新興国株式投資

『ブラジル株式市場』おすすめ海外新興国投資を経済・国家政策より解説

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これまでも様々な新興国株式市場について解説してきましたが、今回はブラジルを取り上げたいと思います。

ブラジルと言えば、2000年代前半は大きな経済発展を遂げ、中流階級層が増加しましたが、度重なる政治の汚職が取り沙汰され、経済成長にブレーキをかけている印象が強いですよね。

私も長期出張でブラジルを訪れ2ヶ月ほど滞在したことがあるのですが、国民の政府へのデモで道が封鎖される場面などを目にしてきました。

そんなブラジルに株式投資を検討する価値があるのかどうか、経済分析を通してみていきましょう。

今回のポイント
  • 2017年のGDP成長率は1%とかなり厳しい状況、一人当たりGDPも10,000ドルと中所得国の罠である10,000ドルに差し掛かった状況であり、国力が試される時期にきている。
  • 人口は東南アジアのフィリピンやインドほど魅力的な人口ピラミッドの形ではないが、まだしばらくは労働人口が増え、需要・供給も増加することが見込まれる。
  • ブラジルの教育水準も識字率が90%を超えており、知識集約型の労働への転換の足枷にはならないと考えられる。
  • 政治不安もあり、ブラジルレアルの為替下落に伴い輸入物価も上昇していたこともあり個人消費も停滞する状況に陥っていた。
  • 2017年時点でも投資はまだマイナスに振れていますが、個人消費の復調の兆しが見え、経済成長基調にカムバックしつつある。
  • ブラジル貿易先に関しては、輸出入共に中国に依存しており、中国の供給過剰はほぼ確実視できるので不安が過る。
  • 2018年10月の大統領選でメイレレス元財務相が、就任すればかなり安心感がある。
  • 現在のブラジル株のPER予想は14倍と悪くない水準。
  • 政治問題が落ち着けば投資も検討を考えても良いが、2018年10月の大統領選の結果によっては通貨の下落リスクはどうしても不安を感じる。

ブラジル概況

まずはブラジルの一般概要と経済概要をそれぞれ把握しましょう。

ブラジル一般概況

国・地域名ブラジル連邦共和国 Federative Republic of Brazil
面積851万5,767平方キロメートル(日本の約22.5倍)
人口2億608万人(2016年) 出所:ブラジル地理統計院(IBGE)
首都ブラジリア 人口:424万人(2016年、ブラジリア都市圏) 出所:国連推計
言語ポルトガル語
宗教主にカトリック

引用:Jetro

ブラジルの土地面積は日本の約22.5倍と巨大です。豊富な資源、食糧があり、経済が成長していく素地は抜群に備えています。課題は国民性と政治の汚職でしょう。

気候は南地方は夏と冬がしっかりあり、北地方は年中夏です。ここで一つ面白いのが、南に向かえば向かうほどブラジルの教育のレベルが高くなり、北は貧困街が多く、教育レベルが著しく低いことです。

元々はポルトガルがインディオしかいなかったブラジルを侵略し、共生を始め、その後もヨーロッパ、日本を始めとしたアジアからの移民も増え、国民の肌の色は十人十色、価値観も全く異なる人々で構成された国であり、日本とは真逆です。

移民が進む際に、ヨーロッパからの移民が南地方を中心に増えたため、教育レベルが高く、富裕層が多い地域となりました。

個人的にですが、やはり季節の気温の変動がある地域の方が頭を使う場面が多く、それも関係していると思っています。北は暑く、海、海、海で海水浴を毎日楽しんでいるだけの国民が私がいくつもの地方を周った際に多い印象が残りました。

ブラジル経済概況

項目2017年
実質GDP成長率1.0(%)
名目GDP総額2,081(10億ドル)
一人当たりの名目GDP10,020(ドル)
鉱工業生産指数伸び率2.5(%)
消費者物価上昇率3.0(%)
失業率11.8(%)
(備考:失業率)年計は第4四半期値
輸出額217,739(100万ドル)
(備考:輸出額)通関ベース
対日輸出額5,263(100万ドル)
(備考:対日輸出額)通関ベース
輸入額150,749(100万ドル)
(備考:輸入額)通関ベース
対日輸入額3,763(100万ドル)
(備考:対日輸入額)通関ベース
経常収支(国際収支ベース)△9,762(100万ドル)
貿易収支(国際収支ベース、財)64,028(100万ドル)
金融収支(国際収支ベース)△6,131(100万ドル)
直接投資受入額70,332(100万ドル)
(備考:直接投資受入額)フロー、ネット。親子会社間の資金貸借を含む
外貨準備高373,972(100万ドル)
(備考:外貨準備高)金を含む、期末値
対外債務残高317,305(100万ドル)
政策金利7.00(%)
(備考:政策金利)期末値
対米ドル為替レート3.19(ブラジルレアル)
(備考:対米ドル為替レート)期中平均値

引用:Jetro

2017年のGDP成長率は1%とかなり厳しい状況です。一人当たりGDPも10,000ドルと中所得国の罠である10,000ドルに差し掛かった状況であり、ここからが国力が試される局面ですね。

経済の詳細をみていきましょう。

人口動態

今後の経済成長を測る上で最も重要な指標である人口構成をみていきましょう。

ブラジル人口ピラミッド引用:ブラジル(人口ピラミッド)

東南アジアのフィリピンやインドほど魅力的な人口ピラミッドの形ではありませんが、まだしばらくは労働人口が増え、需要・供給も増加することが見込まれますね。「BRICS」(ブラジル、ロシア、インド、中国)の中で考えると、インドに次ぐ2位と言える良い形です。

上記で述べましたが、ブラジルは2017年の一人当たりGDPが10,000USDとなっており、中所得国の罠である一人当たりGDPの10,000USDの真っ只中にいます。

今後の成長には、「労働集約型産業」から「知識集約型産業」への転換が不可欠であり、それには「国の教育水準」が重要になります。

ブラジルの識字率は2010年時点で90%を超え、世界平均である85.9%を上回っている状況です。

世界識字率ランキング・ブラジル引用:世界・識字率ランキング

また、例えば以下は15歳以上で文字の読み書きができない国民の統計です。

ブラジル教育レベル・識字率引用:ブラジル地理統計資料院

15年ほど前まではブラジルの識字率は35%などだったように記憶していましたが、2015年時点でかなり教育改善が進み、知識集約型の労働への転換の足枷にはならないだろう、と考えています。

ブラジルGDPに占める需要成長寄与度

次に、ブラジルの需要面からみた経済成長寄与度です。

ブラジル実質GDP成長率
引用:みずほ証券

近年総合商社が初の赤字決算を出したことで話題にもなりましたが、「資源価格の下落」により新規の資源発掘プロジェクトが中止になり、投資(総固定資本形成)が大きく減速しています。

政治不安もあり、ブラジルレアルの為替下落に伴い輸入物価も上昇していたこともあり個人消費も停滞する状況に陥っていました。2017年時点でも投資はまだマイナスに振れていますが、個人消費の復調の兆しが見え、経済成長基調にカムバックしつつあります。

私も総合商社でブラジルへの事業投資を担当していたのですが、毎回上層部からプロジェクトの打診をすると問題点として挙げられたのが「為替」でした。

大規模なプロジェクトは金額が大きくなりますので為替リスクに晒されるのはとても危険であり、総合商社のような資本が厚い会社は必ず為替変動を避けるために、リスクヘッジ(ヘッジ会計、先物の売買)します。

為替のリスクヘッジを実行すると、ブラジルレアルの場合はリスク通貨であることから年率10%の高い金利を支払う必要があり、事業投資にかかるリターンを考えるとペイしない場合の方がはるかに多いのです。

近年はブラジルレアルも復調の兆しが見え、2018年10月に大統領選を控えており、政治も安定し始めれば通貨もボラティリティが下がってくるとかと思います。

復調している個人消費ですが、要因はの2つあり、以下の通りです。

  • 雇用の改善が進んでいる

ブラジルの失業率が下がり雇用が全体的に復調し始めています。これにより国民の賃金収入が増加し、消費が活発になります。

  • インフレ鎮静化に伴う金融緩和の実行

ブラジルは2014年以降、インフレが急伸し政策金利をなんと14%まで引き上げました。その後、インフレが2%台まで下がりました。

インフレが抑えられると、国民としては消費しやすい環境になってきます。また、金融緩和によって住宅など投資を検討できる機会が増えてきますので、消費が活発になるということですね。

ブラジル雇用者数・失業率・インフレ率・政策金利引用:みずほ証券

ブラジルの貿易相手

ブラジルの貿易、輸出入先(2015年)と製品内訳(2014年)は以下の通りとなっています。

ブラジル輸出先

ブラジル輸入相手国引用:外務省資料を元に筆者作成

(1)輸出一次産品 48.7%(鉄鉱石、原油、大豆等)、工業製品 35.6%(燃料油、航空機、自動車部品等)、半製品12.9%(粗糖、木材パルプ、鉄鋼半製品等)

(2)輸入原材料及び中間材45.0%(化学・医薬品、鉱産物、輸送用機器付属品等)、資本財20.8%(工業用機械、事務・科学用機器等)、石油及び燃料17.3%、消費財17.0%(医薬品、食料品、乗用車、家庭用機械器具等)

引用:外務省

輸出製品はまだまだ鉄鉱石など資源に偏りがありますが、工業製品も35.6%を占めており、製造業に力を入れていることがわかります。

一人当たりGDPが中所得国の罠に近づいており、経済成長が懸念されますが、工業製品の比率を考えると、知識集約型の構造に近づいていることがわかりますので、良い循環と言えます。

貿易先に関しては、輸出入共に中国に依存しており、中国の供給過剰はほぼ確実視できるので不安が過りますね。

ブラジルの財政と政治

ブラジルが抱える課題である財政・政治について、まずは以下のデータを見てみましょう。

ブラジル財政収支・債務残高引用:みずほ証券

資源価格が下落した2014年頃から、総債務残高の対GDP比は急上昇しており、「緊縮財政」を実行することを余儀なくされているのです。

現・大統領テメルも歳出の伸びを前年度インフレ以下に抑制できてはいますが、年金の受給年齢引き上げる政策は、テメル大統領自身にも汚職問題の疑いがかけられていることで政策が足踏みしてしまっています。

政策進捗がスローな中、基礎的財政収支の赤字の拡大が継続しています。

そんなブラジルですが、テメル大統領の就任期間が終わり、2018年10月に始まる大統領選に注目が集まっています。

現在、支持率トップを走るのはルーラ元大統領ですが、汚職による裁判中であり、有罪判決が下され、収監されることが確定しましたね

個人的見解になりますが、現政権のメイレレス財務相が辞任し、大統領選に出馬するということで、同氏が大統領に就任すればかなり安心感があります。

ブラジル株式市場の展望は?

現在のブラジル株のPER予想は14倍と悪くない水準です。政治問題が落ち着けば、投資も検討してもいいですが、2018年10月の大統領選の結果によっては通貨の下落リスクはどうしても不安を感じますね。

ブラジル株式PER引用:NISSAY新興国レポート

ブラジルの個別株は楽天証券を通して投資実行可能ですが「米国預託証券」(ADR)の制度を利用しており、取引手数料が往復で4%取られます。

ADR

American Depositary Receiptの略称で和訳は米国預託証券。「外国企業・外国政府あるいは米国企業の外国法人子会社などが発行する有価証券に対する所有権を示す、米ドル建て記名式譲渡可能預り証書」である。

ADRの預かり対象は、通常は米ドル以外の通貨建ての株式であるが、制度的にはあらゆる種類の外国有価証券でも可能である。

引用:野村証券

解説は以上になります。

それでは、良い投資ライフを。