私の同僚の中にも1000万円以上の資産を形成している方は数多くいるのですが、
結構我々のような若い(?)世代であっても、1000万円以上の金額を定期預金に入れているという方もいらっしゃいます。
しかし、資産運用の話になると、
日本人は「元本保証」に対する愛着が凄まじいものがあり、
投資好きな米国人が自身の資産の13%の預金比率に留まっているのに対して、
日本人は50%以上を預金しているというデータが出ています。

今回は1000万円を元本保証で運用することが、
結果的に「貧しくなる」ということをお伝えし、資産運用の必要性に目覚めていただくきっかけとなる記事にできればと思います。
Contents
元本保証の代表例・恐ろしく低い定期預金利回り
以前100万円の資産運用についてまとめた記事で定期預金の利率について言及しましたが、
最も預金利回りが高い銀行であっても現在は年率0.3%の利率に留まっています。
日銀の異次元緩和の影響もあり普通預金が年率0.01%という時代ということもあって、
0.3%というのは非常に高い金利のように思えますが年率0.3%で運用したとすると・・・
「100年」経過しても1,000万円の元本が1,350万円と1.35倍にしかならないのです。
1000万円の資産運用を考えても、非効率極まりないですね。
2倍の2000万円に到達するのは232年後ということになります。
とても自分の人生では足りず孫の孫の孫の代で漸く見えてきますね。
因みに現在から232年前というと1786年となり江戸時代真っ只中になります。
因みにざっと調べたところ第10代将軍徳川家治が没した時でした。
当時の貨幣は当然現在の日本円ではありませんし、
物価も恐ろしいほど変わっていることを考えると今1000万円の資産運用先を定期預金として232年後に2000万円になっていたとしても全く子孫は喜んでくれそうにありませんね。
コラム:大正時代に発行された100年定期預金の虚空
箸休めに、
あまりにも「超」長期的な目線での元本保証型の投資というのは時にむなしい結末を招くという例を思い出しましたので少し紹介したいと思います。
大正時代に「100年国債」というものが発行され、
近年発見されたというニュースが以前流れていました。
新潟貯蓄銀行(新潟市、現第四銀行)が1915年(大正4年)に募集した「超長期」の100年定期預金が2015年に満期となり、預金証書を受け継いだ子孫から同行へ問い合わせが数件あった。預けた金額の300倍超になる計算だが、貨幣価値の下落により受け取れる金額は「すずめの涙」にしかならないという。
第四銀行によると、100年定期預金は大正天皇の即位の大礼を記念し募集された。利率は年6%の複利で、1円預けると100年後には339円になる。第1次世界大戦で輸出が伸びた好景気の影響もあり「他の銀行でも同様の募集があったのでは」としている。
引用:日経新聞
大正時代に大学卒の初任給は「15円」という時代で、
非常に大きなお金を預けても「現在価値」に直すと雀の涙にしかならないという事例です。
現在価値:
将来の価値から金利などを割り引くことにより、いま手にした場合の価値を導き出すという考え方を現在価値という。
金融商品を購入検討する際に、現在価値を算定し、実際の価格と比較することも必要である。
算出された現在価値と実際の価格を比較するなど、投資を検討する際に用いられる。
例えば、1年後に100万円を手にできるとして、金利を1%とした場合、税金や手数料などを考慮しないで計算をする。と、
理論上の現在価値は約990,099円(=100万円÷1.01)となる。
仮に実際の価格が990,000円であった場合、比較をすると、理論価値より実際の価格の方が安いので、購入するには、割安であるといえる。
このように、将来の価値から金利などを割り引くことにより、いま手にした場合の価値を導き出すという考え方を現在価値という。
引用:野村証券
定期預金を行った結果欧米諸国に対してどんどん貧しくなる日本国民
冒頭で日本人と米英国民の定期預金比率は大きく異なることに触れましたが、
結果として日本人が貧しくなっていることがデータ上からも出てきておりますので共有したいと思います。
以下日米英の参加国の1996年の資産を1とした時の2015年時点の資産総額を金融庁が纏めたものをご覧ください。

最も顕著な差が出ている日本と米国について言及していきます。
この間経済成長を行っている米国と日本では賃金の上昇の差もあり労働収入による資産の伸びの差がありますが、
最も顕著な違いが出ているのは、塗りつぶされている運用リターンによる家計資産の推移の差です。
米国は運用によって資産を2.32倍に増加させているのに対して、
日本は資産を1.15倍にしか増やすことが出来ていないのです。
結果的に米国人は資産を3.11倍に増やせているのも関わらず、
日本人は1.47倍にしか増加させることが出来ていません。
これは明確に資産運用を行っている米国人と元本保証で安全運用に徹している保守的思考の日本人の差といってよいでしょう。
いやいや、1996年から2015年の間市況がよかっただけでしょう?と思われるかもしれませんが、
この期間にITバブルの崩壊100年に1度の危機と呼ばれるリーマンショックを経験しているのです。
短期でみると資産価格を減少させる可能性がある投資も長期間でみると現金並びに殆ど無利子の定期預金をはるかに凌駕する結果をもたらすのです。。
襲い来るインフレの恐怖
先程は米国や英国と比べて相対的に貧しくなるという話をしましたが、
今度はインフレによって日本国民は絶対的に貧しくなる未来についてお伝えしたいと思います。
インフレというのは私たち30台より下の世代は物心ついたころからデフレ経済が進行し、
はや30年近く経っていることもありインフレというのは一生起こらないと錯覚しがちであると思います。
現在日銀が2%のインフレを達成するまで金融緩和を続けるというオーバーシュート型のコミットメントをしております。
しかし私は日銀が思い描くような2%程度の緩やかなインフレは発生しないと考えていますし、
私が為替の部署で働いている時も、それが市場関係者の共通認識でした。
何故なら日本企業は収益が上がっても、賃上げを起こさないからです。
インフレとは国民所得があがり需要が喚起され結果的にモノの価格が上昇する現象ですが、肝心の国民所得が上昇しないのであればインフレは発生しません。
ではインフレは永久に発生しないのかと言われればインフレは確実に発生すると見ています。
というのも、現在国が抱えている借金を実質的に減額するのはインフレを発生させるより他に方法がないからです。
現在の100円が実質的に10円の価値しかないようになれば、
同様に現在1400兆円ある国の借金は140兆円の価値しか持たないようになりますからね。
政府としては、どこかのタイミングでインフレを起こして借金を大幅に減額するしか生き残る道は存在していません。
実際に戦後1946年に戦争債務で苦しんだ政府は禁じ手である「ヘリコプターマネー」政策を実施し、
ハイパーインフレを起こして借金を帳消しにすると同時に国民資産をインフレと預金封鎖で強奪しました。
日本の戦後で起きたハイパーインフレ型のインフレが到来した場合は、
当然のようにあなたが銀行に預けた1000万円は場合によっては現在の100万円分の価値しか持たなくなってしまうのです。
ハイパーインフレが発生する前兆である日銀のヘリコプターマネー政策が実施されるのは早くて3年と見ているので、
遠い先の話ではない可能性があると頭に留めていただければと思います。
むすび
元本が減ることを恐れるあまり定期預金偏重型の元本保証運用を行っていると相対的に貧しくなるばかりでなく、
来るべきファイナルクラッシュともいえる強烈なインフレ時に大きく資産を失う可能性があります。
1000万円の資産運用先として、資産を守りながら効果的に大きく育てる方法については以下の記事にまとめておりますので参考にしてみてください。