今回は新興国株式投資について、
「リターンは大きそうだがどれくらいリスクがあるのか?」
「今後の経済成長はどうなっているのか?」
「まだ間に合うのか?」
という方向けに記事を書いていこうと思います。
新興国といえば、早速以下のJPモルガンの資料をみていただきたいのですが、人口は世界全体の85%、GDPも40%を占める規模となっており、今後も拡大すると言われていますよね。
まだまだ「これから」成長すると言われている分、積極的に投資を考えていきたい対象でもあります。
そんな新興国の経済・おすすめ投資先を今回はじっくり解説していければと思います。

- 新興国のGDP成長率は先進国を大きく上回り、世界の経済成長を牽引する役目を担っている。
- 世界金融危機から2%下落していた新興国株式市場だが、先進国に投資をする余裕が生まれ「成長率が高い割に割安に放置されている」新興国へ注目が集まり始めた。
- 2012-2016年に亘り、先進国の株式市場が50%上昇するも新興国市場はマイナス2%。経済成長率4%~5%でマイナス2%は異常。
- 実態としては2020年にはGDP45%に達する新興国経済に対して株式時価総額が10%しかなく、過小評価されている。
- 2016年以降、主要新興国のインフレ率は低く設定されており、中央銀行による「政策金利引き下げサイクル」が始まっており、経済成長の波に乗りつつある。
- 世界金融危機以降は世界経済は新興国経済の成長に依存しており、今後も新興国が世界経済を牽引していくことが容易に想像できる。
- 2030年には世界全体で11.5億人増加し、その中でも「アジア」「アフリカ」が圧倒的人口増加を果たす。
- 新興国株式は割安な水準であり、再評価され始めたのも最近であり投資をするタイミングとしては2018年中であれば間に合う。
- 新興国への株式投資で成功したい場合は、「自身に情報アドバンテージのある国を選択する」か、「新興国への投資を行っているプロに任せる」のがオススメ。
- また不動産で考えるのであれば、2018年時点で最もオススメ新興国はバングラデシュ。
Contents
過去からの新興国経済の推移
引用:経済産業省
上記の経済産業省の図を見て欲しいのですが、黄緑のラインを見ていただくとわかる通り、
新興国のGDP成長率は先進国を大きく上回り、世界の経済成長を牽引する役目を担っています。
世界金融危機が発生した後はさすがの新興国も2010年のGDP成長率約8%をピークに、2015年にかけて4.0%の水準となりましたが、経済が落ち着き、
2020年には5%を越えてくる予想が経産省の資料でも立てられていますね。
先進国株式が2012年〜2016年の間に各国中央銀行の金融緩和を追い風に約50%上昇しましたが、
海外資産を多く保有する日本も新興国への投資割合は0.2%となっていることなど、世界でも新興国株式は2%下落するなど放置されている状況でした。
米国の利上げが期待された米国への投資集中(還流)といった要因もありましたが、
経済成長が見込まれているにも関わらず、なぜ放置されていたのでしょうか?
以下ではその理由をまずは解説していきたいと思います。
中国の成長減速・コモディティ価格の下落
まずは、中国に焦点が当たります。
中国は日本を始め、世界中の製造業など誘致し、工場労働者も増え、経済を活性化してきましたが、
近年はすでに賃金が上昇し、労働集約型から知識集約型の経済に転換しました。
中国自体、以下の人口ピラミッドを見ていただければと思いますが、
すでに労働・生産人口のボーナスステージは終わっており、経済減速に向かう運命にあります。
引用:人口ピラミッド(中国)
中国経済に関する別記事にも書いていますが、中国は世界金融危機時に4兆元(=約60兆円)の大規模な財政政策を実行し「経済成長の前倒し」をしていたに過ぎず、
新興国の2009年、2010年の経済成長約8%はあるべき姿ではなかったと言えるでしょう。(中国は2016年まで新興国としてカウントされていました)
続いて、コモディティ価格の話に移りますが、
- 米国のシェール革命
- 新興国によるエネルギーの過剰供給
の2点でコモディティ価格は暴落しました。
シェール革命
米国において、従来は経済的に掘削が困難と考えられていた地下2,000メートルより深くに位置するシェール層の開発が2006年以降進められ、シェールガスの生産が本格化していくことに伴い、米国の天然ガス輸入量は減少し、国内価格も低下していきました。これが、いわゆる「シェール革命」であり、エネルギー分野における21世紀最大の変革であるとともに、世界のエネルギー事情や関連する政治状況にまで大きなインパクトを及ぼしています。
原油価格は1バレルあたり110ドル→30ドルを割る水準となりました。
コモディティ価格は資源大国には大きな経済へのインパクトを与えます。資源大国の内の代表的な国がロシアですね。
新興国債務レバレッジ終焉 & 先進国の世界金融危機による債務整理
まずは新興国ですが、経済を成長させるには、資金・組織でレバレッジをかける必要がありますよね。
新興国は大きな経済成長を果たすために、国、民間企業共に積極的な資金借入をし経済成長を促していましたが、債務が増大し、国のバランスシートの再整理が必要となりました。
「債務が大きすぎる」の意味するところは、稼ぎに対して返済が滞る水準であるということです。
つまりは、これ以上資金によるレバレッジをかけることは必然的にできなくなりますので、経済成長は停滞を余儀なくされます。
先進国については、世界金融危機の後遺症(=負債)が残っており、新興国への投資を積極的に実行できる状況ではありませんでした。
世界経済が連動していることがわかりますね。新興国だけが絶好調とはならず、新興国の成長にも先進国の投資による支えが必要なのです。
直近の新興国「株式市場」の状況は?
直近の新興国株式市場を見てみましょう。以下は2017年度の株式市場の状況です。
引用:SBI証券
世界金融危機から2%下落していた新興国株式市場ですが、先進国に投資をする余裕が生まれ、成長率が高い割に割安に放置されている新興国へ注目が集まり始めました。
以下の図はPERを表していますが、米国・日本・豪州など先進国株式市場に対して新興国株式市場は12.1倍と非常に割安ですよね。
引用:SBI証券
この他にも新興国株式市場に資金が流入し始めた理由がありますので以下に解説していきます。
新興国の低インフレ率・政策金利引き下げ
2016年以降、主要新興国のインフレ率低く設定されており、中央銀行による「政策金利引き下げサイクル」が始まっており、経済成長の波に乗りつつあります。
以下の新興国企業の1年先利益見通しの図でもわかりますが、企業成長率も2017年3月末が抜きん出ており、これからのさらなる成長も期待されます。
引用:SBI証券
米国デフォルト懸念払拭・コモディティ価格の安定
米利上げにより米ドル高が懸念されていましたが、米国債利回りは低水準で抑えられ、
米ドル建債務の総額に対する利払い金額が縮小されたため、懸念されていたデフォルトの不安が薄まりました。
その他、米国含む先進国の債券利回りが低く、経済成長が見えている、利回りも良い新興国に注目が集まり、投資が集中し始めました。
2015年からは原油価格もOPECの協調減産、世界の原油需要回復により、価格が元の水準に戻り安定しました。
コモディティに偏重している新興国の経済低迷も圧力が消え、投資判断の一つの決め手となりました。
現在の新興国経済の状況
世界経済は世界金融危機後にV字回復し、その後は下降トレンドでしたが、
世界の成長率は若干加速し、2018 年と 2019 年はともに 3.9%に達すると見込まれている、とIMFより見解が出されています。
中国は過剰投資により今後の経済成長は懸念されますが、2020年までに「国民所得倍増計画」必達を目指しており、
GDP6%の成長率は維持し、直近で新興国への多大な影響を与えることはないと思います。
引用:経済産業省
上記の図でわかる通り、世界金融危機以降は80%世界経済は新興国経済の成長に依存していますね。
先進国の中では米国のみ(黄緑)割合が大きく見えますが、限りなく影響は少ないですね。今後の世界経済は新興国が引っ張っていくことが容易に理解できます。
以下の内閣府の資料でも、2030年には世界全体で11.5億人増加し、その中でもアジア、アフリカが圧倒的人口増加を果たす、
つまりは新興国の人口が増えるということで、経済成長へ大きく貢献することがわかります。
引用:内閣府
すでに新興国の人口の割合が85%に達しているにも関わらず、まだまだ人口が増加し、先進国との差は開く一方ですね。
また家電等消費財の普及率が高まる水準は、世帯年間可処分所得は「5000ドル以上」です。
増加していく新興国の人口は、
2010年:44.8億人→2020年:58.9億人
に「大半が新興国」で増加する見込みであり、さらなる経済発展が手に取るように予測できます。
引用:経済産業省
新興国経済の喫緊の課題
ここまでは新興国が今後の世界経済を牽引し、発展を遂げると解説してきましたが、一筋縄ではいかないのが経済であり我々が住む社会でもあります。
先進国が課題で山積みなように、同様に新興国にももちろん課題はあります。
その課題とは、大きく分けて2つあり、
・1つ目が、経済成長のポテンシャル(潜在成長率)をふいにしてしまう可能性
・2つ目が、各新興国が保有する過剰となってしまった「債務問題」
の2点です。
では、それぞれ解説していきたいと思います。
新興国は潜在成長率水準の経済成長を達成できるのか?
これから経済成長が見込まれる国を分析する際に「潜在成長率」という指標が重要となります。
潜在成長率の定義は以下の通りです。
潜在成長率(せんざいせいちょうりつ)
一般的に中長期において持続可能な経済成長率を指すことが多い。労働、資本、生産性の三つの要素を基に試算される。内閣府や日本銀行、国際通貨基金(IMF)などがそれぞれ潜在成長率を推計しているが、算出に用いるデータなどが異なるため、数値は必ずしも一致しない。
引用:野村証券
定義上では必ず一致しないとされていますが、世界で最も信頼できると考えられるIMFの推計によると、
新興国の中でも成長が最も見込まれるASEANの潜在成長率はリーマンショック前の7.5%から2ポイント落とし約5.5%となっているとの推計しています。
以下右の図ですね。
引用:三菱総合研究所
2ポイント下がりつつも、人口ピラミッドから見る新興国の生産力・労働力は今後も増加し、生産性が低下しない限りは経済成長は進みます。
生産性が下がる可能性としては、
- 新興国の技術進展
- 教育水準の向上
の2つです。
まずは技術発展ですが、新興国の技術力が向上すると、労働者の人手が減り、所得増加には繋がっていきませんね。
事業でもそうですが、爆発的に伸びた後は効率化が高まり「高止まり」します。伸びる余地がどんどんなくなるということですね。
次に教育水準ですが、人材(労働者)の質(知識・作業力)の向上も高止まりしますよね。
テストで30点から90点を取るのは簡単だが90点から95点を目指すのは難しいというものと一緒です。
この課題への対応としては、「インフラ改善」「事業環境改善」「教育改革促進」「規制撤廃」の4つが有効となります。
この4つを如何にうまく改善していき、中所得国の罠(1人あたりGDP10,000USD)を乗り越えていくかが勝負となります。
余談ですが、過去20年で韓国とシンガポールのみ、新興国では中所得国の罠を抜け出しており、現在マレーシア、フィリピンがはまっています。
抜け出すには、労働集約型産業から知識集約型産業への転換が鍵になりますが、国力が試されるところです。
「他所の製品の組み立て」から「開発」に転換できるか、ということです。
新興国・資金レバレッジに対する過剰債務問題
次の課題として、「過剰債務問題」があります。
米利上げ開始は「米ドル建ての」新興国債務に対する返済額が増加することを意味します。返済が滞ることにより新興国企業の破綻などが噂されていますよね。
新興国債務の現状としては、分野に分けて見ると、
- 政府部門:GDP比45%(因みに日本は200%)
- 非金融企業:GDP比106.5%
- 家計部門:GDP比35%(内シャドーバンク3%)
となっています。
先進国が政府債務が膨張する状況と異なり、新興国は企業債務が甚大であり、30%はドル建となります。
現在は米ドルが売り込まれておりますが、これが買いに転じた時に悲惨な事態となってしまいます。
債務問題といえば過剰投資をしている中国。非金融部門債務はGDP比200%を超えました。
引用:リコー経済社会研究所
「過剰設備」「過剰債務」「過剰雇用」の中国の未来はかなり暗いと言えるでしょう。
中国はさておき、アジア通貨危機時のことを考えると、新興国の経済政策はかなり改善されたと考えられます。
アジア通貨危機当時は、米ドルなど短期外貨借入に対して為替ヘッジをほぼ行わず、
丸裸で自国不動産等の長期投資につぎ込んでいたので突然の通貨危機によって自国通貨安が起こり、返済不能となり企業が次々と倒産しました。
現在は為替ヘッジや外貨準備高の保全、短期債務の抑制を実施し、通貨安に強い体制となっています。
新興国への投資はまだ間に合う?
先述した2016年12月から2017年4月までの上昇で、新興国への投資はもう間に合わないのではないか?と考える人も少なくないでしょう。
引用:SBI証券
しかし、まだまだ新興国への投資は大きなポテンシャルを残しており、十分なリターンが得られると考えています。
以下の世界の株式時価総額比率とGDP比率それぞれの割合を見ればわかるのですが、
2020年にはGDP45%に達する新興国経済に対して時価総額が10%しかありません。
引用:みずほ証券
引用:地域別株式時価総額
株式市場=経済規模であり、新興国市場は現在非常にGAPが大きい状態となっています。
新興国は経済成長をしており先進国の経済規模を猛追しているにも関わらず、世界金融危機前と同水準に留まっておりかなりの出遅れです。
今のタイミングであれば、投資対象を間違えなければ5-7倍ほどのリターンが得られる可能性が高いです。
そもそも、冷静に状況を俯瞰すると、現状、新興国株式市場への評価がとても低いのです。
2012-2016年に亘り、先進国の株式市場が50%上昇するも新興国市場はマイナス2%でした。
経済成長率4%~5%に対してマイナス2%というのは、異常です。
先進国の世界金融危機による債務整理に目処が立ったところで、冷静に評価をし始めたところで、上昇曲線に入ったと言っても良いでしょう。
また、日本の投資家の外貨資産比率は2.3%であり、新興国通貨資産は0.2%であるとことが日銀・資金循環統計にて明らかにされています。
以下の通貨が9割を占め、新興国は1割に過ぎません。ほとんどの日本人は新興国へと資産を振り向けていないのです。
そもそも日本人はとても保守的な投資をするという性格もあるので、仕方ないのかもしれません。
- 米ドル
- 豪ドル
- ユーロ
- 英ポンド
- 加ドル
- NZD
- デンマーククローネ
- スウェーデンクローネ
新興国投資は2018年中に実行したい
以上のことから、新興国株式は割安な水準であり、再評価され始めたのも最近であり投資をするタイミングとしては2018年中であれば間に合うと考えます。
以下をみていただくと新興国債券・株式は急激な上昇をしていますが、世界経済における経済成長の割合に比べればまだまだ割安です。
引用:みずほ証券
新興国へ一本足打法として投資するのではなく、ポートフォリオとして組み入れ着実なパフォーマンスを目指すのが良いでしょう。
新興国投資で成功する為の、2つの方法
新興国株式の投資をするに当たって注意したいのは、「選ぶべき国」があるということ。そしてその中にも「選ぶべき銘柄」があるということです。
投資すべき国というのは、「順調に経済成長をしており、株価が割安である」国です。
そして投資すべき銘柄というのは、「国の成長性と高い相関を示し、新興国特有の企業リスクが比較的低く、さらに株価が割安である」企業です。
ただし、上記の条件を満たすような国を適切に発見すること、またその中でも投資価値の高い銘柄を選定することは簡単ではありません。
よって、新興国への株式投資で成功する為には、以下の2つの方法が有効となります。
- 情報を得るに当たって “自身がアドバンテージを持っている” 国を選択する
- 新興国への投資を専門的に行っているプロの運用判断を委ねる
詳しく説明すると、1つめの方法は、自らが突っ込んだ情報を得られるような国を選択するということです。
例えば、駐在でミャンマーにいます、という場合や、インドの企業に就職したのでインドで生活しています、というような場合です。
このような状況であれば、その国の経済、政治、株式市場に関するリアルな情報が現地で取れるでしょう。
そういった生の情報を元に、自らの判断で個別銘柄を選択して投資していくというのは、一つ有効な方法だと言えます。
2つ目の方法は、そういった新興国への株式投資を専門的に行っているファンドに資金を預け入れるという方法です。
私は新興国株式投資においてプライベートファンドに資金を預けていますが、魅力的な新興国に投資をして大きな利益を上げています。
同ファンドが投資している新興国の銘柄には、成長率10%近い国のPERが4倍という割安過ぎる銘柄や、配当利回りが20%のような優良な高配当銘柄があり、彼らはそういった投資先に集中的に資金を投下しています。
プライベートファンドの難点として、投資最低金額が設けられている点やロックアップ期間が存在する点がありますが、
投資の質としてはやはり非常に高いレベルにありますので、興味のある方は以下の記事を参考にしてみて下さい。
100万円から投資できて何倍ものキャピタルゲインが見込める「海外不動産」という選択肢
株式にこだわらなければ、私はバングラデシュ不動産が2018年時点ではベストな投資先であると考えています。
バングラデシュ不動産では土地の値上がり益が3-5年で4-8倍のリターンがほぼ確実に出ると見込まれています。
バングラデシュ不動産の魅力については今回は割愛しますが、以下に詳しく纏めていますので興味のある方は読んでみてくださいね。
では、良い投資ライフを。