス・キャピタルが取り扱っているひふみ投信には直販のひふみ投信、
金融機関で購入できるひふみ投信、
確定拠出年金(iDECO)を保有している方に向けたひふみ年金の三つの形態があります。
iDeCoとは?という方に向けては以前説明した以下記事をご覧いただければと思います。
→ iDeCoのメリット&デメリット・60歳まで資金拘束低リターン?
ひふみ投信・ひふみプラス・ひふみ年金の三つは運用成績自体はマザーファンドで同じ運用を行っているので全く同じです。
図にすると以下のようになります。

しかし三者を比較すると主に手数料の面で以下のような違いがあります。
引用:3つのひふみ投信の違い
手数料については後の段で詳しく触れていきますが、
手数料以外でいうと運用レポートを受け取れるかどうか、という違いが出てきます。
私の個人的な見解としては長期投資を見込むと共に、
自身の投資の腕を磨きたいという意思があるのであれば、
本家のひふみ投信を購入したほうが知識面でも手数料面でも理にかなっていると考えています。
創設者藤野英人氏はどんな人?

ひふみ投信を運用しているレオス・キャピタルを創業し、
現代表取締役社長の藤野英人氏の経歴についてお伝えします。
藤野英人氏は元々裁判官や検察官をめざしていたそうですが、
司法試験に落ちてしまったことから、
社会経験のつもりで現在の野村アセット・マネジメント株式会社に入社されました。
最初に配属された中小型株の運用部署の経験が、
彼の投資人生の礎となっています。
現在のひふみ投信の運用方針も、
この時の経験がふんだんに活かされているものとなっております。
毎日中小企業の社長の話を聞く過程で、
中小企業の運用に対する見識を深めながら将来は自分もリスクを取って会社を立ち上げたいという気持ちが増幅していきました。
入社6年経過したときに実力重視である外資系の会社である現在のJPモルガンアセットマネジメントや、
ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントで経験を積みました。
当時はITバブルで中小型株が大きな成績を上げていたこともあり、
藤野氏はカリスマ・ファンドマネージャーの名前を恣にしておりました。
そして遂に日本の中小型株ファンドマネージャー湯浅氏と仕事で関係のあった五十嵐氏と共に2003年にレオス・キャピタルを立ち上げました。
彼がレオス・キャピタルを立ち上げることとなった想いについてはレオス・キャピタルのホームページに記載されておりましたので引用させて頂きます。
運用会社で働いていく中で「日本に良い投資信託はないな」ということに危機感を抱いていたので、そのオファーを受ける以上に「日本で良い運用会社を立ち上げ、理想の国民的な投資信託を作りたい」という想いがあった
国民的な投資信託とは、長期的に運用され、多くの人が、それを保有することによって、豊かな生活を送ることができる投資信託だと思います。そんな理想の投信をつくるためには、まずは良い運用会社が必要です。
引用:レオス・キャピタル
金融庁の森長官と共に、
藤野英人氏も日本の投資信託の質には危機感を覚えているということですね。
日本の日経平均に対してプラスの運用成果を求めるアクティブ型投資信託の質(高い手数料・低いリターン)については以下に纏めておりますので、
気になる方はご覧いただければと思います。
ひふみ投信の運用手法
ひふみ投信の運用手法について紐解いていきたいと思います。
投資対象
ひふみ投信はリーマンショック真っただ中の2008年1月から運用を開始しました。
藤野英人氏と現運用本部長の湯浅氏の経歴が中小型株のファンドマネージャーということもあり、
当初は主な投資対象は日本の中小型成長株が中心でした。
しかし、運用成績が好調で人気が出てきたとところにカンブリア宮殿で取り上げられたことに伴い預け入れ資産が急騰。
運用規模が大きくなるに伴い大型銘柄の比率が高まってきています。
引用:三菱UFJ信託銀行
実際2018年6月度の運用レポートをみても組み入れ比率10銘柄のうち8銘柄が大型銘柄となっております。
ひふみ投信の大型銘柄の組入比率上昇は後で詳しく述べますが市場平均であるTOPIX化を招いており、
直近では良いパフォーマンスを挙げれていない要因となっています。
柔軟な現金比率
次に柔軟な現金比率が特徴として挙げられます。
先程の組み入れ比率の図をご覧頂きたいのですが、
一番上の現金という部分があります。
ひふみ投信は最大50%まで現金比率を高めることができます。
株式市場がきな臭くなり、
下落する可能性が高いと判断した場合は株式を売却して現金比率を高めることによって下落率を抑える工夫を行っているのです。
例えば1000万円を全額株式に投資しており、
株式が20%下落した場合は損失は200万円となります。
一方1000万円を保有するものの、
500万円を株式、
500万円を現金としておけば株式が20%下落した場合の損失は100万円に限定することが出来ます。
現金比率を柔軟に組み替えることが出来るというのは一つの強みであるといえるでしょう。
目指しているのは低リスク・高リターン
ひふみ投信が目指すのはHighリターン・Lowリスクの運用です。
リターンというのは非常に分かり易く、
平均的に年率どれだけの利回りを達成できているかということですが、リスクについて説明します。
投資におけるリスクとは価格の値動きの激しさのことを指します。
専門用語では標準偏差という指標なのですが、
大学で統計の事業を専攻した方等には馴染みの深い指標を使います。

このように上下動が激しく繰り返されるファンドでしたら心臓が持ちませんよね。
同じリターンを実現しているファンドでもファンドAのほうがファンドBよりも安心して投資成果を見守ることができるので、
同じリターンでもリスクが低いファンドであるということができるのです。

以下は最新の2018年6月までの過去3年間のひふみ投信を含む各資産のリスクリターンを表にして表しています。
ひふみ投信の成績と今後の問題点を分析
やはりファンドを選ぶ際に最も重要になってくるのが、
過去からのトラックレコード(運用成績)であるということが出来ます。
過去からのひふみ投信の成績を紐解き、
他のファンドとの比較をしたうえで、
現在抱える問題点について説明していきます。
ひふみ投信の長期的な成績を分析
以下ひふみ投信運用開始以降のTOPIXと比較したリターンをご覧ください。

何より2008年のリーマンショック、
2011年までのリーマンショック時の後遺症の時にプラスで乗り切っているのは凄いところですね。
もう一度、組み入れ銘柄の比率を見てみましょう。

現在は市場平均に連動しやすい大型株の割合が急騰していますが、
2008年当時は市場に連動しにくい超小型株を40%~50%、
中小型株を合わせると約70%~80%を占めていたことが分かります。
現金比率が10%から20%を占めていたので、
市場平均に連動しやすい大型株は10%~15%という低い比率しか含まれていなかったことが市場低迷期をプラスで乗り切れた大きな要因であるといえます。
他のファンドとの成績の比較
それではひふみ投信のこれまでの成績を、
他のTOPIXに対して超過リターンを挙げているセゾン投資、さわかみ投信、鎌倉投信との比較した図をご覧ください。
青:ひふみ投信 黄色:セゾン投信 赤:さわかみ投信 緑:鎌倉投信 黒:TOPIX

ひふみ投信は殆ど下落することなく、
10年間右肩上がりであることが分かりますね。非常に優秀なファンドであるということが出来るでしょう。
しかし直近6カ月の成績を見てみましょう。

ひふみ投信は2018年2月の下落が響き未だに6カ月前の水準を回復できておりません。
ここから現在のひふみ投信の抱える問題点について見ていきましょう。
ひふみ投信が抱える問題点
現在のひふみ投信が抱える、
問題点としてはほぼ市場平均と連動した成績になってしまっているという点です。
株式市場の専門用語にβというものがあります。
このβというのは、
如何に市場平均に連動するのかということを示す指標でβが1.0であれば市場平均が10%上昇したら10%上昇、
10%下落したら10%下落。
βが0.8であれば市場平均が10%上昇したら8%上昇、
反対に10%下落したら8%の下落に留まるという指標です。
以下は過去からのひふみ投信のβ値の推移です。

ひふみ投信は今までずっとβを0.8未満に抑えていましたが、直近はβは1.0に収斂しております。
つまり殆どTOPIXと同様の動きをするということになっています。
またリスクつまり値動きの荒さについても以下ご覧ください。

以前は値動きが市場平均であるTOPIXに対して穏やかだったにも関わらず、
最近は同様の値動きの幅になっております。
運用資産の増大に伴って、ひふみ投信のTOPIX化が進行し、
今年の2月のような暴落時に同じような動きをする傾向が強くなっているのです。
以前にあった下落耐性が低下しているということが出来るでしょう。
ひふみ投信の手数料
それでは手数料について詳しくみていきましょう。
ひふみ投信本体の手数料概要
ひふみ投信は購入手数料0%(所謂ノーロード型)で、
年率の手数料は年率1.0584%という水準で一般的なアクティブ型投資信託の信託手数料よりは安い水準となっています。
最初に藤野氏の理念で説明したとおり、
長期運用に資する投資信託ということとなると、納得のいく手数料形態ですからね。
信託手数料というのは預かっている資産全額に対して手数料が発生する手数料形態で、
100万円を預けていれば、信託手数料は1万584円ということです。
解約手数料は無料ということになっています。図示すると以下の通りです。

ひふみ投信の長期投資優遇手数料形態:信託報酬一部還元方式
ひふみ投信は長期投資に資する投資信託になることを目的としている為、
長期投資を行っている顧客に対しては信託報酬一部還元方式という方式を用いて還元するシステムを提供しています。
これは5年が経過した投資家については手数料は1.0584%徴収するものの、
0.2%分のひふみ投信を持ち分に追加。
10年が経過した投資家については手数料1.0584%は一旦徴収するものの、
0.4%分のひふみ投信を持ち分に追加するという日本発の手数料方式です。

長期投資家に報いていくという姿勢が見て取れます。
ひふみプラスの手数料形態
ひふみプラスの手数料は販売会社によって買付手数料が発生しますが、
私が保有している楽天証券やSBI証券では無料で買えましたが、
窓口で購入する場合は購入手数料が取られることも考えられます。
信託報酬は年率1.0584%で基本的には同じなのですが、
先程説明した信託報酬還元方式は適用されません。
その代わりに純資産額に応じて多少の手数料減免策はとられていますが、
長期投資を行うのであれば、
本家のひふみ投信のほうが手数料上のメリットが大きいといえるでしょう。

ただ長期投資というより短期的な投資先と考えているのであれば、
取引が簡単に行えるのでひふみプラスで代用するのも現実的な選択肢でしょう。
ひふみ年金の手数料
ひふみ年金の手数料は年率0.8208%の手数料と両者に対して低い手数料となっていますが、
60歳まで解約不能ということを考えると、
そこは資金拘束との兼ね合いといえるので慎重に選ぶ必要があります。
10年以上投資を行うのであれば、ひふみ投信でも問題ないでしょう。
ひふみ投信の購入方法
ひふみプラスは証券会社で購入することが出来ますが、
ひふみ投信はレオス・キャピタルの直販となります。
そのため、ひふみ投信で口座開設をして運用を開始するのですが、
一括の振込形式と積立購入形式があります。
振込購入
購入したい時に最低10,000円以上を指定口座に振り込んでひふみ投信を購入する方法で、口座開設後は、
いつでも振込購入を行うことが出来る方式です。
積立購入
1円単位で10,000円以上の金額を毎月5日、
休日の場合は翌営業日に保有している金融機関の口座から引き落として積み立てていく方法。
ひふみ投信の総括
ひふみ投信は長期投資に資する投資信託として2008年1月より運用した人気のファンドです。
これまでの成績は申し分なく、
下落した年を殆どださず値動きの荒さを抑えて高いパフォーマンスをたたき出しており、
手数料に関しても長期投資に適した方針を打ち出していました。
一方、直近は運用総額が急速に増大したこともあり、
小型株中心の運用が難しくなってきている為か、
大型株の割合が急騰している現状があります。
そのため、市場平均であるTOPIXと同様の値動きをするようになっており、
市場平均に対してプラスのリターンを狙うアクティブファンドとしての真価が問われる岐路に立っているといえるでしょう。
ただし、ファンドマネージャーの藤野氏やその他メンバーの能力を鑑みれば、
直近の困難を乗り越えてくる可能性は充分にあります。
アクティブファンドの「適切な規模」とは
この記事で何度か説明したように、ひふみ投信がこれまでのように優れた成績を収めることが難しくなったのは、
「ファンドの規模」の問題が深く関係しています。
しかしこれはひふみ投信に限らず、その他多くのファンドが直面する問題です。
数億から数百億までのファンドと、
数百億から数千億のファンドでは、ターゲットにすべき投資先が全然違いますので、手法を柔軟に変えていく必要があるのです。
なお、かつてのひふみ投信がそうであったように、
数十億円規模のファンドというのは時価総額の小さい投資先(=大手の金融機関が投資対象としていない投資先)を漁ることが出来るので、
運用面では非常にアドバンテージがあります。
以下に、ファンドの戦略だけでなく運用規模にも着目した上で国内の有望な投資先をピックアップしましたので、参考にしてみて下さい。
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