バングラデシュ不動産

バングラデシュ不動産投資をする上での為替リスクについて考察(前編)

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私は総合商社で為替トレーダーをしていたという経験もあり、

各国のマクロ分析も行った経験がありますので、当時の経験を元に今後のバングラデシュの通貨タカと日本円のレートについて考えていきたいと思います。

為替は海外投資で最も重要といっても過言でもない部分になりますので、

今回はまずバングラデシュの通貨タカと日本円について考える前に、為替レートがどのような要因で変動していくのかという点について見ていきましょう。

  • 為替には期間毎に様々な変動要因がある。
  • マーケットボリュームが大きい投機筋は長期的なレートに影響を及ぼさない。
  • 長期的なレートを考える上で重要なのはインフレ率と国際収支。

短期的変動要因:各国に関連する様々なニュース

まず短期的な要因としては「各国に関連するニュース」が挙げられます。

基本的には、該当国に対して「悪いニュース_が報道されると当該国の通貨は売られますし、

良いニュースが起これば当該国の通貨は買われます。

このニュースには各国の経済データや中央銀行の要人の発言、更には突発的な戦争などの事象の発生など多岐に亘りますが、デイリーの動きはニュースが命です。

例えばバングラデシュとインドがいきなり戦争でもはじめたら、

インドの通貨ルピーとバングラデシュの通貨タカは大きく売り込まれるでしょう。

この売り込まれる経路は様々で、

悪いニュースが起こったとすると為替市場のプレイヤーがニュースを受けて素早く当該国通貨を売るという直接的なケースであったり、

株式市場の海外プレイヤーが株式を売却し、その結果できた当該国通貨を自国に引き戻す為に売るという副次的なものまで様々です。

然し、一つだけ例外の国があります。

それは私達の国の通貨日本円です。

◆コラム:危機時に日本円が買われるのはなぜなのか?

例えば、日本に向けて北朝鮮がミサイルを放ったとします。

通常であれば日本円は売られるのですが、何故か円高方向に大きく振れます。

東日本大震災の時も、

大災害が発生しているのにも関わらず日本円は大きく買われ、

一時76円台の大幅な円高が発生しました。

これは日本が世界最大の純債権国であることに起因しています。

つまり例えば世界的な危機や日本に危機が発生したとします。

東日本を例にすると、

日本の損保や生保は保険を支払う為に大量の日本円が必要になります。

その為、海外に保有している資産(特に米国債だと思いますが)を売却して円を調達する必要があります。

例えば米国債を売却すると、米ドルが発生します。

この米ドルを円に戻して国内に還流しなければいけないため、

ドル売り円買いが発生して円買になります。

そして更に次項にも関係するのですが、

上記の構造を分かっているヘッジファンド勢を中心とした投機勢が先駆けて円買を仕掛けてきて、大幅な円高が引き起こされてしまうのです。

私のトレーディングデスクでも危機が発生したら円を買うというパブロフの犬のような思考経路が出来上がっており、

地震発生した際などはなりふり構わず円を買いました。

もはや非国民の部類です。

然し、為替市場ではこれが常識になっているので仕方ないですね。

地震発生時などにトイレに立つとトレーダーの風下にもおけないと叱咤されていたのを思い出します。

短期的~中期的変動要因①:金融政策

直近から数年にわたって影響を及ぼすのが金融政策です。

金融政策で決定するのは金利水準です。

中央銀行が、

「引き締め」

に動くのであれば、

金利が「高く」なり当該通貨が買われます。

中央銀行が、

「緩和方向」

に動くのであれば、

金利が「低く」なり当該通貨が売られます。

なぜ金利と為替が連動するかというと、

金利が高ければ保有するだけで金利を貰えるのでそれだけその「通貨の魅力」が増しますよね。

また重要なのは実際に金融政策が変わった局面よりも金融政策がどうなっていくかという思惑の段階で大きく動くということです。

以下のユーロ/ドルのレート推移をご覧ください。

昨年はユーロ/ドルは1.05から1.20を超えるレベルまで15%程ユーロ高に動きました。

然し、この間欧州中央銀行(以下ECB)は現在の超低金利を一度も引き上げていませんし、量的緩和プログラムも撤回しておりません。

しかし欧州の景気が堅調でECBの高官が、

引き締めを「匂わせ始めた」ためにマーケットは先の金融政策を織り込み、

一年間を通じてユーロ買われていったのです。

現在マーケットがどのようになると見ているかということは敏感に察知していかなければいけません。

短期的~中期的変動要因②:投機筋のポジション

次に数週間から1年くらいにかけて大きな影響を及ぼす、投機筋のポジションについてです。

為替市場のマーケットボリュームのうち、

貿易や投資などの実需に基づく取引というのは、実にマーケット全体の1割程度しか占めていません。

実は殆どの取引が「ヘッジファンド」を中心とした投機筋による取引によって為替市場は成り立っているのです。

ただ実需筋と投機筋には大きな違いがあります。

貿易決済や資本取引などの実需取引に関して言えば、

貿易で稼いだドルを円に変換すればそれで終わりです。

一方、投機的な取引では一回ドルを売って円を買った場合、

いつかはこのドルを買い戻して円を売り戻していずれポジションを0にしなければいけないのです。

つまり、

投機筋のポジションが円買に大きく傾いているのであれば、

これ以上の「円高」は難しく「円安」方向に動く力の方が強いということです。

このような状態をポジションが溜まっている状態といいます。

主要通貨に対してしか発表はされますが、現在(2018年4月末時点)のマーケットのポジションは以下のようになります。


参照:https://www.phillip.co.jp/fx/imm/

直近までずっと円は売り越しポジションだったのですが、株式市場の下落によるリスクオフ的な動きに加え直近の米中の貿易戦争懸念により大きく買い戻され今は殆どFLATポジションといえます。

やはりドル/円レートは100円近辺が「フェアウェイ」ということですね。

一方、

ユーロなんかは昨年一年間ずっと金融政策が現在の超緩和的な状態から正常化するのではないかとの懸念から買われていたため、

大幅な買い越しポジションとなっています。

長期的要因①:購買力平価説

次に長期的な要因についてみてみましょう。

まず一つ目はインフレ率の差です。

為替市場では長期的にインフレ率が高い通貨の方が為替レートが「長期的に下落」するという理論があります。

つまり日本は長期的に世界で一番デフレな国なので、

為替市場では買われやすいということですね。

例を用いて説明します。

インフレ率が2%の米国とインフレが発生しない日本を例に考えてみましょう。

今現在1USD=100円だとします。

分かりやすいように、

マクドナルドのハンバーガーが「100円」つまり「1USD」で買うことが出来るとします。

では1年後はどのようになっているでしょうか。

米国ではインフレ率が2%なので、

1USDのハンバーガーは1.02USDとなる一方、

インフレが発生しない日本ではハンバーガーは100円のままです。

然し、ハンバーガーの価値は同じのままと考えると、

一年度のドル円レートは1.02USD=100円となりますので、

1ドル=98円4銭となります。

このようにインフレの差分円高に傾きました。

これを「購買力平価説」といいます。

長期的要因②:国際収支

先程中期的な要因のところで投機筋が殆どのマーケットボリュームを持っているとも申し上げましたが、

結果的には売ったら買い戻さなければいけませんし、

買ったら売り戻さなければいけないので最終的には「ネットネット」で0になり影響を及ぼしません。

然し、実需に基づいた取引については売り切り買い切りなのでマーケットに占める割合は少ないですがネットでレートに影響を及ぼします。

なぜドル円レートが300円を超える水準から現在の100円近辺まで円高になってきたかというと、一番大きな要因はこれですね。

日本はずっと大きな貿易黒字だったので、

海外との貿易で稼いだドルを自国に引き戻す時にドル売り円買いが発生するので円高圧力が常に掛かっていたのです。

より広い概念としては貿易収支に所得収支、

サービス収支などを加えた経常収支と直接投資や証券投資を合計した金融収支を加えた国際収支が重要になってきます。

以下は日本の国際収支です。(非常に小さい経常収支移転は除いています)


引用:財務省データより管理人作成

国際収支は50兆円程度の黒字ですね。

それでは簡単に構成項目について見てみましょう。

(1)経常収支

これはいくら日本が稼いできているかを表す指標です。

貿易収支

これは日本の輸出が輸入をどれだけ上回っているかで一番分かりやすいですよね。

高度経済成長期以降は一貫してプラスでしたが、

バブル崩壊後その額は縮小しエネルギー価格が急騰した2010年代初頭は輸入価格が上昇しマイナスに沈みました。

所得収支

これが最近の日本の経常収支を支えています。

所得収支というのは海外からの配当金や利子のことです。

つまり昔に貿易で稼いだお金を海外の企業買収や米国債などの債権を買い、

そこからの配当や利子がじゃんじゃん入ってきているという状況なのです。

日本人は国民レベルとしてみると投資に消極的ですが、

国家としてみると世界最大の純債権国でもあり、

配当金生活をしている国ということになりますね。

サービス収支

これは分かりにくいですが、主な構成項目としては旅行や保険料などです。

近年は日本への観光を呼び込めていることもあり、マイナスが縮小傾向にあります。

(2)金融収支

金融収支は直接投資と証券投資にわかれますが、日本は直接投資のプラスが寄与して一貫してプラスです。

経常収支と違うのは、プラスであってもいつか資金を引き上げる可能性がある項目ということです。

直接投資

これは例えば、ある国に工場を作って、その国で製造する為の拠点を作るようんあ実体をもった投資を行うことです。

日本はまさかの一環してプラスで驚きました。

証券投資

これは株式や債券への投資ですね。

これについてはプラスとマイナスで交互というかんじでした。

(3)国際収支の注意点

基本的に国際収支がプラスであれば長期的な傾向として、

その国の通貨は強くなっていくが近年は海外から獲得した外貨を更に再投資する傾向が強くなってきているため、

即座に効果を及ぼさない可能性がある点は注意する必要があります。

総括

為替の変動要因には様々なものがあり、これらが影響し合いながら為替レートが決定していきます。

バングラデシュの不動産投資を行う上では、3年から5年の周期で考えていく必要があるため、次回はその点と日本とバングラデシュの金融政策を踏まえて長期的な動向について見ていきたいと思います。