これまで様々な海外投資を試してきましたが、今回は個人でもできる「債券投資」について書いていきたいと思います。
まだまだ投資が初心者の方は「債券」と聞いてもあまりピンと来ないかもしれません。普段の生活ではなかなか出てこない言葉ですからね。
私も大学生の時に債券への投資を知りましたが、最初はピンときていませんでした。簿記なんかを勉強すると出てきたりするんですけどね。
定義を確認してみましょう。
債券
国、地方公共団体、会社等が、お金を借りるときにつくられます。普通、お金の貸し借りをするときには、借りた人が貸してくれた人に対して、借りたという証拠を残します。そのときに、借用書や借用証書というものがやりとりされるというのはイメージできると思います。国、地方公共団体、会社等が多数の投資家からお金を借りるときに発行するのが、債券です。
国が国民からお金を借りるときに発行する債券を、国の債券という意味で「国債」といいます。また、株式会社が一般の人やほかの会社等からお金を借りるときに発行する債券を、会社の発行する債券という意味で「社債」といいます。
債券は、あらかじめ何年後にお金を返すのかを決めて発行されます。その期限のことを満期といいます。借りる期間が5年なら5年たつと満期になります。そして、満期になると借りたお金は全額返さなければなりません。また、お金を借りている間は、毎年そのお金の“使用料”として利息を支払う約束になっています。
引用:日本証券業協会
長いので簡単にかいつまんで言うと国債とは「国」と「株式会社」がお金を貸して欲しい時に発行する借用書と言うことです。
債券投資とは国と株式会社にお金を貸すってことです。貸したあなたは利息をもらえますというシンプルなお話です。
今回は、投資先の一つとして債券も検討する価値がありますよ、と言う記事をメリット・デメリットと合わせて書いていきたいと思います。
個人で投資できる債券として、「日本国債」「外国債券」「社債」をそれぞれ分けて解説していきます。
Contents
日本国債(わが国投資)
まずは王道中の王道、日本国債についてです。考え方としては「わが国」にお金を貸して金利を貰うことに近いです。
日本国債に投資するにも、やはりリターンがいくらになるのかは投資を考える際には必須であり、国の金融政策が肝になってきますので、みていきましょう。
日本の金融政策を解読
金融政策といえば、日本の中央銀行である日銀のホームページから情報を取得することから始まります。見ていくと、現在大規模な金融緩和を実施していることがわかります。
例えば、市中銀行が、日銀に預けている金額の中から一定金額を超える部分に0.1%金利をマイナスにしています。
少しわかりにくいですね。市中銀行は本来は市場、つまり事業者などにお金を貸して経済を回していくことが求められているのですが、貸し手が見つからず、仕方なく日銀に預けて金利収入を得ようとしているということです。
日銀はそんなことせずにもっと市場にお金を回して好景気に貢献しなさい、ということで市中銀行への金利収入を低くしています。楽して儲けるなと市中銀行に施策を通じてメッセージを送っているのです。
市中銀行と言うと少しややこしいのですがこれは経済学の用語で、中央銀行に対して、一般の預金者(国民)からお金を預かり、事業を始める方などに貸し出す銀行を指します。メガバンクなどですね。
次に「イールドカーブコントロール」を実施し、10年物国債の金利を0%近辺にするという前代未聞の政策を実施しています。
イールドカーブコントロールの定義は以下の通りです。
イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)は、2016年9月の日銀金融政策決定会合で日銀が新たに導入した政策枠組み「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の柱のひとつ。
2016年1月から始めた短期金利のマイナス金利政策に加え、10年物国債の金利が概ねゼロ%程度で推移するように買入れを行うことで短期から長期までの金利全体の動きをコントロールすること。
日銀は指定する利回りで国債買入れを行う指値オペレーションを新たに導入するとともに、固定金利の資金供給オペレーションの期間を1年から10年に延長することによりイールドカーブ・コントロールを推進する。
これはつまり下図のような国債金利の形になるということです。
引用:日本銀行資料
10年のところで長期金利操作目標「ゼロ%程度」とあり、そこまでは金利がマイナスになっていることがわかります。つまり10年経たないと金利はマイナスになるということですね。
40年経過しても金利は0.8%と、リターンが非常に少ないことがわかります。
リターンが少ない日本国債投資、他に方法はないのか?
上記で絶望的なリターンであることが理解できたかと思いますが、それでもプラスの利回りで国債に投資する手段が存在します。
「個人向け国債」と呼ばれる財務省が発行している国債です。「個人向け国債」のメリットを列記してみましょう。
- 金利を0.05%の年率で最低保証する
- 1年経過後であればいつでも換金が可能
- 元本割れしないことを保証
- 最低出資額1万円から可能
上記の10年間は金利がマイナスである、とはなんのことだったのか。この個人向け国債は特殊で、投資できるのは「日本人であること」が条件となります。
日本政府が懸念していることは、外国人の国債大量保有です。
例えばリーマンショックなどのような経済危機が発生した時に、マネーゲームに巻き込まれ、国債が大量に売られ金利が上昇してしまい、利払いが不可能になると、国はデフォルトを余儀なくされます。
このような危機を避けるために、日本国民(=親と子の関係)に保有してもらい、資産の保全を図っているのです。親子関係であれば「国」としての借金は増えないのです。
それでも利回りは「投資をする」観点からすると低すぎますね。メガバンクの定期預金は0.01%の利回りであり、「ほんの少し」得をしたいと考えるのであれば0.05%で国債を買ってもいいかもしれません、が正直あまり変わらないかと思います。私は興味すら湧きません。
引用:円預金金利
他の投資方法として、物価連動国債へ投資をする投資信託もあり、「タンス預金をしているがインフレが起きたら大変だ」という方は物価連動国債でインフレリスクのみヘッジするものもあります。投資ではなく「保全」ですね。
外国債券投資を見てみよう
次に、外国の債券を見ていきましょう。外国の債券投資はアメリカなど含む「先進国」と東南アジア含む「新興国」の2つを分けて考える必要があります。リターンとリスクが全く異なるからです。
それでは先進国から順を追って解説していきます。
先進国債券投資(米国・オーストラリアなど)
まず先進国、国債の代表とも言える米国債の利回りを見ていきましょう。
引用:Bloomberg
3ヶ月のものから30年まで2%〜3%で推移しています。最近はFED(Federal Reserve System)の利上げが進み、米国債券の利回りも高い水準になっています。日本国債と比べると非常に高く感じます。2%で1年預けるとして、100万円で2万円、1000万円で20万円、1億円で200万円ですね。複利を考えるとどんどん増えます。
Fed(ふぇっど)
日本語では連邦準備制度。Federal Reserve SystemのFederalを略してFed(フェッド)と呼ばれ、FRSともいう。
米国の中央銀行制度のこと。連邦準備理事会(FRB:Federal Reserve Board)、連邦公開市場委員会(FOMC:Federal Open Market Committee)、全米12地区の連邦準備銀行(FRB:Federal Reserve Banks)から構成される。
引用:野村証券
先進国の国債ではオーストラリアが高金利というのが常識でしたが、豪州の利下げが進み、米国に金利は逆転されてしまいました。
引用:Bloomberg
先進国の債券投資を考えるのであれば、米国債一択でしょう。
外国債券投資をする場合、為替リスクは常につきまといますが、世界の基軸通貨である米ドルへの通貨分散ができるのであれば良い選択肢と言えます。
米ドルは世界1位、ユーロが世界2位、そしてわが国の日本円世界3位の流動通貨ですので、米ドル=円の組み合わせが大幅な変動を起こすリスクが低いのです。
直近30年の水準をみると100の数値を軸として考えた場合、米ドル=円は80-120の間で推移しているので、100を切ったところで仕込めばリターンは大きくなるでしょう。
新興国債券投資(ブラジル・トルコ・南アフリカなど)
上記で先進国の国債利回りを見てきましたのでそれを踏まえ、新興国の利回りを見ていきましょう。
非常に高いことがわかります。
国債で高金利と言われている、トルコ(10%超)・ブラジル・南アフリカは異常に利回りが高く、高金利国債としてオンライン証券を通じて投資ができます。
引用:トルコ国債
引用:ブラジル国債
引用:南アフリカ国債
しかし、高利回りの裏には必ず大きなリスクが存在するものです。どんなリスクでしょうか?
新興国債券投資で最大のリスクは「為替リスク」です。
上記の利回りを達成するには、信頼の於ける米ドル・日本円ではなく「トルコリラ」「ブラジルレアル」「南アフリカ・ランド」建てで国債を購入する必要があります。
新興国通貨のボラティリティは年間30%以上の変動が起きることもあります。夜も眠れないですね。例えば、以下はトルコリラ=円の近年の推移です。
債券利回りが10%を超えていても為替で10%以上負けてしまえば損確定です。しかし、反対に上昇すればその分大きく勝つという面も持ち合わせています。完全にギャンブルですね。投資ではなく投機です。
このようなリスクを好むのであれば、ブラジルレアル建の伯国国債がおすすめです。2018年10月に同国は大統領選を控えております。
近年のブラジル経済は堅調ですが、汚職問題を抱えた政府の内部での小競り合いが市場に悪影響をもたらし、ブラジルレアルは売り浴びせられていましたが、テメル大統領就任後、様々な改革が打ち出し、軌道修正されてきました。
10月の大統領選で過去に大統領就任したルーラなどの財政奔放な人物が就任しない限りは大きな為替の変動は起こらないのでは、と考えていますが、新興国の政治だけは読めません。
私自身、ブラジルへの出張は数回行きましたが、国民は選挙への関心が非常に高く、テレビでも常に汚職事件が報道されているような国でした。個人的な見解として、ブラジルの経済成長は進むのかということを考えると、毎日のように汚職が発生するような国なので、まだまだ道は険しいかな、と思っています。高利回りであることは、そのギャンブル性からして妥当だと思います。
株式会社が発行する社債への投資
最後になりますが、社債投資を解説します。冒頭に述べましたが、会社が発行している債券を購入するんですね。
株式投資と混同してしまいがちですが、社債への投資は極端な値下りリスクがなく、例え企業が倒産しても株式に先駆けて債券が返済される権利を持てる点です。
財務諸表のバランスシートで考えればわかるのですが、「株主」への配当はいつも借入にかかる利息よりも必ず後になされますので、それと同様のことです。
個人で購入できるドル建て、他通貨の社債をみていきましょう。

引用:外国債券
全体をみたところ、金融関連企業の社債を米ドルor豪ドル建で購入し、3%~4%の利回りを目指すのが安全、且つ堅実なリターンを目指せそうです。
ソシエテ・ジェネラルが完売していますね!
上記でいうと例えば、
- シティバンク
- モルガンスタンレー
- ソシエテジェネラル
の3つを組み合わせて債券ポートフォリオを組めば安定して3%程度の利回りの確保が可能ですね。為替は別で考えなければなりませんが、シティバンクとモルガン・スタンレーは米ドルなので安心感があります。
2008年のリーマンショックが起きて以来、先進国は金融機関のBIS規制など徹底した規制が敷かれており、過去に学び、安全策をとる潮流となっています。
また世界の中央銀行であるFRB・ECBのストレステスト(=マーケットでの不測の事態が生じた場合に備えて、ポートフォリオの損失の程度や損失の回避策を予めシミュレーションしておくリスク管理手法)もクリアしています。
従い、大手金融機関の倒産可能性は格段に低くなっていることを考えると、3%程度の運用が理想的と言えます。
FRB(The Federal Reserve Boardの略)
日本における日銀と同じ、アメリカの中央銀行制度の最高意思決定機関で、日本語で「連邦準備理事会」とも呼ばれます。 連邦準備理事会は、7名の理事から構成されています。 FRBが開く金融政策の最高意思決定機関に連邦公開市場委員会(FOMC)があり、FRBの理事7名や地区ごとの連邦準備銀行(FRB)総裁5名で構成されていて、アメリカの金融政策やFFレートの金利誘導目標を決定しています。
ECB(European Central Bank)
欧州中央銀行のことを指します。ユーロ通貨圏(ユーロ圏)である19カ国の統一的な金融政策を担っている中央銀行です。1998年6月1日に設立され、本部はドイツのフランクフルトにあります。統一通貨ユーロ導入に伴い、ユーロ圏の金融政策は各国の中央銀行に代わってECBの政策理事会が決定し、各国の中央銀行はその指図にしたがって金融調節を行います。ECBの行う金融政策は、アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)同様、世界的に注目度の高いものとなっています。
引用:SMBC日興證券
ちなみに日本国内の社債は以下のような種類があります。
引用:日本証券業協会
非常に利回りが低いですよね。国内では利回りの高い投資先があまり見つからないのが難点です。
総括:結局債券投資に魅力はあるのか?
上記までで一通り債券投資について解説してきましたが、最後に総括します。
日本国債は、
- プラスの利回りを確実に確保可能だが低利回りでありネット銀行の定期預金利回りを下回る
- 物価連動型国債の投資信託を購入し国内インフレをヘッジする目的であれば購入検討するべき
外国債券(国債)の、
先進国の国債は、
- 2018年時点は米国債一択。
- 多少米ドルの為替リスクがあるも、安定して約2%の利回りを得ることができるメリットあり。
- 通貨分散を考える人は積極的に国債投資を進めるべき。
新興国の国債は、
- 表面利回りは異常に高いが、為替のボラティリティが高く投機にスタイルが近い。
- 新興国の国債投資で狙い目は、2018年10月に大統領選を控えるブラジルの、レアル建ブラジル国債。
社債は、
- 米ドル建で外資系金融機関の社債を2、3社分散してポートフォリオを組み3%~3.5%の利回りを確保可能。
- リーマンショック以降、ストレステストを経た金融機関は資本政策も敷いており安心感あり。
- 従い、米国債よりも社債投資が利回りの面では上回ると考えられる。
おすすめの順番で言えば外国社債→米国債→日本国債と言ったところでしょうか。
大きなリターンではなく、確実に、少しずつ増やしていきたいという方向けの投資ですね。
今回は債券投資について紹介してきましたが、他にも海外投資でおすすめの投資先はたくさんありますので、ランキング記事を参考にしてみてください。
以上、『おすすめ外国債券投資・国債、社債利回り・新興国為替リスクを解説』でした。