前回までの記事で経済の仕組みを噛み砕いて「各論」で説明してきました。
しかし、各論の方も可能な限りわかりやすく書きましたが今回の記事は、
「各論ではなく総論で早く理解したい」
「難しいのは嫌だ、もっと小学生でもわかる説明が聞きたい」
という人のために難しい言葉はあまり使わず、総論で記事を書いていきます。
Contents
「国家」をあなたが「創造する」と考えると経済はわかりやすい

vol.1-3では以下のキーワードをそれぞれ解説してきました。今回はそのような言葉をできるだけ使わず、身近な言葉で表現していきたいと思います。
◎「取引」「所得」「支出」「生産性」
◎「政府機関・中央銀行」
◎「クレジット=信頼」
◎「経済サイクル」
◎「インフレ」「デフレ」
◎「感情」「狂気」
まず、経済というのは、自分が「国家」を創ると考えると非常にわかりやすいです。
あなたが「無人島」の1人目の住人であり、奥さんと長男を連れて移住したと考えてみましょう。
この無人島の設定は(やや乱暴ですが)以下のものとします。
◎雨は降らない、暑い島
◎牛や豚など動物は存在しない
◎無人島からの脱出は不可能
ここであなたが考えるのは、いかに家族を長生きさせ、幸せに生活を営んでいくかですね。
しばらくは無人島にある資源のおかげで家族との幸せな時間を過ごすことでしょう。
しかし、ある日、他の住人(三人家族)が現れたのです。
新たな住人が現れたということは、資源があなただけのものではなくなるわけです。
あなたは可能な限り、自分の家族の食料(資源)などを確保し始めますね。
そして、この無人島の魅力を聞きつけて、次々と他にも住人が現れ始めます。
そうすると、資源の取り合いになってしまいます。他の家族どころか、あなたの家族も確保していた資源が近いうちに尽きてしまうと考え始めます。
これは困った、どうすれば家族と他の住人が生きながらえることができるのでしょう。
「コミュニュティ」の誕生
このまま資源を取り合っているだけでは状況は変わらない、長生きができないと考えた頭のいいあなたは気づきます。
例えば食料であれば、
「あまり食材を使わずに美味しく、お腹がいっぱいになる料理ができないだろうか?」
「食材を増やせないだろうか?」
水であれば、
「もっと水の量を増やすことはできないだろうか?
「水を節約できないだろうか?」
しかし、あなたの知恵だけでは改善にも限界がありますし、何よりも他の住人が同じように節約する意識がなければあなたの家族だけが我慢を強いられます。
ここであなたは他の住人を呼んで、無人島で生きていくために協力を呼びかけるわけです。他の住人はあなたの言い分に理解を示し、ここであなたは島のリーダーとなりました。
あなたを長としたコミュニュティの誕生です。
組織としての労働の始まり
あなたがリーダーとなり、まずは提案を始めます。
これまではそれぞれの家族が魚を取りに海で狩りをしていましたが、今はその他住人と協力して魚を狩りにいくことになります。
ある住人達は協力して木を切り、もっと遠くまで大人数で魚がいっぱいいる沖まで出れるボートを作ります。
ある住人達は手作りで釣り具などを作り、より魚が収穫しやすい工夫を施します。
これで魚の収穫を増やすことになります。最初は他の住人にも均等に配ります。
フルーツの生る木も、木がすくすく育つように島の全ての木に水をやります。
木の本数が多いので大人数で毎日水をやる必要があります。
食べれそうな植物などがあればそれも育てます。新しい食材になる可能性のあるものは全員で情報共有します。
このように、全員が協力し、延命していきます。
どんどんボートの質は得た知識から向上していき、更に沖に出れるようになり魚が大量に取れるようになってきました。
木もすくすく育ち、フルーツも以前より生るようになりました。その間に食べれそうな植物もたくさん見つかり、食事にバリュエーションが生まれました。
ここで、あなたの国家は最低限の食事などの確保(住人全員に配給するための食料)を約束に、個人個人を尊重し始め、自由な行動を認め始めます。
この頃は仕事も効率化され、新しい子供も住人間で生まれたことにより人数が増え、あなたは住民の生活を管理しているだけで食材が手に入る状況となっています。
食材が「税金」であると考えれば良いでしょう。
豊かになると状況は変わる、「物々交換」の限界
上記のように「全員が協力する」ことにより、均等の幸せが住民達には訪れました。
平穏な日々が続きます。
しかし、人間というものは、ピンチの時は協力し合うものですが、安定を得ると「欲望」が必ず湧く生き物です。
頭の良い人は、もっと魚を収穫できる方法や、1人でより多くの魚を取りに行ったほうがもっとお腹いっぱい家族に食べさせることができる、と考え始めます。
こうして、賢い住人(=魚獲りのプロ)の家は魚で溢れるようになります。
家族は幸せいっぱいですが、食べきれなくなってしまいましたし、飽きてしまいました。
このようなことが、他の賢い住人のところでも起き出します。
そして、魚が余った住人と、野菜が余った住人が「物々交換」を始めます。この交換が他記事でも語っている「取引」ですね。
物々交換が各地で起こるようになり、例えば魚を獲る人はその道のプロフェッショナルとなり、魚を獲るコツを知りたい人を集めてコミュニュティを作り、組織で更に魚を獲るようになります。
物々交換でこれまでやってきましたが、例えば綺麗な真水を作ることに成功した賢い住人は魚が好きではないので、魚との交換を拒み続けていました。
魚獲りのプロは、綺麗な真水を手に入れるために、魚と野菜を交換し、野菜と真水を交換するという遠回りな取引をしなければならないのです。
そして人のニーズは状況によって変わるものですから、綺麗な真水を手に入れるためにいちいち「今は何が欲しい?」とお伺いを立てなければなりません。お伺いを立てて必要なものがわかったところで、その必要なものを誰が持っているのかを探さなければなりません。
これは面倒ですよね。
ここであなたがどうしたらもっと効率的な取引ができるだろう?と考え、辿り着く答えが「通貨」の必要性です。
「通貨」の誕生
「通貨」の誕生はロスチャイルド家の話をしたいところですが、それは別記事でしっかり書いていきたいと思います。
あなたは「通貨」を発行し、「物々交換」という非効率な取引からの脱出を試みます。
あなたは(無人島では不可能ですが)紙をたくさん印刷し、そこに金額を書き込みます。
最初は1,000枚印刷し、
◎5円=200枚
◎10円=200枚
◎100円=100枚
というところでしょうか。
これを各家族に均等に配り、物々交換はやめ、「モノ」に値段をつけなさいといったルールを制定します。
魚1匹3円といった具合ですね。
これで魚獲りのプロは、魚が欲しい人に魚を売り、通貨を得て、その通貨で真水を買うようになります。効率的ですね。
このようにして、家族間で通貨が回るようになります。経済が回るとはこのようなことであり、富はより人が欲しいものを提供する人に集まるようになります。
島の住人はお金を集めるために、人が欲しがるようなものを探し、より高い対価を貰おうと努力をします。
島のリーダーであるあなたは年に1度、一定の通貨=お金を住民達から回収します。これが税金です。そしてあなたも欲しいものを住民から買います。
ここでいうあなたの立場は歳入で国をよりよくしようと考える中央政府・中央銀行ですね。
賢い人に富は集まる
無人島の住人達の社会は、私たちの現代社会と同様に、必ず知識や賢さの「優劣」が存在します。
賢い人は人の欲するものが理解でき、その欲するものを生み出す能力があります。
つまり、賢い人がどんどんお金を集めてしまうのですね。
そして気づくわけです。
一緒に働いてくれる人をもっと増やし、例えば魚獲りプロであれば短時間で魚が捕獲できる網を量産したいと考えるわけです。
そこで、網を作ってくれる人をお金を払うことで増やし、さらなる魚獲りの効率性を高め始めます。
しかし、肝心のそのお金が、自分の魚を売る商売だけではそこまで多くはありません。
そこで、自分のようにお金を集めている他の住人にお金を貸してもらうんですね。
お金を貸す住民も、魚獲りプロの賢さを理解していますから、お金を貸して、その代わり、儲かったお金の一部を毎月自分に納めるように条件(=利息)を課します。
その他、魚獲りのプロも住民だけではなく、島のトップであるあなたにもお金を貸してくれ、この島をより繁栄させる自信がある、とあなたからもお金を借りることになります。
これが「クレジット=信頼」による「生産性」の向上ですね。
これにより、魚獲りプロは生産力を増し、より多くの魚を住民達に売ったり、魚だけではなくイカやタコなどを収穫し、焼き方など調理方法にも思考を凝らし色んな料理を展開していくことになります。
そこで儲けたお金を、また他の人が欲するもの=ニーズが何かを考え、商売を展開していきます。
いつの時代もお金持ちは嫌われる
ここまで魚獲りプロが成功してしまうと、お金は魚獲りプロに集まり、あなたというリーダーに払う税金は国民は一律のパーセンテージですから「格差」はどうしても広がっていきます。
魚獲りプロだけが余裕のある生活をしているのです。ここで他の住人からあなたにクレームが入り始めます。
「あいつだけ贅沢してずるい」
「私たちも余裕のある生活がしたい」
そこでまずは生活に困っている人たちにお金で支援するために、魚獲りプロのような人に貸しているお金の利息をもっと集めるべく「金利」と富裕層向けの「税金」(=累進課税)を高く設定します。
こうなると、お金を借りて商売を始めても利息の支払いが大きすぎ、且つ儲かっても税金が大きく取られていくわけですから魚獲りのプロは士気が下がり、積極的に活動をしなくなります。お金を借りようと思わないのです。
そうすることで魚獲りのプロは今まで魚獲りに協力してくれた住人達にお給料を払うのをやめ、商売を縮小するわけですから、協力者達に、
となるわけです。現代で言うリストラですね。
そして、人々は使えるお金が給料がなくなったことにより減るものですから、ものを買わずに節約に努めるようになります。
このようにしてモノの値段は下がっていきます。これをデフレーションというんですね。
通貨(紙幣)の再発行
さて、モノの値段が賢い人たちの商売の縮小によりどんどん下がっていき、人々は将来に不安を覚え、買い控えを始めてしまいました。
値段の高い魚ではなく、できるだけ安いフルーツを買うようになります。
これでは毎年税金を貰っているあなたの収入も減ってしまいますよね。だって誰も儲かっておらず、税金も最低限しか貰えないのですから。
ここであなたは最終手段に出ることになります。
あなたは何もないところから紙幣を新たに発行し、そのお金を住人達の提供するモノやサービスに使い、余ったお金も安い金利で賢い人たちにまた貸し付けることになります。
出回っている「お金の総量」が増えているわけですから、一度縮小した数々の商売の規模からして、生産を支出が超え始めます。ここでインフレが起きるわけですね。
魚獲りのプロは安くお金を借りることができ、魚の値上げもできるようになったので万々歳で、また商売を拡大し始めます。
もうお気づきでしょうか?経済の歴史はこれの繰り返しなのです。
あなたという島のリーダーのさじ加減で無人島の住民達のモチベーションや生活の豊かさは変わっていくわけです。
無人島のコミュニュティだけで考えれば経済の理解は容易、世界経済はこのコミュニュティの大群
ここまでで経済の流れの一通りを総論的に解説してきました。
「一つの国」として考えると経済というのは理解がとても簡単なのです。
しかしなぜ、巷でいう「経済」は理解しにくいのでしょうか?
理由は無人島は小さなコミュニュティでしたが、一般社会の経済は「世界」を一つのコミュニュティとして存在し、そのコミュニュティの中で「国家」という数々のコミュニュティが細分化されています。
「外国」の要素が入ってくると通貨の違いで生じる「為替」や国家という大きなコミュニュティ同士の関係性、位置関係、国家間同士の間のモノの売買(貿易)、お金の貸し借り、投資などが入り組んでくるのです。
ですので、考え方としては「世界」は一つのコミュニュティではあるものの、「国家」ごとのコミュニュティの違いは大きく、関係性も千差万別にありますので、先に解説した「無人島」が他にも多く存在し、無人島同士で貨幣の交換やモノの売買などを行なっているとイメージするとわかりやすいかと思います。
紙幣を発行せずに通貨を増やすのは海外と取引して「国家」としてのお金の総量を増加させることで経済はさらに繁栄していきます。「輸入は儲からない、輸出は儲かる」の本質はここにあります。
あなたは無人島住人として1つの島のリーダーでしたが、他の島にもあなたのようなリーダーが必ず存在します。
そして、近くの島と連携すれば他の食材やサービスが受けられる、などと考え、リーダー同士で話し合いをしたりするのです。
これをよく報道されている「首脳会談」というのですね。
総括
無人島ストーリーでわかりやすく解説しましたが、経済を理解する上だけではなく何事もそうなのですが可能な限り「シンプルに」考えることが非常に重要です。
これからあなたがもし投資などを考える際には、タイは今無人島が始まりであればどのフェーズにいて中央政府はどのような方針を打ち出しているのか、フィリピンは?
バングラデシュは政府が海外からお金を集めているがビジネスがこれから急拡大するということなのか?という視点を持つことが非常に大切です。
経済・金融を中心としたお金まわりのことについては「マネスク!投資・資産運用を正しく学ぶ『お金の学校』」といった「お金の学校の紹介」「学ぶことに特化」したマニアックな(笑)サイトがあったりしますので、訪れてみると面白いかもしれませんね。
以上、経済の仕組みについての記事でした。