これまでも様々な新興国株式銘柄を紹介してきましたが、今回はカンボジアの株式投資を取り上げたいと思います。
カンボジアと言えば、アンコールワットで有名ですよね。私も4年前ほどに海外出張で首都・プノンペンに行ったことがありますがまだまだ経済発展もはこれからだなという印象が強かったです。
当時は主な交通手段は「トゥクトゥク」で、道も整備されておらずガタガタでしたが、人々は活気に満ちていて、新興国のポテンシャルを大いに感じました。
今回はそんなカンボジアが本当に経済発展していくのか、投資家としての観点から投資すべき国なのかどうかを書いていきたいと思います。
Contents
カンボジアの概要
まずはざっくりとカンボジアという国の概要を見ていきましょう。
カンボジア一般概要
国・地域名 | カンボジア王国 Kingdom of Cambodia |
---|---|
面積 | 18万1,035平方キロメートル(日本の約2分の1弱) |
人口 | 1,506万人(2015年、出所:カンボジア計画省統計局) |
首都 | プノンペン(人口:183.5万人(2015年、出所:同上)) |
言語 | クメール語(97.05%) ほかに少数民族言語(2.26%)、ベトナム語(0.42%)等 (2013年、出所:同上) |
宗教 | 仏教(97.9%) ほかにイスラム教(1.1%)、キリスト教(0.5%)等 (2013年、出所:同上) |
公用語 | クメール語 |
引用:JETRO
カンボジア経済概要
項目 | 2016年 |
---|---|
実質GDP成長率 | 7.02(%) |
(備考:実質GDP成長率) | 推定値 |
名目GDP総額 | 19.4(10億ドル) |
(備考:名目GDP総額) | 推定値 |
一人当たりの名目GDP | 1,230(ドル) |
(備考:一人当たりの名目GDP) | 推定値 |
鉱工業生産指数伸び率 | ― |
消費者物価上昇率 | 3.02(%) |
失業率 | ― |
輸出額 | 10,100.4(100万ドル) |
(備考:輸出額) | 通関ベース |
対日輸出額 | 827.2(100万ドル) |
(備考:対日輸出額) | 通関ベース |
輸入額 | 12,900.2(100万ドル) |
(備考:輸入額) | 通関ベース |
対日輸入額 | 528.3(100万ドル) |
(備考:対日輸入額) | 通関ベース |
経常収支(国際収支ベース) | n.a. |
貿易収支(国際収支ベース、財) | n.a. |
金融収支(国際収支ベース) | n.a. |
直接投資受入額 | n.a. |
外貨準備高 | 8,393.4(100万ドル) |
(備考:外貨準備高) | 金を除く |
対外債務残高 | n.a. |
政策金利 | 11.36(%) |
(備考:政策金利) | Lending Rate |
対米ドル為替レート | 4,059(リエル) |
(備考:対米ドル為替レート) | 期中平均値 |
引用:JETRO
カンボジアは一人あたりGDPが1,230USD(2016年)とミャンマーの1,300USDよりも低いです。2016年のGDP成長率は7.02%と今後発展のポテンシャルを秘めるアジア最貧国の一つだけあり、成長余地が高いことが伺えます。
1人あたりのGDPの低さがどうしても目を引きます。GDPの水準に関しては、意外にもカンボジアの歴史が影響しているのです。「ポル・ポト政権」という単語を聞いたことがありますでしょうか?
ポル・ポト政権下の虐殺と反ベトナム政策
同政権下では、100万とも200万とも言われる自国民の虐殺が行われ、類を見ない「恐怖政治」が国内外を震撼とさせました。帰国したシハヌーク殿下も幽閉されます。ポル・ポト政権幹部は、思想的に文化大革命当時の中国に大きな影響を受けたと言われておりました。また、ポル・ポト政権は、ベトナム戦争終結後、ソ連に接近したベトナムに対しても、伝統的な反越感情と相まってあからさまな敵対政策をとります。
引用:外務省
カンボジアは1975年-1979年のポルポト政権時に当時の同国の人口700万人に対して200万人が虐殺されました。その中でも医者や教師、知識人が優先的に殺されてしまいました。
原始共産主義者だったということですが、この時代は凄惨を極め「眼鏡を掛けて本を読んでいる」だけで兵隊に捉えられ、酷い拷問を受け殺殺害されるということが日常的に行われていました。
この時代に、経済の発展を担う知識人が優先的に殺されてしまったことが、カンボジアを停滞させた主な要因とされています。
詳細を知りたい人は首都プノンペンの「トゥール・スレン」を訪れてみると良いでしょう。虐殺犯罪博物館として、当時の様子がわかります。私は言葉を失いました。
カンボジアの経済成長水準は?
さて、話を戻しまして、カンボジアの過去の経済成長率の推移を見ていきましょう。
引用:World Economic Outlook Database, October 2017を元に筆者が作成
2000年代後半は10%以上のGDP成長率を誇りましたが、リーマンショックを機に落ち込み、今は7%ほどの成長で推移していますね。カンボジアの今後の成長要因について見ていきましょう。
カンボジアの人口ピラミッド
まず、今後の経済発展を分析するにあたり重要な指標であるカンボジアの人口を見ていきましょう。
カンボジアの人口ピラミッドは理想に近い形とも言えるのですが、ボリュームゾーンが0-4歳、5-9歳、20-24歳、30-34歳に集まっていますね。高齢者が異常に少なく、若年層が非常に多い構造です。これはポル・ポト政権時代に高齢者が大量に虐殺されたのも影響しています。
カンボジアの教育レベルはやはり低いのですが、知識型労働を求められる段階ではまだなく、労働集約型で低賃金を売りにして経済を伸ばしていく段階ですので悲観的になる必要はないです。
例えば、以下のASEAN諸国の最低賃金を確認してみましょう。
カンボジアの労働賃金は、格差が大きいASEANの中でも最底レベルであり、今後この低賃金に目を付けた外資企業が進出してくるでしょう。
最低賃金:
- 月額US$153 (2017年1月~)
付加給付:
- 皆勤手当:US$7(2011年3月から義務)
- 残業時食費手当:2,000リエルもしくは食事支給(1日1回)(2011年3月から義務)
- 年功手当:2年勤続US$2, 以降年US$1, 11年勤続US$11まで(2011年3月より義務)
- 災害保険(国家社会保険基金;NSSF):0.8%(縫製業は0.5%)
- 通勤手当:US$7(相場)※バベット地区はUS$13
- 住宅手当:US$5(相場) ボーナス:年間1か月分(相場)
- 労働条件
- 1日:8時間, 1週間:48時間
- 残業代:残業50%、夜間(22時~5時)100%, 休日100%, 出来高払いを採用する場合は届出必要
※個人所得税率 ~US$200:0%、~US$312.5:5%, ~US$2,215:10%, ~US$3,125:15%, US$3,125ドル~:20%
それではカンボジアの産業別GDPを見ていきましょう。
引用:CENTRAL INTELLIGENCE AGENCYのデータを元に筆者が作成
新興国の特徴として、まだ農業のGDPに占める割合が25%と高く、農業人口の都市部への移動も見込まれ、豊富な人的資源を有しているといます。これからどんどん工業に産業の比率が移っていき、最終的にはサービスに移動していきます。
カンボジアの経済成長の鍵は?
次はカンボジア経済の成長の鍵を見ていきます。以下はGDP成長率と産業別の部門寄与度を表したグラフです。
上記の産業別GDPの比率でもサービス業は42%と高かったのですが、部門別の寄与度で見ても近年はサービス業が大きくGDPに寄与しています。観光地であるアンコールワットへの観光客が大きく増加していることが要因となりますね。
2000年の観光客は約47万人でしたが、2016年には500万人まで増加しており、観光収入が右肩上がりとなっています。
引用:カンボジア観光省
カンボジアのようにまだまだ経済規模の小さい国では、観光収入が大きな意味をもちます。工業は縫製業で、まだ軽工業の域でしかなく、今後タイやフィリピンのように製品の最終組み立て型の産業の誘致が海外からも積極的に実施され、本格的な工業産業を中心とした経済発展をしていくことが見込まれます。
カンボジアも貿易相手は?
次に、カンボジアの輸出入(貿易)について見ていきましょう。
まずは輸入先ですが、中国とASEAN諸国であるタイ・ベトナムからの輸入がメインです。輸出の縫製品の元となる、服の生地の比率(35%)が高いです。
引用:国土交通省
主要輸入品目は、
織物(35%)、機械(9%)、電気機器(5%) 、石油製品(4%)、車輌(4%)
となりますね。
次に輸出先となりますが、これは輸入先とは大きく代わり、「先進国」が大半を占めます。輸入した生地から衣服を作って輸出していることが要因です。
引用:国土交通省
主要輸出品目は、
衣類(50.3%)、印刷物(37%)、履き物(3.9%)、穀物(2.1%)、ゴム(1.3%)
となりますね。
主要輸出先の米国への依存が大きく、同国の景気が悪化すると国内の縫製従事者50万人の生活に影響が及ぼすのではとイメージしてしまいそうですが、高級品ではなく、景気が悪化しても「衣・食・住」の衣を担っているので大きな影響はないのではと考えています。
貿易額(2015年)は輸出が119億米ドル、輸入が187億米ドルとなっており、まだまだ輸入依存であることがわかりますね。
まとめ
カンボジアはASEANで今後成長が期待されるCLM諸国の一角をなす期待の新興国です。
C:カンボジア
L:ラオス
V:ベトナム
経済水準は1人あたりGDPが1500USD近辺ということで株式市場ではなく不動産が上昇する水準です。
その点を含めて次回詳しくカンボジアを投資対象としてどう向き合うべきかという点についてお伝えしていきたいと思います
→ カンボジア株式投資の現状を解説!注目のCLM諸国の一角の株式市場を紐解く。