こんにちは、YOSHITAKAです。
前の記事で、株のデイトレなどは投資手法としてみなすことができないなど、ベンジャミングレアム氏の考え方を解説しました。
ベンジャミン・グレアム氏は、投資に関する複数の指標ごとに考え方が浸透しておりますので今回は続編として、
「株式市場とインフレの相互関係」
について触れていきたいと思います。
インフレといえば、物価が上昇し、企業の売上規模も大きくなっていきますよね。
企業が成長しているように見えます。
しかし、この現象を基に株式銘柄を選んで良いのでしょうか?
Contents
グレアム氏はインフレと「企業業績」の相関性は低いと結論付けている

見出しの通り、グレアム氏は相関性は低いと言い切っています。
理由としては、グレアム氏が投資実行していた1966年〜1970年に物価の上昇が大きかったにも関わらず、1965年以降、米国株価は下落したという現象を目の当たりにしたからだと著書で語っています。
あくまでグレアム氏の企業の業績向上は「投資を継続している」ことが条件だとしています。
かつて、米マイクロソフトは2003年まで「無配当」を継続しました。株主からも収益は全て投資に回して企業価値を上げて欲しいとリクエストもあり、さらにビルゲーツ氏もそれを理解し既存事業への投資や事業買収を繰り返しました。
その後、同社は自社株買いや特別配当を実施し、投資家は「マイクロソフトは成熟期」と認識し、株価はしばらく横ばいに推移しました。
それだけ投資を継続することは重要だということですね。
グレアム氏はインフレと「ROE」の相関関係も低いと結論付ける

グレアム氏はROEとインフレについても言及しています。
ROEは「Return On Equity」の略であり「株主資本利益率」ですね。
ROE
Return On Equityの略称で和訳は自己資本利益率。企業の自己資本(株主資本)に対する当期純利益の割合。
計算式はROE=当期純利益÷自己資本またはROE=EPS(一株当たり利益)÷BPS(一株当たり純資産)。
米国では株主構成に機関投資家が増加し、これらの投資家が「投下した資本に対し、企業がどれだけの利潤を上げられるのか」という点を重視したことも背景となって、最も重要視される財務指標となった。
引用:ROEとは
自己資本(=株主などから調達した資金)を事業資金として如何に効率的に業績を上げることができているかをみる指標です。
計算式はROE=当期純利益÷自己資本またはROE=EPS(一株当たり利益)÷BPS(一株当たり純資産)。
インフレ率が上昇すれば商品の販売価格が上がり売上規模は大きくなり、当期純利益も伸びるのでROEも実際に良い数値になりますよね。
これも見出しの通りなのですが、インフレ(=生産者物価・消費者物価)によるROEの改善は株価の上昇に繋がらないとしています。
グレアム氏の投資経験から、
- 通常:100万円投資→10万円の利益=ROE=10%
- インフレ率=10%:100万円→11万円の利益(インフレ:1万円) ≠ 11%
となることが言及されています。
インフレはむしろ株価上昇の阻害要因
グレアム氏の観測によると、インフレ率が上昇することで、企業はROEを落としていることを指摘しています。
つまりは企業の成長・株価上昇を阻害しているということでもありますよね。
米国のS&P株価指数はインフレ率が上昇した1950年-1969年の間に、企業収益は42,000,000ドル→92,000,000ドルまで上昇しました。
しかし、ROEはなんと15%から11%に低下したのです。
よく考えてみればこれは当たり前です。伸びるのは販売価格などだけでなく、労働賃金も上昇します。売上も上がれば売上原価も上がるので手元に残る利益はそこまで大きくは変わりませんよね。
- インフレ率:10%
- 売上100万円→110万円
- 売上原価40万円→44万円
- 売上総利益60万円→66万円
また、資本の追加を株主より要求されることもあります。

売上規模が大きくなると株主も事業拡大を期待し始めますので、本当は必要のない追加投資で事業拡大のタイミングを見誤ってしまうのです。
投資をする上でのインフレによる損失を抑える方法

インフレが起きたら「金」でリスクヘッジをしようと思う人も多いでしょう。しかし、インフレが起きると金の価格は長年の間インフレ率の上昇を下回ることをグレアム氏は指摘しています。
結局、インフレが起きたとしても株式投資を継続することが正しいとグレアム氏は結論づけているのです。インフレと株価の因果関係はありません。
しかし、株価は「企業活動」ですから「再投資のサイクル」でインフレ率を超える上昇を見せる銘柄も存在します。
前回の記事でも触れていますが、インフレ率が高い時は「防衛的投資家」の戦略を取るべきと提唱しています。復習として少し解説しますが、防衛的投資家とは「シンプルな理論を用い」「安全を最大限確保しながら投資を実行する」人のことを言います。
グレアム氏が投資を実行していた1930年以降の時代は優良会社の社債の利回りが7%程度、つまり株式投資から得られる期待収益と債券の期待収益が同じ水準だったのです。株式と債券の割合を50:50(25-75%の間)などに調整すれば、安全に運用できるとして、当時グレアム氏は投資家にその手法を勧めていました。
株式と債券を25%-75%の間で適宜調整するべきだということですね。
むすび
ここまでの解説で、ベンジャミングレアム氏は「インフレ率上昇期は株式投資をするべきではない」ということではなく「インフレで期待感を大きくするな」ということですね。
本質を見極めて、インフレによる企業収益が拡大している銘柄に惑わされることなく、投資を繰り返し収益が大きくなる企業の銘柄を選択するべきということですね。
非常に理にかなった理論だと思います。
ベンジャミングレアム氏の考えるバリュー投資理論で投資実行していることも多いヘッジファンドに関する記事もありますので、参考にしてみてくださいね。
それでは良い投資ライフを。