このブログを初めて読む人に向けて、以前「なぜ海外不動産投資なのか?そのメリットとおすすめの国は?」で投資する基準の考え方を書きました。
内容としては新興国で成長著しい「バングラデシュ」への投資に至った私の投資意思決定の基準について公開したものとなります。
しかし、同記事だけではバングラデシュの魅力はなかなか伝わらないと思い、同国の世界の注目度・経済概況について今回は執筆していこうと思います。
まず最初に、バングラデシュ日本大使館のまとめた資料にもありますが、
バングラデシュは米金融機関「ゴールドマンサックス」が、後発開発途上国の中で唯一BRICSに次ぐ「ネクスト11」に、同じく米金融機関の「JPモルガン」は「フロンティア5」に入ると注目しています。
ちなみにネクストイレブンのラインナップは以下の11カ国です。
ベトナム、フィリピン、インドネシア、韓国、パキスタン、バングラデシュ、イラン、ナイジェリア、エジプト、トルコ、メキシコ
また、フロンティアファイブは以下の5カ国ですね。
バングラデシュ、ベトナム、ナイジェリア、カザフスタン、ケニア
少し余計は話をしますが、ゴールドマンサックスとJPモルガンと言えば、世界10大投資銀行の中でも1位と2位の売り上げを誇る証券会社です。
当時は私も総合商社と並行してGoldman Sachsなどを就活では受験していましたね。非常に懐かしいです。
しかし、これだけの一流金融機関がバングラデシュに熱心になるのにはやはり理由がありますよね。
国際連合はバングラデシュをアジアの「ライジングサン」と評価しており、非常に注目しています。
今回はそんなバングラデシュの経済について紐解いていきたいと思います。
バングラデシュの経済概況
以下はJETROから取得した国・経済概況となります。
このデータを基に経済概況を説明していきます。政治状況もJETROに掲載されていますので、カントリーリスクについて調査している方は一読すると良いと思います。
一般事項
国・地域名 | バングラデシュ人民共和国 People’s Republic of Bangladesh |
---|---|
面積 | 14万7,570平方キロメートル |
人口 | 1億6,175万人(2016/17年度、出所:バングラデシュ統計局) |
首都 | ダッカ 人口1,204万人(2011年、出所:統計局) |
言語 | ベンガル語(国語) |
宗教 | イスラム教(国教) |
基礎的経済指標
項目 | 2016年 |
---|---|
実質GDP成長率 | 6.92(%) |
(備考:実質GDP成長率) | 推定値 |
名目GDP総額 | 227.9(10億ドル) |
(備考:名目GDP総額) | 推定値 |
一人当たりの名目GDP | 1,411(ドル) |
(備考:一人当たりの名目GDP) | 推定値 |
鉱工業生産指数伸び率 | n.a. |
消費者物価上昇率 | 5.51(%) |
失業率 | n.a. |
輸出額 | 30,195.3(100万ドル) |
(備考:輸出額) | 通関ベース |
対日輸出額 | 692.4(100万ドル) |
(備考:対日輸出額) | 通関ベース |
輸入額 | 41,260.5(100万ドル) |
(備考:輸入額) | 通関ベース |
対日輸入額 | 1,835.9(100万ドル) |
(備考:対日輸入額) | 通関ベース |
経常収支(国際収支ベース) | 1,279.1(100万ドル) |
貿易収支(国際収支ベース、財) | △6,229.8(100万ドル) |
金融収支(国際収支ベース) | △4,580.8(100万ドル) |
直接投資受入額 | 14,541(100万ドル) |
(備考:直接投資受入額) | フロー、ネット |
外貨準備高 | 31,776(100万ドル) |
(備考:外貨準備高) | 金を除く |
対外債務残高 | 57,022(100万ドル) |
政策金利 | 5.00(%) |
(備考:政策金利) | 期末値 |
対米ドル為替レート | 78.47(タカ) |
(備考:対米ドル為替レート) | 期中平均値 |
バングラデシュ経済特徴①:現在世界第8位、2億人突破が見込まれる人口
現在のバングラデシュの人口は約1億6200万人であり、予想以上に多いです。
現在世界第8位で日本の11位より上位にランクインしています。因みに2050年には2億人になることがみこまれています。
引用:キッズ外務省
バングラデシュ経済特徴②:日本の4割ほどしかない土地面積
バングラデシュの土地面積は14万7千平方キロメートル、日本は土地面積は37万8千平方キロメートルです。
バングラデシュは日本の40%と非常に狭いです。
日本の人口が1億2000万人であり、
バングラデシュは日本の人口の1.4倍ある約1億6200万人に対して土地面積は4割ということで、同国の人口密度は日本のなんと3.5倍です。
人口密度はマカオやシンガポール、香港島の都市国家を除いてトップの第7位となっています。
順位 | 名称 | 単位: 人/km2 | 地域 |
---|---|---|---|
1位 | マカオ | 22,801.42 | アジア |
2位 | シンガポール | 8,051.65 | アジア |
3位 | 香港 | 6,687.73 | アジア |
4位 | バーレーン | 1,910.53 | 中東 |
5位 | マルタ | 1,455.70 | ヨーロッパ |
6位 | モルディブ | 1,208.05 | アジア |
7位 | バングラデシュ | 1,099.20 | アジア |
8位 | 台湾 | 655.11 | アジア |
9位 | バルバドス | 653.49 | 中南米 |
10位 | モーリシャス | 622.06 | アフリカ |
引用:世界の人口密度ランキング
国連の面白いデータがありまして、1平方キロメートル以内に人口は何人いるのかの各年の推移を表す統計で、例えば中国、日本、バングラデシュと並べてみました。
引用:UNITED NATIONのデータベースで筆者が検索
例えば推移を見ていくと、
2020年時点予測で、1km以内の人口数は中国が151.7人、日本は347人、バングラデシュはなんと1,304.3人です。
1995年から人口密度が上昇してきていることも具体的によくわかりますよね。
国の資産の中でも、不動産は「衣食住」の柱であり、当然人口密度に比例して高くなるので、投資をするにあたり、
この水準は非常に魅力的なレベルということができるでしょう。
バングラデシュ経済特徴③:まだまだ最貧国レベルのバングラデシュのGDP
以下はバングラデシュのGDPの推移です。年々増加していることが容易にわかりますね。
出典:World Economic Outlook Database, October 2017を基に筆者作成
バングラデシュのGDPは2016年時点で約2,280億ドル(1USD=100円と仮定して22兆8000億円)です。
日本のGDPが500兆円規模なので、それと比べると約20分の1ですね。まだまだ貧困国の域を出ない水準です。
バングラデシュ経済特徴④「中所得国の罠」までまだまだ距離のあるバングラデシュの1人当たりGDP水準
次に一人当たりGDPを見ていきましょう。
出典:World Economic Outlook Database, October 2017を基に筆者作成
まだまだ1,000ドル台と非常に低いです。
日本の1960年くらいをイメージして頂ければというレベルですね。
そして何が魅力的かというと、中所得国の罠と言われる「一人当たりGDP10,000ドル」まではまだまだ距離があり、
成長が一旦頭打ちになる水準まではまだまだ距離があるというレベルです。
「中所得国の罠」とは、多くの途上国が経済発展により一人当たりGDPが中程度の水準(中所得)に達した後、発展パターンや戦略を転換できず、成長率が低下、あるいは長期にわたって低迷することを指す。
引用:内閣府
当然国民所得が増えれば不動産価格が上昇していきますので、
この増加傾向がしばらく続くという点は非常に投資妙味が高い国であるということが出来るでしょう。
実際中国が1人あたりGDPが1,000USDであった1990年代後半以降の可処分所得と不動産価格の伸びは以下の図のように急騰しております。
中国は広大なため、農村価格を含んだ平均の数値なので以下のようになりますが、
人口密度が広いバングラデシュの首都ダッカの地価の高騰はこれを大きく上回ることが想定されます。
バングラデシュの不動産投資を考えるのであれば今がベストタイミングとも言えるでしょう。
引用:中国国家統計局公表データ
バングラデシュの過去の経済成長と今後の動向
まず2000年から現在までのバングラデシュの経済成長を以下ご覧下さい。
出典:World Economic Outlook Database, October 2017を基に筆者作成
一貫して5%を超える高成長を実現していますね。注目すべきところは、
リーマンショックのような世界危機が発生した場合においても5%以上の高成長を維持したところです。
これは後でも述べるのですが、
リーマンショックにより価格の安い生活用品を世界中の人が求めるようになり、安価な労働力を有しているバングラデシュで衣類を生産しようという流れが活発となったことが要因です。
このような高成長を続けた結果、2000年のGDPを100とした場合のGDPの推移は以下のように飛躍的な上昇を見せております。
私としてはこの成長は更に拡大していくと見ています。
実際2018年度も7.4%の成長を見込み過去最高の成長率を達成する見込みです。
今後のバングラデシュ経済加速要因を列記していきます。
バングラデシュ経済加速要因①:魅力的な人口ピラミッド
発展途上国が成長する為の条件について、最も重要なのは今後人口が増える更に15歳から60歳の生産年齢人口が増えることです。
日本の高度経済成長も「人口ボーナスによる影響」と朝鮮戦争の特需が要因となっています。
人口ボーナスについては内閣府の出している以下の図が大変わかりやすいです。
人口規模が「生産性」「労働投入」「資本蓄積」に貢献し経済成長を促すというものですね。
引用:内閣府
一応人口ボーナスの定義を書くと、以下の通りです。
人口ボーナス:
経済の高成長を支える要件の一つとなるのが人口ボ ーナス期だ。
人口ボーナス期とは、総人口に占める生 産年齢(15 歳以上 65 歳未満)人口比率の上昇が続く、もしくは絶対的に多い時期、若年人口(15 歳未満)と老齢人口(65 歳以上)の総数いわゆる従属人口比 率の低下が続く、もしくは絶対的に少ない時期を指す。
生産に携わる人口が増加することで経済の労働 供給力を高めることが成長につながる。また、高齢者 の比率が低いこの期間は社会保障費なども抑制しやすい。
消費面では働く世代の拡大により住宅費や消費支 出全般の増加が見込まれる。
引用:JETRO
それではバングラデシュの人口ピラミッドをご覧下さい。
引用:バングラデシュの人口ピラミッド(世界の人口ピラミッド)
概ね末広がりな綺麗な形をしており、
今後総人口が増え且つ労働人口も増加していくことが目に見えた形となっております。
平均年齢は20台と非常に若く、成長する為の爆発力を備えているといって過言ではないでしょう。
実際先程人口の欄でも申し上げた通り、今後人口は上昇していき2050年の時点で2億人を突破することが見込まれています。
引用:バングラデシュの人口ピラミッド(世界の人口ピラミッド)
バングラデシュ経済加速要因②:今後大幅に伸びていく国内需要
まずは東南アジアの一人当たりGDPと家電の普及をご覧ください。
引用:SUMITOMO MITSUI TRUST ASSET MANAGEMENT
現在フィリピンと1人当たりGDPが似たり寄ったりの数値であるバングラデシュは今後乗用車やカラーテレビ、
冷蔵庫のような家電が普及し始める為、飛躍的に個人消費が伸びるゾーンに来ているのです。
別の調査ではバングラデシュの冷蔵庫の普及率はなんと8%台となっています。
バングラデシュのような暑い国では冷蔵庫は必須の家電となりますので、ここから急速に普及していくことでしょう。
そして2014年のデータではありますが、バングラデシュのGDP構成は以下のように個人消費の割合が70%を超えるという健全な経済構成・傾向で、
国民の賃金上昇を伴う需要の増加がダイレクトに経済のパイを拡大させることになっていきます。
例えば中国では消費に割合が個人消費と政府消費を合わせて50%程度で、
投資が40%を占めるという投資主体の経済となっています。
中国の「過剰設備」「過剰生産」「過剰債務」を抱えている実態を見ると、
更に投資を促進して経済成長していくには難しい段階にきていますね。
中国と比較すると、現在のバングラデシュの潜在力は非常に高いといえるでしょう。
バングラデシュ経済加速要因③:安価な労働力に対する対外投資の呼び込み
現在世界の工場は中国から東南アジアのベトナムやインドネシアに移っていますが、次に有望視されているのがバングラデシュです。
実際以下の輸出品目を見て頂ければ分かるんですが、衣類に関しては中国に次いで世界第二位で世界の工場としての地位を確立しつつあり、これからも伸びていくものと考えます。

日本のユニクロを始め各国の衣料品会社がバングラデシュに縫製工場を建設した背景として、バングラデシュ人の手先が器用で、
中国人労働者と異なり、従順な気性であるという点もありますが、やはり一番大きい理由はその賃金の安さです。
以下の図ではダッカの一般工の月額賃金は111ドル(=11,100円、1USD=100円と仮定)と非常に安価ですね。
月給11,000円というのは破格の安さだと思います。その為、世界の縫製工場としての地位を確立しているわけですね。
対して中国は580ドルとダッカの5倍以上の賃金です。
冷静にGUのジーンズが1,000円以下で売れるのはバングラデシュの恩恵に預かっているといえるでしょう。
今後賃金が高くなっている中国から更にバングラデシュへの流れが加速していくことが想定されます。
バングラデシュが縫製工場として地位を確立し、信頼に足る労働力の質であると評価されれば徐々に重工業の工場が入っていき経済成長が加速していくことでしょう。
日本も初期は衣料品などの軽工業で、徐々に重工業に移り自動車等をつくるようになり高度経済成長を迎えていったので、
同様のことがバングラデシュでも起こっていくと考えるのが自然の流れです。
バングラデシュ経済加速要因④:政府の姿勢
バングラデシュ政府は「2041年」までに先進国入りを目標にしており、
諸外国からの投資を呼び込む為に積極的な規制緩和を行う方針を示しています。
現在海外からの直接投資のバングラデシュのGDPに占める割合は2%に満たない水準で、
今までの累積でも6.1%と南アジアの平均10.2%と比較しても少なく、
今後の投資余地が大きく残されております。
実際先程のGDP構成でも申し上げました通り、GDPに占める投資の割合は30%にも満たないレベルなので、
他の新興国に比しても割合は低く規制緩和による拡充余地は高いといえるでしょう。
バングラデシュ経済の総括
バングラデシュは総人口並びに生産年齢人口が増加していき、
安価な労働力にも支えられ海外からの投資を呼び込みながら経済成長を今後も高い水準で実現していくことが見込まれます。
人口密度が確りとした面積のある国土としては世界トップ水準であるため、
経済成長により所得の増加により不動産価格は日本の高度成長期のように急騰していく市場であることが確定的であるといえるでしょう。