今回は今話題となっている「米国リート投資信託」である、
「新光US-REITオープン(通称:ゼウス投信)」
について解説・解剖していきたいと思います。
日本人はUSリートが本当に大好きで、
以下の表を見ていただきたいのですが、
売れ筋の投資信託のTop10の内4本が米国リート投信となっています。
私が独自にゼウス投信を分析した結論としては、
ゼウス投信は全くおすすめすることができないリート投信でした。
本日は、その理由とゼウス投信のどこに問題があるのか?
という点をじっくりと解説していきたいと思います。
そもそもリートとは?というところから学びたいという方は、
以下の記事も参考にしてみてくださいね。
→ J-REIT(リート)の特徴と魅力、投資する際に考えたいリスクを徹底解説
Contents
ゼウス投信の4つの特徴を解説
ゼウス投信は米国リート投信ですが、
どのような特徴があるのかを簡単に見ていきます。
(1)ゼウス投信は「アクティブ型」投資信託
ゼウス投信は「米国のUSリート」に分散投資を行い、
- 市場平均よりも高い水準の配当収益の確保
- 値上がり益つまりキャピタルゲインの獲得
の2つを目指して運用を行うと表明しております。
つまり市場平均であるUS-REIT市場に対して、
プラスの成績を確保するアクティブ型の投資信託ということになります。
以前「投資信託は儲かる」は嘘?本当におすすめの2つの投資先を紹介するで紹介しているのですが、
金融庁の発表では、
市場平均に対して̟プラスの成績を求めるアクティブ型の投資信託の平均成績は、
軒並み市場平均を下回っています。
REITについては今まで解説してきておりますが、
REITとは、米国で1960年に開発されたもので、
日本では、
不動産からの投資によって得られた「賃貸料収入・売買収益」を主とした、
事業利益の90%以上を分配することによって法人税を免除することができる仕組みです。
そのためREIT投信であるゼウス投信も賃貸料収入をほとんど分配しております。
(2)ファンド・オブ・ファンズ形式
ゼウス投信はファンド・オブ・ファンズ形式での運用を行っているという特徴があります。

「ファンド・オブ・ファンズ」とは、米国のリート会社に分散投資を行って、
間接的に米国不動産を保有するという手法です。
以前私が分析したセゾン投信は、
「株式市場に投資をおこなっている投資信託に投資を行う」ファンド・オブ・ファンズ形式の投資信託となっていますので以下参考にしてみて下さい。
→ セゾン資産形成の達人ファンドを解説・老後に向けたお手軽長期投資
(3)為替での複合運用
ゼウス投信と類似した米国リート投信に楽天米国リート・トリプルエンジンがあります。
「楽天米国リート・トリプルエンジン」では米国リートを高金利のブラジルレアル建で運用しています。
このように為替を組み合わせた運用を行っている投資信託もあるのです。
しかし、
値動きが大きいものをさらに値動きが大きいブラジルレアルで運用することにより、
大きな利益を得る可能性が増える反面、
大きな損失を被る可能性があります。
実際に、先ほどの米国リート・トリプルエンジンは基準価額を大きく下げております。
ゼウス投信では為替での複合運用を行っていない点は、まだ評価できる点であります。
(4)ゼウス投信の分配金の配当方針
ゼウス投信の分配金の方針について説明します。
まず一番健全なケースですが、
不動産収入が分配金の金額を上回っている場合です。
この場合は収入の中から分配金が支払われるので問題ありません。

しかし不動産収入が分配金を下回っている場合は、
以下のように「元本」から配当金が支払われることになるのです。

分配金が支払われているかといって、
安定した収益をたたき出しているかは判断できず、
基準価額を確認する必要があるのです。
米国リート市場の現状
ゼウス投信は米国リートへ投資をこなっているので米国リートの環境が重要となります。
ゼウス投信が投資をしている、米国リート市場の成績を確認していきましょう。
1972年からの長期リターンでは米国株と米国REITは引き分けの成績となっています。
青:米国REIT 赤:米国株

参照:backtest portfolio
ただ、直近の成績では米国株や、世界株、世界REITを大幅にアウトパフォームしているのが読み取れます。
わかりやすく年間収益を表したのが以下のグラフです。
ここ10年間が堅調だからといって安心するわけにはいきません。
先ほどのチャートをご覧いただければわかる通り定期的に米国REITも暴落を経験しています。
現在は景気拡大が11年目に突入しており、
周期的な観点でいうとそろそろ危険水域という時期に突入しているということがいえます。
コラム:米国リートより魅力的な少額から可能な不動産投資
米国リートの値動きをみて非常に魅力的だなと思われた方も多いのではないでしょうか。
確かに日本の不動産やリートに比べると魅力的に移ります。
しかし、米国リートにも二つの欠点が存在しています。
米国リートの2つの欠点
米国リートは魅力的ですが二つの欠点があります。
1つは度々リーマンショック時のような大暴落が発生することです。
リーマンショックでは約50%価格が暴落しました。
二つ目は価格は上昇基調といっても先進国不動産ということです。
日本の高度経済成長期のように数年で数倍になるということはありません。
大きなリターンを狙いたいのであれば米国リートでは物足りないでしょう。
高度経済成長期の日本の土地に投資をすることができれば大きなリターンを手にすることができます。
ゼウス投信の運用成績(USリート基準価格)
まずは、ゼウス投信のリーマンショック以来の10年の成績を見てみましょう。
基準価額(オレンジ)は10年前の1万円から、
現在は2,400円と4分の1程度に下落しています。
一方、
「分配金再投資基準価額ベースでの価格」は、
約2倍の20,000円となります。
米国リート市場はゼウス投信が運用開始となった2004年から約4倍となっています。
投資対象の指数が4倍であるにも関わらず、2倍にしかなっていません。
運用は残念ながら優秀とは言えませんね。
ゼウス投信は分配金拠出を行っているので税金面でも不利益を被ります。
「分配金再投資基準価額」の意味するところは分配せず、
再投資した場合は収益が複利で増えます。
しかし、分配金で支払ってしまっては複利で収益は増えていきません。
そもそも、REITでは分配金の90%以上を分配して法人税を免除する仕組みなので、
再投資することによって実現される収益というのは架空のものでしかありません。
さらに分配されることによりREIT運営側は法人税を減免されるのですが、
投資家側は配当金に対する税金である約20%の源泉税が徴収されてしまいます。
つまり、上記表の、青色の線(分配金再投資基準価額)通りの収益にはならず、
実際には150%程度の上昇に留まります。
ゼウス投信の手数料
次にゼウス投信の手数料についてみていきます。
最初に申し上げた通り、
ゼウス投信は市場平均に対してプラスのリターン獲得を目指す「アクティブ型」の投資信託です。
アクティブ型の投資信託は、
良い銘柄の選定の調査料やプロフェッショナルフィーとして、
市場平均連動型の投資信託(=パッシブ型投資信託)よりも高額な手数料を要求します。

販売手数料がパッシブ型投資信託の手数料が平均して0.5%程度のなか、
ゼウス投信は3.24%と6倍以上の水準となります。
また預け入れ資産全体に対して年率で発生する信託手数料はパッシブ型であれば0.5%なのですが、
ゼウス投信ではパッシブ型の3倍の水準の1.5%となっています。
手数料が高い分、
市場平均より高い利益を確りと出しているのであれば文句もありませんが、
市場平均より低いパフォーマンスで高い手数料ということであれば、
正直踏んだり蹴ったりという感じですね。
ゼウス投信を含め、そもそも投資信託とは資産運用において選択肢になり得るのか?
という点もまとめていますので参考にしてみてくださいね。
→ 投資信託のメリットとデメリットを徹底解説ー投資信託が抱えるリスクとはー
むすびとゼウス投信以上のおすすめの投資先
ゼウス投信は人気の投資信託となっていますが、結論からいうとおすすめできません。
分析した結果、運用成績は市場平均をアンダーパフォームしており、
市場平均に対してプラスのリターン獲得を狙うアクティブ型投資信託であるため手数料が高いという結果になりました。
低い運用成績、高い手数料という質の悪い投資信託であり、
投資妙味は全くないにも関わらず人気の原因は高い分配金の金額にあります。
しかし分配金は収益からではなく、
元々の投資元本から支払われており基準価格は10年前の4分の1に、3年前からでも半分程度に下落しています。
目先の分配金ではなく、確りとREIT自体が利益を出しているかどうかを確認することが肝要となります。
同じ不動産に投資するのであれば、最も効果的なのは大幅な値上がり益が見込める成長著しい新興国への不動産投資です。
私が今投資を行っている100万円から投資可能な新興国不動産投資(バングラデシュ不動産)などを含め、
大きな利益又は安定的な利益が見込める投資先について、ランキング記事にまとめておりますので参考にしてみて下さいね。